クロステックって何?注目される背景や代表的なクロステック
【目次】
■クロステック(X-Tech)とは?
・クロステックが普及した背景
・クロステックと製造業の関係
■クロステックに活用されるテクノロジー
・クラウド
・AI
・IoT
・ビッグデータ
・ブロックチェーン
・VR / AR / MR
・5G
■代表的なクロステック
・健康:HealthTech(ヘルステック)
・医療:MedTech(メドテック)
・金融:FinTech(フィンテック)
・人材:HR Tech(エイチアールテック)
・農業:AgriTech(アグリテック)
・食料:FoodTech(フードテック)
・教育:EdTech(エドテック)
・環境:Clean Tech(クリーンテック)
・政治:PoliTech(ポリテック)
・不動産:RE Tech(リーテック)
クロステック(X-Tech)とは、既存の業界ビジネスと先進的なテクノロジーが融合させて生まれた新たな価値・仕組みのことです。クロスは「掛け合わせる」、テックは「技術(テクノロジー)」という意味。異なる分野や技術の組み合わせを積極的に探求し、既存のサービス・技術と最先端のテクノロジーを組み合わせることによって、これまでとは違った全く新しいサービスやビジネスモデルを創出することがクロステックの目的です。クロステックは多彩な分野で普及しており、今後もますます発展すると考えられています。
クロステックが普及した背景にはデータ処理能力の上昇やスマホ・タブレットの普及など、複数の要因があると考えられています。ここでは具体的な背景について、それぞれ見ていきましょう。
データ処理能力の向上IT技術は飛躍的に向上しており、コンピュータの処理能力が高まったことで、大量かつ複雑化しているデータを高速処理することが可能になりました。データ処理能力の向上によって、AIやビッグデータ解析といった技術が色々な分野で応用できるようになり、新しいサービスや製品が生まれています。今後5Gの普及が広まれば処理能力は更に向上し、クロステックの普及も加速するでしょう。
スマホ・タブレットの普及スマホやタブレットの普及により、時間・場所を気にすることなくインターネットにアクセスすることが日常になりました。それに伴い、デジタルデバイスを活用した新しいビジネスモデルやサービスが生まれ、さまざまな産業や技術を組み合わせる動きが活発化しています。企業とユーザーがつながる機会も増加したため、企業は消費者にリアルタイムで情報共有やサービスの提供が可能となり、これまでよりも顧客情報を収集しやすくなりました。
IT導入によるコストダウンIT製品のコストダウン、クラウドの普及、オープンソースソフトウェアの広がりなどによって、ITをビジネスに導入するハードルが下がった点もクロステックが活発化した背景の一つでしょう。低コストでIT導入・運用が可能となったことで、中小企業やスタートアップ企業でも先進的な技術を導入し、イノベーションを起こせるようになりました。多種多様な分野でIT化が進められている状況なので、今後もクロステックの普及は活発化すると考えられます。
クロステックを実現するためには、製造業の存在は無視できません。ITを支える部品・製品を製造する役割を製造業が担っており、テクノロジーを支えるための重要な業界の一つといえるでしょう。今後、よりクロステックが普及すれば、更に製造業への仕事が増加する可能性があり、需要の高い業界になる可能性があります。
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クロステックを実現させるうえで先進的なテクノロジーは必要不可欠です。ここでは、クロステックに重要なテクノロジーとそれぞれの特徴について紹介します。
クラウド(クラウドコンピューティング)とは、ユーザーがネットを経由して、サーバー・ストレージ・ネットワークなどのサービスを必要な分だけ活用できるシステムのこと。Googleの「Google Drive」、Microsoftの「OneDrive」などが有名なクラウドサービスです。クラウドを持つことで、ユーザーは物理的なインフラを保有・管理する必要がなくなります。
クラウドは、すぐリソースを拡張できるスケーラビリティ、どこからでも利用できるアクセス性、使用したリソースのみ課金されるというコスト削減効果の高さから、多くのビジネスや技術に活用されています。例えば、データをクラウド上で処理・分析することで、リアルタイムの情報提供や分析が可能です。
