地方創生とは何?取り組みの重要性や関連業界のまとめ
地方と都心の格差をなくすための政策である「地方創生」。日本が直面する課題を解消するためにも、地方創生の取り組みは極めて重要です。
この記事では、地方創生の背景や意義、地方創生に関連する重要な業界について解説します。地方創生に関心がある人はぜひ参考にしてください。
【目次】
■地方創生とは?
・地域活性化と何が違うのか
・地方創生の具体的な目標
■地方創生が推進されている理由
・人口減少の改善
・地域経済の活性化
■地方創生に関わる業界
・観光業
・農業・漁業
・不動産業
・教育業
・医療業・福祉業
・IT業界
・製造業
日本では近年急激に少子高齢化が進んでおり、特に地方での人口減少が深刻です。また、都心部に人口や労働力が集中しているため、都心部と地方で経済的な格差が広がっていることが大きな問題となっています。2014年には、全国約1800市町村のうち約半数(896市町村)が2040年までに消滅する可能性があると発表されました。
地方創生は、少子化に歯止めをかけて地方からの人口流出を防ぐための政策です。主な目的は、都心部と地方の格差を解消すること。地方の持続的な発展と活性化を促すことで都心部の一極集中を解消し、日本全体の国力の向上を目指します。そのためには、それぞれの地方で暮らしやすい・働きやすい環境を整え、安心して生活できるような仕組みを構築しなければなりません。
地域活性化は地方創生と同じような意味だと思われていますが、実際には異なる概念です。
地方創生は、地方の生活環境を向上させて、少子高齢化や人口流出による都心と地方の人口格差をなくすという目的があります。
一方、地域活性化とは、地域の活気を高めることを目的とします。例えば、移住促進や魅力的なイベントの開催などの取り組みで、住民が増えたり税収がアップしたりして、地域に元気をもたらすことを地域活性化とよびます。地方創生の取り組みが成功すれば、結果として地域活性化が実現すると考えていいでしょう。
地方創生には、以下のような目標が掲げられています。それぞれを具体的に見ていきましょう。
◯【基本目標1】稼ぐ地域をつくるとともに、安心して働けるようにする
◯【基本目標2】地方とのつながりを築き、地方への新しいひとの流れをつくる
◯【基本目標3】結婚・出産・子育ての希望をかなえる
◯【基本目標4】ひとが集う、安心して暮らすことができる魅力的な地域をつくる
◯【横断的な目標1】多様な人材の活躍を推進する
◯【横断的な目標2】新しい時代の流れを力にする
地域の資源や産業を活かして、地域の競争力アップを図るという目標です。地域経済を支えている企業に対して集中的な支援を行い、安心して働ける職場環境の実現を目指します。更に、若者・女性・高齢者など老若男女を問わず活躍できる職場を増やして、時間・場所を有効に活用する柔軟な働き方の普及や促進などの取り組みが行われています。
【基本目標2】地方とのつながりを築き、地方への新しいひとの流れをつくる都心に集中している人口を分散するために、地方への移住・定住を推進するという目標です。地方の魅力を発信し、人々に知ってもらう活動を強化することも含まれています。また、空き家の活用や地方でのテレワークの普及など、地域内での生活をサポートする施策を実施する自治体も。さらに若者の地方への移住を促すために、地方大学の振興や地域人材の育成にも力が注がれています。ほかにも、農山漁村での体験や高校生の地域留学、ふるさと納税の取り組み拡大など、地域とのつながりを更に発展させる活動も進められています。
【基本目標3】結婚・出産・子育ての希望をかなえる地方は都心部よりも高齢化が問題になっているエリアが多いため、子育て世代を増やして地域の活性化を図ることが急務です。そのため、地方では結婚・出産・子育てを切れ目なく支援するために施策を広げています。また、ワークライフバランスの実現に注力し、働く親が子育てをしやすい環境を整える取り組みを推進。各地域の特性やニーズに合わせた取り組みを導入することで、地方全体の子育て支援を充実させる狙いがあります。
【基本目標4】ひとが集う、安心して暮らすことができる魅力的な地域をつくる
地方に移住者が一時的に増えたところで、質の高い暮らしが実現できなければ、再び都心部に戻ってしまう可能性があります。地方創生では、各地域に魅力的な生活圏を形成するために、都市のコンパクト化・交通ネットワークの整備・地域間の連携強化などが進められています。また、「安心して暮らすことができるまちづくり」のために、医療・福祉サービスの充実、地域防災の確保、交通安全の強化などを実施。特に、疾病予防や健康づくりの推進などが重点的に進められています。
