INTERVIEW 私×働く喜び

お客さんの喜ぶ顔を
思い浮かべながら仕事をすると、
自分自身も楽しくなる。

漠然とした思いで上京し、 住み込みのコックに。

ー社会人としてのスタートはいつですか?

祖父が大工、友人の父が左官屋で、中学生のときから現場の仕事を手伝っていました。本格的に社会人としてやりだしたのは、中学を卒業した16歳ごろですね。現場仕事として働いて、日当で自分のバイクを買いました。

ー鯉斗さんといえば、地元の名古屋では暴走族の総長をしていた、という異色の経歴が知られていますよね。そんな鯉斗さんが地元を離れて上京してきたキッカケは?

暴走族はものすごい縦社会で、規律がしっかりしているところがあるんですよ(笑)。17歳になったら、暗黙のルールで総長を引退することになっていました。引退後どうしようか考えた時に、そのまま地元に残ると、先輩や友だちなど周りの人間がが荒くれ者ばかりだったので(笑)、その方向に行くのは嫌だなと思ったんですね。映画が好きだったこともあり、何となく役者になりたいなと思って、人脈もない中で漠然と上京しました。

ー東京での暮らしは?

求人募集雑誌でコックの仕事を見つけました。暴走族も建設現場も縦社会だったので、調理の世界も同じような環境だと思い、自分にはやりやすいかな、と思ったんですよね。「赤レンガ」というレストランで、ビルの屋上にあるプレハブ小屋のようなところに住み込みで寝泊まりして、7時には起きてワックスがけをしてモーニングの準備、と下働きが忙しかったですけど、ゼロから始めた仕事はそんなものだと思っていたので苦になりませんでした。

初落語は鯉昇師匠。 1度の高座で弟子になることを決意。

ー落語との出会いは?

働いていた「赤レンガ」で、瀧川鯉昇師匠が年に2回、独演会を開いていました。料理長がとても良い人で、「役者になりたい」と伝えていたら、「芝居やりたいなら落語を知っておいたほうが良い」と言ってくれて、師匠の高座を見ることができました。
その時、師匠は「芝浜」を演じたのですが、1人で何役もこなして、多くの人を魅了する高座に衝撃を受けたんです。その日の打ち上げで、「弟子にしてください」と頼み込んだくらい、1回の高座で心酔してしまいました。
その日は師匠から「まずは寄席を見てきなさい、落語家になるならそこが一生の仕事場になるから」と言われ、改めて都内の寄席を見て回ったんですよ。最初は入口で渡される顔付けのプログラムが読めなくて(笑)。代演でプログラムに載ってない人が出てくるし、漢字もわからないし、まずはプログラムと演者を照らし合わせることで精いっぱい。噺なんて入ってきませんでしたね(笑)。
でも、何度か通っていろいろな噺家さんを聞いてみると、やっぱり鯉昇師匠が一番だとわかりました。再び師匠が「赤レンガ」に来た時に再度お願いして、弟子にしてもらうことができました。

ーターニングポイントとなった仕事は?

まったく知らなかったことがかえって良かったかもしれません。縦社会は暴走族と建設現場とコックの世界で慣れていましたから(笑)、怒られても「これが落語会のルールなんだ」と捉えていたので、そんなにツラいと感じたことはなかったです。
落語界に入ったからにはしっかりやろうという気持ちが強かったです。鯉昇師匠にはもちろん、他の師匠にも兄弟子にもたくさんのことを教わりました。一人ひとり違うことを言っているようで本質的なことは同じ。すごく勉強になる日々だったと思います。
また、同じように落語家を目指す前座仲間と一緒にいることも楽しかったですね。長い時間を落語家に囲まれながら過ごすことで、必然的に落語家の体になっていきました。

Koito Takigawa × Hataraku Yorokobi =

名古屋での公演に、 地元仲間がバイクで集合!

ー初高座は?

鯉昇一門は「新聞記事」という噺を最初に覚えるんですけど、15分くらいの噺を覚えるのに半年かかりましたね。慣れてくるともっと早く覚えられるのですが、最初は記憶や思考も落語家のものになっていないので。
師匠に教えてもらった噺を高座にかける前に、師匠の前で実際に演じて「高座にかけてもよい」と許可をもらわなければなりません。これを「あげてもらう」と言うのですが、師匠と1対1で落語を演るのはお客さんの前よりも緊張するんですよ。噺の本題に入る前のマクラで「付け焼き刃は剥げやすい」というくだりがあるのですが、そこをあまりにも緊張して、「つけまつげは取れやすい」と言ってしまった(笑)。それを聞いた師匠は「そんなマクラは教えてないけど、合ってる」と言ってました。それから自分の高座で時々マクラにつかってくれています(笑)。
そんなことがありながら、なんとか許可をもらって初高座を務めることができました。最初から最後まで勢いだけで覚えたことをまくし立てた、という記憶しかありません(笑)。

ー地元の友人たちは鯉斗さんが突然落語家になって驚いたのでは?