AI(人工知能)は、ソフトウェアに人間の思考・会話・動作などの知的活動を学習させ、人工的に再現する技術です。あらゆるデータを反復して学習することによって、行動パターンを覚えるだけでなく、人間との会話もできるようにもなります。少子高齢化が加速する現代において、人手不足解消に貢献するシステムともいえるでしょう。デジタル化が進む社会において、AIはビッグデータの処理・分析やIoTデバイスの制御など、幅広い分野で応用されています。
IoT(Internet of Thing)はモノのインターネットとも呼ばれており、身の回りにある家電・家具などをインターネットに接続して、データの収集・共有や制御を行う技術を指します。IoTはビッグデータやAIと組み合わせて使われることが多く、音声を使って家電を遠隔操作したり、エアコンや冷蔵庫に周囲の環境を学習させて効率的な運転に切り替えたりできます。IoTスマートシティやスマートファクトリーなどのクロステックにとって重要なテクノロジーです。
ビッグデータとは、従来のデータベースやツールで処理するのが難しいほどの大量かつ複雑なデータのこと。ビッグデータの特徴として、「データ量が膨大(Volume)」「異なる種類のデータ(Variety)」「発生・更新速度が早い(Velocity)」という3Vが知られています。近年では、情報処理技術が発展し、ビッグデータの活用ができるようになりました。例えば、マーケティングの分野ではビッグデータによって消費者ニーズや行動分析などを予測し、業務の効率化や事業の発展などにつなげています。
ブロックチェーンは、近年注目されているデータベース技術です。取引に関する記録データの集合体をブロックといい、ブロックが複数つながっているものを「ブロックチェーン」と呼びます。暗号資産や暗号通貨などの仮想通貨などが有名でしょう。ブロックチェーン最大の特徴は、データの改ざんが難しいこと。サプライチェーンの透明性やセキュリティの向上のために使われており、医療・ビジネス・物流など活用している業界は多岐にわたります。
現実世界を仮想空間で体験する技術を「VR」、現実世界の映像を拡張する技術を「AR」、VRとARを組み合わせた技術を「MR」と呼びます。視覚的な体験を拡張・変更することで情報伝達の効率を高めて、没入感を向上させる技術です。高速・大容量通信や画像認識技術の発展に伴い、リアルタイムで高品質なコンテンツを提供できるようになってきました。スポーツ観戦やゲーム業界をはじめ、製造業、医療、教育などさまざまな業界で活用されています。
5G(第5世代移動通信システム)は、4G/LTEの次世代規格として、2020年3月からサービスが始まりました。5Gの特徴として、以下の3つがあげられます。
◯高速大容量の通信
◯多数の同時接続
◯高信頼・低遅延
ストレスなく動画の送受信ができるようになるだけでなく、5Gが持つ低遅延という特性によってこれまでの通信環境では難しいと考えられたロボットによる精密機械や自動運転といった分野の実用性も高まっており、新しいビジネスや産業の変革を促している技術といえます。
クロステックは多種多様な産業で活用されています。ここでは、代表的な10個のクロステックを紹介します。
ヘルステックとは、健康(Health)とテクノロジーを掛け合わせた言葉で、ヘルスケアテックと呼ぶこともあります。ヘルステックでは、デジタル技術を活用して健康増進や病気の予防を行うことを目指しており、主な目的は健康寿命の延長です。リアルタイムの検査・管理といった健康の維持や病気の予防のために使われており、介護分野では体調のセンサー管理や服薬タイミングのリマインドといったサービスがあります。
一方、似たような分野で「メドテック」という技術もありますが、メドテックは医療分野を主なターゲットとしており、健康増進・予防医学などをターゲットとしたヘルステックとは異なります。
メドテックは医療とテクノロジーを掛け合わせた言葉で、医学分野の技術発展を目的としています。例えば、オンライン診療や遠隔医療を普及させ、地域間の医療サービスの均等化を図る取り組みが進行中です。また、AI技術を活用した画像診断や、手術を支援するロボット技術も開発されています。これによってヒューマンエラーを防ぎつつ、より緻密な手術が可能になります。また、手術支援ロボットを使用することで、より小さな切開で手術が行えるため、出血を最小限に抑えるとともに、患者の回復が早くなるというメリットもあります。