更に、地域の資源を活かした個性的な地域を作るため、地域資源を活かした観光づくりに取り組み、農山漁村の活性化や所得と雇用の機会拡大を目指します。
地方創生の狙いは、地域の特性と資源を最大限に活用し、多様な人々が連携して活躍することです。地方創生においては、「一人ひとりが魅力づくりの担い手となる」という考えがあり、誰もが居場所・役割を見つけ、活躍できる「生涯活躍のまち」になるという多文化共生を目指しています。また、地方公共団体では、人材を確保して活用する「ひとづくり」の連携が進められており、専門家や人材を地域に配置することで、地域の振興や活性化につなげています。
【横断的な目標2】新しい時代の流れを力にするDX(デジタルトランスフォーメーション)は、地域が抱えている課題解決や魅力アップのカギです。地方においても5Gをはじめとする情報通信基盤の環境整備が進められており、デジタル人材の育成と確保、データの活用基盤の強化などに力を入れ、新しい都市の形成を進めています。加えて、温室効果ガスの排出削減、気候変動への取り組み、地方創生SDGs金融やESG金融の推進などを通じて、持続可能なまちづくりを目指します。
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そもそも地方創生に注力しなければならないのは、なぜでしょうか。地方創生は国が取り組んでいる政策の一つですが、その理由を把握することで地方創生の意義も分かりやすくなります。
地域創生が推進されている理由は、以下の2点です。
◯人口減少の改善
◯地域経済の活性化
日本では出生率の低下と高齢化は大きな社会問題となっており、今後も人口は減少していくと予測されています。人口が減少すると働き手の数が減り、結果として多くの企業が人手不足に直面しています。この状況を改善できなければ、経済の停滞・衰退にもつながりかねません。
地方創生の取り組みは、地方の雇用機会を増やし、子育てしやすい環境を整えることで、人口減少の解決を目指しています。特に地方では、若者が仕事や子育てしやすい環境を求めて都市部へ流出することで人口減少が加速し、逆に都心部では人口が増えすぎるといった一極集中が起こっています。都心部よりも地方での人口減少が著しいからこそ、地方創生が重視されているのです。
地方から都心部に若年層が流出してしまえば、地方の企業では人材を確保するのが難しくなり、企業は閉鎖や縮小を余儀なくされるでしょう。それによって働く場所が少なくなり、さらなる人口減少を招くといった悪循環に陥ってしまいます。人口減少・経済衰退は地方の自治体にとっては死活問題であり、財政にも支障をきたしかねません。もし財政が減ってしまえば交通インフラも整えることができず、さらには公共施設の運営も滞る状況となり、生活にも多大なる影響を及ぼすでしょう。実際に財政破綻に陥り、財政再生団体に指定された自治体もありました。
閉鎖・縮小の危機は企業だけではなく、自治体にも起こります。だからこそ、地方創生による地域経済の活性化が急務なのです。地方でも安心して出産・子育てができる暮らしの実現や雇用の創出が大切になってきます。
では地方創生を図るためには、どのような業界が関わってくるのでしょうか。地域が持つ特性や資源によって異なりますが、一般的には、観光業、農業・漁業、不動産業、教育業、医療業・福祉業、IT業界、製造業などがあげられます。地域企業の雇用や地元での起業を促し、地域経済の活性化を目指すことが重要です。ここでは、各業界がどのような形で地方創生に寄与できるのかついてご紹介します。
◯観光業
◯農業・漁業
◯不動産業
◯教育業
◯医療業・福祉業
◯IT業界
◯製造業
長く住み続けているとなかなか地方の魅力に気づきにくいですが、実は都心ではできない経験や街並みなど地方には隠れた魅力がたくさんあります。ただの田舎ではなく、新たな魅力を持つエリアだと捉えることができれば、地域の魅力をアピールして観光客を数多く呼び寄せられ、地域経済の活性化につながるでしょう。
