1.トヨタグループ企業の平準化対応
トヨタは、1ヶ月間は全ての車種の日当り生産台数を固定するとともに、組立ラインへの投入順序も1つの種類の間隔を一定にする。例えば1日8時間で8台生産する車種があったとしたら、それは1時間に1台ずつ組立ラインに投入されることになる。これが「平準化生産」だ。
しかし販売部門にとっては「車種別にも日当り生産台数の1ヶ月固定」などされるということは、到底承服できないことだ。ところがトヨタ生産方式を確立させた大野耐一の強力なリーダーシップは販売部門をも屈服させた。
現在の大企業で、生産効率を追求するため販売部門にこのような制約条件を納得させることは不可能ではないだろうか。ここがトヨタ生産方式が普及しない最大の要因であると思う。とにかくこの平準化生産ができない以上、かんばんは回転しないし、ジャスト・イン・タイムも実現できない。従って現在、完璧なジャスト・イン・タイムを実現できているのは世界中でトヨタだけである。
しかしトヨタグループの企業にしても、トヨタ以外の自動車メーカーへも部品を納入している。その場合、トヨタは平準化して部品を引き取ってくれるが、他の自動車メーカーはそれに比べると変動幅が大きい。これではせっかくのトヨタの平準化も台無しである。
そこでトヨタグループ企業は、その対策として後工程(トヨタ以外の自動車メーカー)の変動した引き取りに対応できるだけの完成品在庫を持つのだ。そうすれば自分の工場の工程では毎日同じだけの生産を行う平準化生産が実現できる。
そしてその自動車メーカーの担当者が見学に来た際に、次のようなイヤミを言ってやるべきだ。「御社の生産変動に対応するため、このような完成品在庫を持っています。トヨタさんは平準化した引き取りをしてくれるので完成品在庫は一切要りません。御社もなんとかなりませんか」。このように、問題点が「完成品在庫」という形で目で見えるようにすることが改善の第一歩なのである。
2.一般会社での平準化事例
この企業ではすべての製品を受注が来た都度造っていた。そのようなことがなぜ可能だったかと言えば、その企業もサプライヤーも有り余る材料在庫を持っていたからだ。そんなことをしていたら、その材料在庫をまかなうお金による金利負担や置場スペースでものすごく損をしてしまうし、とにかく品質が向上しない。
そこでこの企業では次のようにして平準化生産の考え方を導入した。
全製品をABC分析して量の多い順に並べた。
量の多い製品・・・・・A製品
量が中ぐらいの製品・・・B製品
量の少ない製品・・・・・C製品
A製品は大量にさばけるので、平均化して造ってたとえ完成品在庫が発生してもそれはすぐに解消できるはずだ。そこでA製品についてだけ完成品の在庫をすることを認め、1ヶ月間は平準化して生産することにした。しかしBC製品までそのようなことは無理なので、それは従来通り受注した都度造ることにした。
そこで昨年の販売実績と今年の販売予想をつき合わせて向こう1ヶ月間の販売予想を出す努力を始めた。そして1ヶ月間毎日同数の生産をすることにチェレンジした。
しかしやはり販売の変動は激しいので3ヶ月経った段階で過去3ヶ月間の実績数を加味して生産数の決定に反映させるようにした。
これが生産計画のイメージ図だ。これを関係部署に提示することにより実際に必要な要員の手配が可能になる。従来は最大数で要員を配置しておいて台数が減れば遊ばせていた。また部品メーカーにも提示し、そこでもこの生産に同期化した生産をしてもらいようにする。
平準化したA製品については、部品メーカーが同期化生産をしていてくれるなら多回化納入すべきだ。そうすれば部品メーカーもこちらの企業も在庫を極端に圧縮できる。トヨタは多回化納入を部品メーカーにお願いしているが、その運送費はすべてトヨタが負担している。にも係わらずトヨタが儲かっているということは在庫増のコストよりも輸送コストの方が安いという証拠ではないか。
しかしBC製品については、平準化できないので従来通り部品在庫を持って生産することになるが、その発注管理は信号かんばんで行なう。