2020.11.30

危険物取扱者の資格にはどんな種類があるの?甲種、乙種、丙種それぞれを詳しく解説!

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はじめに

みなさんは、危険物取扱者という資格をご存じでしょうか。危険物取扱者は、「危険物」を取扱うことで私たちの生活を支える縁の下の力持ちです。
実は、危険物取扱者には甲種、乙種、丙種という3種類の区分があります。今回の記事ではこれら各区分の特徴を詳しく解説していきたいと思います。

危険物取扱者は、消防法で定める危険物の取扱いを行うために必要な国家資格!

危険物取扱者は、消防法で定める危険物を指定数量以上取扱う際に必要な国家資格です。
「消防法」とは火災の予防を目的とした法律のことです。消防法では「火災の危険性が高い物質」を危険物として定めています。つまり、危険物取扱者は火災の危険性が高い物質を取扱う資格ということです。
消防法で定める危険物は、次のように第1類~第6類に分類されています。

危険物
1 酸化性固体 塩素酸カリウム、過マンガン酸カリウム
2 可燃性固体 硫黄、赤リン、マグネシウム
3 自然発火性物質及び禁水性物質 ナトリウム、リチウム、黄リン
4 引火性液体 ガソリン、灯油、軽油、エタノール
5 自己反応性物質 ニトログリセリン、トリニトロトルエン
6 酸化性液体 過酸化水素、硝酸

危険物といえどもごく少量であればそれほど危険ではありません。そこで、各危険物に対しては「指定数量」というものが決められています。指定数量より少ない量であれば、危険物取扱者の資格なしに扱うことができるのです。
つまり、「火災の危険性が高い物質を大量に取扱う」場合に危険物取扱者の資格が必要になるということですね。

危険物取扱者には、甲種、乙種、丙種の3種類がある!

危険物取扱者には甲種、乙種、丙種という3つの資格区分があります。取得難易度は甲種>乙種>丙種で、取扱うことができる危険物の種類も甲種が一番多く、丙種が一番少なくなっています。

【各資格区分でできること】
資格区分 取扱うことができる危険物 無資格者への立ち会いが可能か 受験資格
甲種 第1類~第6類全て 可能 あり
(化学系科目の修了・乙種取得など)
乙種
(第1類~第6類に分かれている)
合格した類のみ 可能
(合格した類の危険物のみ)
なし
丙種 第4類の一部 不可能 なし
【各資格区分の試験科目と合格率】
資格区分 合格率(%)
(令和2年度11月16日時点での平均値)
試験科目 問題数
甲種 42.0 危険物に関する法令 15
物理学及び化学(★) 10
危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法 20
乙種 第1類:69.0
第2類:69.9
第3類:66.2
第4類:42.3
第5類:68.1
第6類:64.1
危険物に関する法令 15
基礎的な物理学及び基礎的な化学(★) 10
危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法 10
丙種 53.2 危険物に関する法令 10
燃焼及び放火に関する基礎知識(★) 5
危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法 10

以降の節では、各資格区分についてより詳しく説明していきます。

危険物取扱者の甲種は、第1類~第6類までの全危険物の取扱い、取扱いの立ち会いが可能!
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まずは、取得が最も難しい甲種について解説します。
甲種を取得すると、第1類~第6類全ての危険物の取扱い、無資格者への立ち会いを行うことができます。甲種は取得が難しい分、できることも多いのです。
さらに、甲種危険物取扱者として実務経験を6カ月以上積めば「危険物保安監督者」になることができます。
甲種危険物取扱者は誰でも受験できるわけではありません。甲種を受験するには、「化学に関する教育を受けていること」「乙種資格をいくつか取得していること」といった条件を満たす必要があります。
甲種についてより詳しく知りたい方は、「人気資格!危険物取扱者の乙種4類って?取得するメリットなどを解説!」の記事を読んでみてください。

危険物取扱者の乙種は、試験に合格した類の危険物の取扱いや取扱いの立ち会いが可能!