もちろん、地域の観光を活性化させることで地域の魅力を再発掘できるかどうか、受け入れ体制が整えられるかどうか、情報発信などの地域間との連携ができるかどうかなどの課題はあります。また、観光客が多く訪れることによる交通渋滞や風紀の乱れなどの観光公害も懸念され、地域住民からの反発もあるかもしれません。しかし、地域の住民に真摯に向き合いながら、地域全体でまとまって観光業に取り組むことで地域の活性化が図れるでしょう。観光業は地域全体をまとめながら、新たな魅力づくりを行うなど、やりがいを感じられる業界です。
農業・漁業も地域活性化に欠かせない業種です。地方では農業・漁業が盛んなエリアが多く、居住している住民の多くが何らかの形で携わっているケースが多々あります。都心部では農業を行う場所もほとんどなく、地方から届いた農水産物を購入している状況です。新鮮な農水産物があるというのは地方にとって強みといえるでしょう。
新たな魅力的な農産物の開発や農水産物を活用した加工食品の提供、新鮮な農水産物を使ったレストラン・カフェの開業などを行うことも、地域の活性化につながります。魅力的な農水産物・加工食品が生まれれば、日本だけでなく世界にもアピールでき、地域経済にとってもプラスとなります。
地方に移住者を多く呼ぶためには、不動産業も重要な役割を担います。移住したいと考えた方にとって、一番ネックになるのが居住先です。居住場所が確保できなければ、どんなに移住を希望しても難しくなります。不動産業は居住したい方との懸け橋的存在となり、移住促進の推進力となります。また、観光業に注力する地域であれば、リゾート地としての不動産開発などにも携わる業界です。ほかにも、地方でビジネスを始めたいという方への店舗の提供など、不動産業は地方創生にとって幅広い役割がある業界であり、地域活性化に必要不可欠です。
地方創生は、若年層・子育て世帯を地方に惹きつけることも目標に掲げています。そのためには子どもへの教育環境を整えることが重要になってきます。例えば、小学校・中学校が閉鎖され、子どもが学校に通うために遠くの場所まで通学する必要があるとなれば、子育て世帯にとって移住を不安視する要因になりかねません。また、子育て支援がない環境では、子どもを産んで育てることに不安を感じる可能性もあります。地方創生では、子育て世帯が安心できるように教育機会を提供し、子育て支援を充実させるなどの取り組みも大切になります。
例えばICT・AIなどを活用した学習を積極的に導入する、自然を活用した学習を取り入れるなど、他の学校ではない付加価値のある学習環境を整えることで、「こんな学校で学ばせたい」という人が増え、移住者の向上につながる可能性が高まります。
医療業・福祉業は住民の健康や生活の質を高めるだけでなく、地域経済の活性化をもたらす可能性があります。地方が抱える深刻な課題の一つが高齢化です。地方には高齢者が多く、高齢者向けのサービスや地域医療のニーズが高くなっています。例えば、高齢者向けのサービス付き高齢者施設を開業することで、そのエリアに住む高齢者だけでなく、サービスなどによっては他のエリアからも利用したいという方も出てきます。そうなれば施設で働く従業員を集める必要があり、雇用促進が図れ、それによって移住者が増える、地域経済が活性化するといった好循環が生まれてきます。住民の生活を安定させるためになくてはならない存在ですが、地方創生という視点から見ても重要な業界といえます。
リモートワークやオンラインビジネスが普及したことによって、わざわざ都心部に住む必要がなくなり、地方であっても同等のビジネスチャンスが生まれている現状があります。都心部であれば家賃も高く、人口が密集しているため、広々とした居住スペースを確保しにくいといった問題があり、リモートワークをするのに不向きなケースも。たとえ地方であってもネット環境さえ整っていれば支障なくビジネスができる場合もあります。デジタルインフラを整備し、IT関連企業の誘致も地方創生の重要な戦略のひとつです。企業にとっても社会貢献によるイメージアップや拠点拡大などのメリットに繋がります。
製造業は日本の根幹を支える業界であり、事業規模によっては全国各地に関連企業を有しています。地域にある固有の資源や伝統的な技術を活用した新たなブランドを構築することで、経済の活性化や地域の認知度アップにもつながるでしょう。また、製造業は地元にある農業・漁業・林業などの業界と連携して地元の特産品の製品製造にも携われるため、より広範囲の地域活性化を促せる業界です。地方創生にとって製造業は非常に重要な存在であり、製造業が盛んになることで地方創生を成功に導く重要なポイントになります。
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