金融とテクノロジーを掛け合わせたのがフィンテックです。これまで、金融サービスを利用するためには金融機関の窓口まで足を運ぶ必要がありました。しかし、フィンテックによってスマホやタブレットを使った資産管理、決済、送金などの金融サービスを手軽に利用できるようになりました。特に、忙しい人や交通手段が限られている人にとって、スマホで簡単に金融サービスが利用できるのは大きな魅力といえるでしょう。現在、フィンテックはスピーディーに浸透しつつありますが、それも金融サービスが生活に欠かせないものだからです。
人材とテクノロジーを掛け合わせた「エイチアールテック」は、人材採用・管理業務の効率化を図ることが目的です。例えば、会計・勤怠管理のソフトを使って業務を効率化したり、採用時の情報管理を簡単にしたりすることが可能です。会社の規模が大きくなるほど人事に関する情報は膨大になり、ミスも許されません。エイチアールテックを取り入れることで、スタッフの業務負担を軽減し、人材不足の課題解消にもつながるでしょう。
アグリテックは農業とテクノロジーを掛け合わせた言葉で、ITの導入によって農業の負担軽減や効率化を実現します。具体的には、IoTを活用した農作物の監視、ドローンを使った農薬散布、ビッグデータを応用した水や肥料の自動供給などがあります。また、農地にセンサーを配置して気温・湿度を計測し、必要に応じてアラートを出すことで、より正確な管理が可能です。アグリテックは、農業従事者が減少する中で、人手が足りなくても農作物の生産ができるようサポートすることが期待されています。
フードテックは食料とテクノロジーを組み合わせた言葉で、食品の分析・開発にテクノロジーを活用します。フードテックの主な目的は、食に関するさまざまな課題を解消すること。フードロスや食品保存の改善、将来的な食料不足の対策、食の安全を守るといった取り組みに役立てられています。また、ベジタリアンやヴィーガンなどの多様な食の選択肢にも柔軟に応えられるのがフードテックの特徴です。
エドテックは教育とテクノロジーを融合させた言葉で、生徒・教師の授業支援や学習の効率化を目指します。学校教育だけでなく、資格取得をサポートするスクールやトレーニングジムなどにも活用されており、学習プログラムの最適化ができるというメリットがあります。例えば、トレーニングの進捗状況や教育管理、VRを用いた体験授業、危険管理講習・クレーム対応などの体験学習に役立ちます。
環境とテクノロジーを合わせた言葉で、「グリーンテック」とも呼ばれています。主に、環境に配慮したエネルギーや事業の開発・導入に焦点を当てています。クリーンテックの核となるのは、再生可能エネルギーの利用・開発です。SDGsの実現に向けた活動としても注目されており、電力分野、輸送・ロジスティックス分野、農業分野などの業界で活用されています。地球に配慮した事業活動は、企業ブランドのイメージアップにも欠かせないため、多くの企業がクリーンテックの活用を進めています。
政治とテクノロジーを掛け合わせた「ポリテック」とは、テクノロジーを活用して政治改革を目指すことです。アメリカを中心に、ネット広告やSNSを通じた政治活動や著名活動が盛んに行われており、さまざまな団体を支援するのに使われてきました。このトレンドは日本にも浸透しはじめており、ネットによる政治活動が増えてきています。ポリテックは、SNSを使った選挙活動・署名活動だけでなく、政治に関する情報の発信・収集の技術にも使われており、テクノロジーの進化が政治のあり方を変えつつあるといえます。
リーテックは不動産とテクノロジーを組み合わせた言葉です。不動産業界にテクノロジーを導入することでサービスの質が向上するだけでなく、新たなサービス開発にもつながっています。例えば、VRによる物件内覧やAIによる物件提案のサービスは、リーテックの代表的な例です。技術の応用により、物件選びの利便性と不動産サービスの透明性を高める効果が期待されています。
クロステックは私たちの生活を便利にするだけでなく、人件費削減・業務の効率化などビジネスにおいても重要な役割を果たしてくれます。そんなクロステックを実現するテクノロジーを支える業界の一つが「製造業」です。
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