続いては、乙種について解説します。
乙種は第1類~第6類の各類の試験があり、合格した類の危険物に関してのみ取扱いや無資格者への立ち会いが可能です。取扱うことができる危険物の種類を増やしたい場合は別の類の試験を受けなければいけません。
面倒そうだと思われるかもしれません。しかし、乙種には大きなメリットが2つあります。1つ目は「受験資格がない」こと。2つ目は、条件を満たせば受験科目が一部免除になることです。例えばある類の試験に合格すれば、別の類を受ける際に「危険物に関する法令」と「基礎的な物理学及び基礎的な化学」が免除になります。
乙種の場合も甲種と同じく、乙種危険物取扱者として実務経験を6カ月月以上積めば「危険物保安監督者」になることができます。
乙種の中でも人気があるのが乙種4類です。乙種4類について詳しく知りたい方は、「人気資格!危険物取扱者の乙種4類って?取得するメリットなどを解説!」の記事を読んでくださいね。

危険物取扱者の丙種は、第4類の一部の危険物の取扱いが可能!

最後に、一番簡単だといわれる丙種について説明します。
丙種に合格すると、第4類(引火性液体)の危険物の一部を取扱うことができるようになります。ただし、甲種や乙種とは異なり無資格者への立ち会いはできません。
丙種で扱える危険物にはガソリンや軽油も含まれるので、セルフではないガソリンスタンドで働いたりタンクローリーの運転をしたりすることができます。
また丙種の場合も乙種と同じく受験資格がなく、条件を満たせば科目免除もあります。
丙種と乙種4類のどちらを取得するかは議論になるところですが、試験の難易度と業務可能な範囲を踏まえた結果、乙種4類を受験する人が多いようです。

危険物取扱者の甲種取得と乙種全類取得は同じではない!

ここまで本記事を読んできて、「甲種を取得するのと乙種を全類取得するのはどう違うのだろう?」と疑問に思った方もいるでしょう。甲種と乙種全類とでは危険物保安監督者になった際に扱うことができる危険物が異なるのです。以下にこの違いをまとめました。

資格区分 危険物保安監督者になるための条件 危険物保安監督者として取扱うことができる危険物(★)
甲種 第1類~第6類のいずれかの危険物を実務で6ヵ月以上取扱うこと 第1類~第6類全ての危険物
乙種全類 実務で6ヵ月以上取扱った類の危険物のみ

違うのは(★)の項目です。甲種の場合は、実務で扱ったことがないものでも保安監督者になれます。例えば、ガソリン(第4類)の実務経験しかなくても過酸化水素(第6類)の保安監督を行うことができるのです。しかし乙種全類の場合は、実務経験を積んだ類の危険物に関する保安監督しか行うことができません。
また甲種の場合は、危険物保安監督者になったら自動的に甲種防火管理者、甲種防災管理者にもなることができます。対して乙種全類の場合は防火、防災管理者になるための講習を別途受ける必要があります。

危険物取扱者のうち、最初にとる資格としては乙種4類がおすすめ!
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どの区分を取得すればいいか悩んでいる方もいるのではないでしょうか。そんな方には、まず乙種4類の取得をおすすめします。
乙種4類で扱うことができるのはガソリン、灯油、軽油といった身近な危険物です。そのためこれらの危険物を取扱う職場は多く、乙種4類には安定した需要があるのです。甲種とは違って受験資格がない点や、丙種とは違って無資格者への立ち会いができる点も魅力です。
乙種4類の試験問題が難しく感じる方は、まず丙種を受けてみるといいでしょう。また、甲種の受験資格がある方にとっては乙種の試験は簡単でしょうから、そのような方は最初から甲種を受けてしまう手もあります。

まとめ

危険物取扱者の資格である甲種、乙種、丙種についてご紹介してきました。各資格区分の特徴やメリット、デメリットについて理解していただけたかと思います。
本記事を読んで「危険物取扱者って面白そうだな」と思われた方は、一度本屋で危険物取扱者の問題集を眺めてみてください。難易度を確認するには実際に問題を見るのが一番の近道です。そしてぜひ、甲種、乙種、丙種のどれかに挑戦してみてくださいね!