トヨタの生産方式に関して

「内製かんばん」 第24回

青木幹晴

 トヨタ組立ラインが完璧な平準化仕掛けをしているので、トヨタ生産ピラミッドのすべての工程において、かんばんを回転させることができる。換言すると、平準化仕掛けをしていない会社ではかんばんは絶対に回転しない。そのような会社でかんばんを導入しても、まさに「看板」という表示の意味しか効果を得ることができない。
 トヨタが平準化生産をしているので●の部品は1便あたり2枚のかんばんが外れて、その納入便が引き取って帰る。●の部品メーカーはその2枚のかんばんを●製品にそれぞれ添付して納入便に載せ、トヨタへ届ける。するとまたトヨタでは2枚のかんばんが外れている・・・・といった具合に継続される。
 部品メーカーの工場には工程(ライン)ごとに完成品のストアがある。そこで完成品ストアから●部品が引き取られると、そこの添付されていた工程内かんばんが外れる。すると運搬係がそれを持って、1つ前工程の完成品ストアに引き取りに行く。するとその引き取られた部品(粗材)に添付されている工程内かんばんが外れる。すると運搬係はもう1つ前工程の完成品ストアへそれを持って引き取りにいく・・・・ということが初工程までずっと続けられる。
 ここである日系企業の内製かんばん化の事例をご紹介したい。その企業は生産を実際の受注に従って行なっていた。こうなると負荷の高い時は非常に忙しいが、負荷の低い時は遊んでしまう。そこで量産品について過去の出荷実績を集計してみると、季節によって多少の変動はあるがほぼ予想がつくことが分かった。そこであらかじめ向こう1ヶ月間の受注数量を予想し、毎日同じだけ生産していくことにした。そうなると完成品在庫を持たなければならなくなるが、それは許容することにした。このように平準化は自らの努力でも実施可能なのである。
 次にどのくらいの内製かんばん枚数が必要なのか理論計算してみた。
(生産リードタイムの間に引き取られる数量+段取り時間の間に引き取られる数量+運搬間隔時間の間に引き取られる数量)÷通い箱収容数=内製かんばん枚数
 これによる計算結果は16,000枚だった。そこで実際にある通い箱の数をたな卸ししてみると20,000個だった。平準化前の生産形態ではこんなにも多くの在庫が必要だったのだ。これにより在庫量を管理下に置くことができるようになった。
 プレス工程ではすべての品目について、1回の型打ちでの必要ロット数を算出し、さらに内製かんばんの必要枚数を計算する。そして各品目ごとに内製かんばん掛けを作成し、まわって来た内製かんばんを下から差し込むようにする。内製かんばんが規定枚数に達した品物から順番に型打する。このようにすることでプレス作業者は仕掛け順を自ら考える必要がなくなった。
 メッキは外注メーカーへ依頼している。この際、発注してから何日間で戻されるということは明確に規定して内製かんばんに記載してある。メッキ業者が引き取りに来た際に、そこに添付されている内製かんばんを外して、メッキかんばん管理板の納入日の欄に入れてもらうようにする。そして納入日にメッキ業者からメッキ完了品が納入されたら内製かんばんを現物に添付する。その際、内製かんばんに余りが生じたら、それはメッキ業者の未納ということが分かるので、すぐにメッキ業者にいつ挽回できるか確認する。