そうですね。でも、前座時代に地元の大須演芸場に行ったときは、地元の仲間が応援に来てくれました。
地方で公演があると、出身の前座を連れて行ってくれることがあって、そのときは三遊亭小遊三師匠が座長で「お前、名古屋だろ?」と連れて行ってくれました。高座にも上がらせてもらい、地元の仲間も来てくれたのですが、バイクで来るから大須演芸場の前がバイクだらけになって(笑)。みんな落語は初めて聞いたと思うんですけど、すごく熱心に聞いているので、その様子を見て小遊三師匠が途中で話を切って「こういう意味だよ」と説明してくれたり、初心者向けの落語をしていただきました(笑)。高座が終わった後、小遊三師匠には「お前の友だちってタンクトップばっかりだな」「黄色い声援が飛ぶかと思ったら、どす黒い声援が来たな」と言われました(笑)。

師匠から教わった落語の本質を、 後輩に継承する義務がある。

ー鯉斗さんが仕事にやりがいを感じるのは、どんなときですか?

落語家は、高座でお客さんの反応をダイレクトに感じることができる素晴らしい仕事です。楽しんでもらえたり、何かを感じてもらったりしていることが伝わってくると、本当にうれしい。お客さんありきの仕事です。
自分の出囃子がかかると、スイッチが入ります。お客さんに喜んでもらいたい、というパッションは忘れないようにしています。

ー仕事で大切にしていることは?

僕は古典落語を演るのですが、時代が違うのでそのまま演ると伝わりにくいこともあります。自分のフィルターを通して、お客さんに伝わりやすいようにていねいに演じることを大切にしています。“今”の落語を知ってほしいですね。
また、今は後輩も増えたので、落語界を継承していかなくてはならないという気持ちも強くなりました。時代が変わり、言葉も変わりましたが、僕が師匠たちから教わった落語界の根本を伝えていく義務があると思っています。

ー落語をまったく知らずに飛び込んで、もう20年近く。ここまで続けられたのはすごいことですよね。

続けるポイントは、携わっている人や仲間を大切にすることだと思います。
仕事が続かない理由は、人間関係がうまくいかないことが多いと思うんですけど、そりゃあ、落語界にも気が合わない嫌な先輩はいますよ(笑)。でも、とりあえず「ハイ、すいません」と言いつつ、自分の芯をしっかり持ってやりたいことはやっていこうと心の中で思っていれば良いと思います。腹の中で「コイツわかってないな」と思えば良い(笑)。自分をわかってくれて、励まし合える仲間がいれば、乗り越えられます。

お客さんの喜ぶ顔を 思い浮かべながら仕事をすると、 自分自身も楽しくなる。

繰り返しになりますが、やっぱりお客さんに喜んでもらうことですね。自分のフィルターを通して、時代に合うように落語を工夫をすることはとても楽しいのですが、それをお客さんが聞いて何かを感じてもらえることにヨロコビを感じます。
あと、最近は役者の仕事をやらせていただくことも増えました。ひとつの作品に対して、多くの演者やスタッフが平等な立場で同じ目標に向かっていく雰囲気は、1人で演じる落語とはまた違う魅力があります。みんなで一緒に作り上げていく現場にいられることも、ヨロコビのひとつです。

ー最後に、転職を考えている20〜30代の若者世代に向けてメッセージをお願いします。

自分自身がやりがいを感じられる環境で仕事をしたほうが良いと思います。今の仕事にやりがいを感じられないなら、転職するのはとても良い選択なのではないでしょうか。
そして新しい仕事を始めて慣れてきたら、今度は仕事の先にいるお客さんの喜ぶ顔を思い浮かべながら仕事をすると、自分自身も楽しくなってきます。ぜひそんな仕事を見つけてほしいです。

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瀧川鯉斗

落語家

来歴 2009年 瀧川鯉昇に入門、鯉斗となる
2009年 二つ目に昇進
2019年 真打に昇進。「令和初」の真打になる。
古典落語に取組み高い評価を得ている実力派真打。
寄席や独演会など落語家としての本業以外にも、テレビ番組の出演や雑誌ファッション誌「LEON」でのモデル活動、また役者としても活躍し、ジャンルを越えて積極的に活動している。
公益社団法人 落語芸術協会 所属
愛知県名古屋市天白区 出身
出囃子・虎退治
定紋・五瓜に唐花

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