第一種衛生管理者はすべての事業所で衛生管理者になれる国家資格
仕事を長く続けていくためには、働きやすい職場環境を維持する必要があります。衛生管理者は、企業で働く労働者の健康管理や労働者が健康的に働ける職場環境づくりに取り組みます。今回はさまざまな業種で活躍できる、第一種衛生管理者の資格について紹介したいと思います。
職場の人数が50人以上の場合には、必ず1人以上の衛生管理者を設置する必要があります。そのため衛生管理者は、再就職や転職で有利になる資格です。衛生管理者の代表的な仕事内容は、労働者の健康管理です。具体的には作業環境に危険がないかの点検や、健康診断に関わる業務に取り組みます。また、労働組合と職場のメンバーで構成される衛生委員会のメンバーとなることもあります。
企業で衛生管理者として働くためには、衛生管理者の国家資格が必要です。第一種衛生管理者の資格を取得すれば、ほぼすべての業種で衛生管理者として働けます。一方、第二種衛生管理者の場合には、建設業、ガス業、電気業、製造業など有害業務のある事業所では、衛生管理者として働くことはできません。
ものづくりが盛んな日本には多くの製造業があります。またインフラを担う建設業やガス業、電気業には大きな企業がたくさんあります。第一種衛生管理者の資格を取れば、このような企業で衛生管理者として働けます。そのため企業内での昇進のチャンスにつながったり、再就職や転職を有利に進められるようになるでしょう。
第一種衛生管理者を受験するためには、労働衛生に関する実務経験が必要です。労働衛生の実務経験には作業環境の改善が含まれているため、かなり多くの業務が労働衛生の実務に含まれます。したがって一定以上の年数以上働いている人は、受験資格を持っている可能性が高いです。受験を検討する際は、日頃の業務内容を整理し、職場の上司などに相談してみるといいでしょう。
受験に必要な労働衛生の実務経験年数は、最終学歴によって異なります。大卒の場合には1年以上、高卒の場合には3年以上、高校を卒業していない場合には10年以上の実務経験が必要です。また、実務経験を証明する書類が必要です。書類は現在所属している職場の代表者に書いてもらいましょう。代表者として適切なのは、社長や工場長、人事部長などです。
第一種衛生管理者は知識や技術が一定水準以上に達していることを国によって認定される国家資格です。合格率は50%程度ですが国家資格のなかでは合格しやすい資格の1つです。しかし試験範囲が広いため勉強するのは大変です。
- 労働生理:10問出題されます。人体の仕組みなど、医学的な分野の理解が問われます。確実に理解して高得点を狙いたい分野です。
- 労働衛生(有害業務関連):10問出題されます。有害な作業環境が人体にもたらす悪影響とその改善策などが問われます。
- 労働衛生(非有害業務関連):7問出題されます。職場の温度、照明、換気、食中毒、救急処置などの基本的な知識が問われます。
- 関係法令(有害業務関連):10問出題されます。難易度が高い科目です。法律に関する知識と理解が問われます。
- 関係法令(非有害業務関連):7問出題されます。健康診断、安全衛生教育、就業規則など実務に近い知識が問われます。
例として、有害業務関連の関係法令から過去問題を紹介します。
出題例:次の作業を行うとき、法令上、作業主任者の選任が義務付けられているものはどれか。
(1)屋内作業場におけるアーク溶接の作業
(2)製造工程において硝酸を用いて行う洗浄の作業
(3)レーザー光線による金属加工の作業
(4)試験研究業務として塩素を取り扱う作業
(5)潜水器を用いボンベからの吸気を受けて行う潜水作業
正解は(2)です。知識がないと解けない問題ですが、記憶問題なので過去問題に取り組んでいれば問題なく正解できます。
これらのすべての分野で4割以上の正解、合計で6割以上正解することで合格できます。
第一種衛生管理者は、必要な知識を持っていれば合格できます。重要な問題は繰り返し出題される傾向があるので、過去問題に繰り返し取り組み、本番で間違えないようにしましょう。全体で6割正解すれば合格できるので、過去問と傾向が異なる難しい問題よりも、確実に点が取れる重要な問題に注力するのも作戦です。
衛生管理者の資格には、第一種衛生管理者のほかに衛生工学衛生管理者や第二種衛生管理者があります。詳しくは「衛生管理者は労働者の健康管理と快適な職場づくりの専門家」にまとめてあります。
第一種衛生管理者は、ほぼすべての業種で衛生管理者として働くことができる国家資格です。衛生管理者は、50人以上の労働者がいる職場には1人以上設置する必要があるため、企業からの需要がある資格です。試験範囲が広く勉強するのは大変ですが、過去問題に繰り返し取り組んでいけば合格できるでしょう。