危険物取扱者の甲種とは?難易度が高いって本当?取得するメリットはあるの?
私たちの身の回りにはさまざまな危険物があふれています。これらの危険物を取扱う場合に必要になるのが、危険物取扱者という資格です。興味を持っている方もいると思います。
危険物取扱者には、甲種、乙種、丙種という3種の区分があります。今回の記事では、これらのうち最難関といわれる甲種について説明していきたいと思います。
危険物取扱者が取扱うことができるのは消防法で定められた危険物、つまり火災の危険性が高い危険物です。消防法では、危険物を以下のように第1類~第6類に分けて定めています。
類 | 危険物 | 例 |
1 | 酸化性固体 | 塩素酸カリウム、過マンガン酸カリウム |
2 | 可燃性固体 | 硫黄、赤リン、マグネシウム |
3 | 自然発火性物質及び禁水性物質 | ナトリウム、リチウム、黄リン |
4 | 引火性液体 | ガソリン、灯油、軽油、エタノール |
5 | 自己反応性物質 | ニトログリセリン、トリニトロトルエン |
6 | 酸化性液体 | 過酸化水素、硝酸 |
危険物取扱者の甲種を取得すると、これら危険物全類の取扱いや無資格者への立ち会いができます。
甲種を取得後、第1類~第6類いずれかの危険物に関して実務経験を6カ月積めば「危険物保安監督者」になることができます。危険物保安監督者は、危険物を取扱う作業者に対して指示を与えたり、災害発生時に責任者として各機関への連絡を行ったりする役職です。甲種の場合は、どの類の危険物で6カ月の実務経験を積んだとしても危険物保安監督者として全類の危険物を扱うことができます。また危険物保安監督者になれば、追加の講習なしで甲種防火管理者、甲種防災管理者にもなることができます。
このように、甲種を取得して実務経験を積めばできることが一気に増えていくのです。甲種は危険物取扱者の中で最難関ではありますが、取得するメリットは十分にあります。
取得すれば多くのことができるようになる危険物取扱者甲種。しかし、実は甲種はだれでも受験できるわけではありません。受験するには、以下の条件のうちいずれかを満たす必要があります。
No (※以下のいずれかを満たす必要あり) |
受験条件 | 概要 |
1 | 化学系学科の卒業 | 大学、短期大学、高等専門学校などで化学系の学科を卒業していること |
2 | 化学系科目の修得 | 大学、短期大学、高等専門学校などで化学系科目を15単位以上修得していること |
3 | 乙種危険物取扱者免状の保有 | 乙種危険物取扱者免状の交付後、危険物取扱いの実務経験が2年以上あること |
4 | 以下のうち、4種類以上の免状交付を受けていること 第1類又は第6類 第2類又は第4類 第3類 第5類 |
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5 | 自己反応性物質 | ニトログリセリン、トリニトロトルエン |
6 | 修士、博士の学位 | 化学系の学位を有すること |
表を見ると、甲種を受験するには化学系のバックグラウンドや乙種の資格取得や実務経験が必要なことが分かりますね。やはり危険物取扱者の中で最上位の資格だけあって、ある程度の知識や経験がある人しか受験できないのです。
乙種の場合は取扱うことができる危険物が限られてしまうため、さまざまな危険物を扱う企業では乙種よりも甲種が求められています。そのため、甲種を持っていると就職や転職にきわめて有利です。年収アップも十分期待できます。
そして、甲種として実務経験を積めば将来的には危険物保安監督者や甲種防火管理者、甲種防災管理者になることもできます。自分のキャリアをどんどん広げることができるのです。
このように、甲種の取得には数多くのメリットがあります。
メリットの多い甲種ですが、できることが多い代わりに難易度も乙種や丙種より高く設定されています。
次の表は甲種試験の内容です。試験は筆記のみで実技はありません。
資格区分 | 合格率(%) (令和2年度11月16日時点での平均値) |
試験科目 | 問題数 |
甲種 | 42.0 | 危険物に関する法令 | 15 |
物理学及び化学 | 10 | ||
危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法 | 20 |
甲種に合格すると第1類~第6類全ての危険物を取扱うことができるため、試験でも当然これら全類の内容が出題されます。乙種や丙種よりも試験範囲が各段に広いということです。
さらに甲種では、乙種や丙種と違って試験科目の免除は一切ありません。物理や化学の問題に関しても、甲種や丙種より難しく設定されています。
甲種試験はしっかりと試験対策をする必要があります。
それでは、甲種の試験はどのように勉強すればいいのでしょうか。
試験対策は基本的には参考書や問題集で十分です。本屋で自分に合うものを探してみてください。各危険物に関しては乙種対策本の方がより詳しい場合もあるので、乙種の問題集や参考書にも目を通すといいでしょう。また、甲種試験の「物理学及び化学」では高校レベルの内容が出題されます。そのため、高校理科の参考書も利用してみてください。
独学が難しい方は、通信教育や学習用アプリを使用する手もあります。
また、危険物取扱者試験を実施している消防試験研究センターのHPには過去問題も掲載されています。合格するには過去問対策が必須なので、どんどん活用しましょう。
危険物取扱者試験は、一般社団法人消防試験研究センターの各都道府県支部で実施されています。そのため、受験の申し込みも各都道府県支部に対して行うことになります。
申請方法には、書面申請と電子申請の2つがあります。書面申請の場合は各都道府支部の窓口で申請書類を入手し、必要事項を記載して各支部に持参又は郵送します。電子申請の場合は、消防試験研究センターのHPから申請が可能です。
危険物取扱者には、甲種の他に乙種、丙種という区分が存在します。取扱うことのできる危険物の種類は甲種よりも少なく設定されていますが、これらは甲種よりも難易度が低く取得しやすいのが特徴です。
乙種、丙種について詳しく知りたい方は、「危険物取扱者は取得しやすい国家資格!年収アップをはじめメリットもたくさん!」「危険物取扱者の資格にはどんな種類があるの?甲種、乙種、丙種それぞれを詳しく解説!」の記事をご覧ください。
危険物取扱者の甲種に関して、その概要やメリット、勉強方法などを説明してきました。
甲種は難しい試験ですが需要も多く、取得すればさまざまな職場で活躍することができます。甲種の受験資格がある方は、一度受験を検討してみてはいかがでしょうか。