日商簿記3級は仕事に有利?試験の難易度や全商簿記・全経簿記との違いを解説
就職に有利な資格として有名な簿記ですが、具体的にはどのような仕事に活かせるのでしょうか。日商簿記の3級レベルと2級レベルの違いや、簿記が仕事に活かせる理由、製造業やメーカー経理との関連性について解説します。
【目次】
■日商簿記3級とは?
・日商簿記3級の概要
■日商簿記3級でできる仕事
・小売業
・企業の会計・経理・財務職
・会計事務所
■日商簿記3級は就職・転職で有利になる?
・日商簿記2級取得のとっかかりになる
・企業研究の際に役立つ
■日商・全商・全経の違いは?
・全商簿記とは
・全経簿記とは
・日商簿記とは
■製造業(メーカー)経理を目指すなら日商簿記2級が必要
・本格的に製造業を目指すなら「はたらくヨロコビ」をチェック!
日商簿記とは、日本商工会議所が主催する簿記の公的資格のことです。日商簿記には主に1級・2級・3級のようにレベルがあり、3級では基礎的なレベルの簿記知識を証明することができます。初めて簿記を勉強する人にも3級レベルの受験が適しており、初歩的な商業簿記の知識と経理書類の処理方法について理解していれば取得できます。
3級と2級の大きな違いは出題範囲の広さです。日商簿記3級レベルでは、基本的な商業簿記の知識として仕訳や帳簿の記帳方法、財務諸表の仕組みといった内容が出題されます。社会人が知っておくべき内容としても有用な知識を得られるため、社会人が独学で勉強して受験することも在ります。
一方で日商簿記2級になると、商業簿記だけではなく工業簿記についての問題も出題されます。製造業のものづくりにおける、製造費や労務費といった原価計算の内容も含みます。商業簿記の出題内容よりも本格的な経理業務に必要なレベルの知識・スキルが求められます。日商簿記2級よりも3級のほうが難易度は低いといえるでしょう。
経理や財務の就職・転職を目指している人であれば、日商簿記3級レベルは最低限の知識として要求されることが多いです。経理の求人に応募したい場合や、初歩的な実務、小規模な会社の経理事務なら日商簿記3級レベルでも役に立ちます。3級レベルなら簿記学習の初心者でも独学で取得できる可能性はじゅうぶんに期待できます。
日商簿記3級の概要は以下のようになっています。
・試験科目:商業簿記
・試験時間:60分
・試験方式:統一試験、ネット試験
・受験料:2,850円(ネット試験のみ別途手数料550円が必要)
試験時間は2級よりも短く、受験料も安く設定されています。受験資格はないため誰でも受験でき、社会人はもちろん学生も受験できます。統一試験の場合は年に3回、6月・11月・2月の日曜日に行われているため、お近くの商工会議所をチェックしてみてください。ネット試験の場合は各試験会場ごとに任意の日が設けられています。
日商簿記3級の合格率は、低い時には27~29%程度ですが平均して40~50%程度です。難易度はそこまで高くないため、初めて簿記を勉強する人でも独学で合格を目指せるでしょう。初心者がつまずきやすい点として、不慣れな用語が多く飛び交うことや、仕訳のルールの複雑さなどがあげられます。日商簿記3級レベルの合格を目指すのであれば、約100時間程度の勉強が必要です。
基礎的な商業簿記の知識を証明できる日商簿記3級は、初歩的とはいえ簿記への理解をアピールする武器になります。簿記取得者としてのニーズも一定数あるため、就職や転職にも活かせるでしょう。履歴書にも保有資格として胸を張って記載できます。日商簿記3級の取得で有利になる職業は、具体的に次のようなものです。
小売業とは、ものを仕入れて販売するという流れの業種のことです。例えばデパートやスーパーをはじめ、百貨店や家電量販店なども含まれます。小売業の特性上、お金を払ってもの(商品)を仕入れ、それを売ってお金を稼ぐという一連のお金の流れがつきものです。そのため小売業の事務仕事を行う場合には、日商簿記3級レベルの基礎的な簿記の知識が役に立ちます。
ただしものづくりをしてそれを売る製造業の場合は、日商簿記2級以上で出題される原価計算の内容が必要になります。あくまで小売業の一般事務員や営業事務員として働くのであれば、3級レベルの知識とスキルでも仕事をこなせるでしょう。大きな企業の経理事務になると簿記2級以上の本格的な知識が求められることも在りますが、3級で一般事務員として働きながら、経理の事務仕事を補佐することもできますよ。
どのような企業であっても、お金の流れを管理する会計や経理、財務職は必要です。経理には預金や現金の管理といった仕事のほか、伝票や帳簿を作成や経費の精算といった日常業務があります。こうした業務は日商簿記3級レベルの知識が必要になります。企業の経理事務の仕事をするうえで、簿記3級を保持していればその知識を活かすことができるのです。他にも、書類の作成や経理清算、給与計算、データ入力などの仕事では、仕訳や勘定科目への理解が求められます。
また、企業の会計や経理・財務職の仕事にはある程度の経験が求められることがあります。業界・職種未経験者で就職や転職を目指すことはハードルが高いですが、簿記の資格を持っていることを事前にアピールできれば未経験であっても経理・財務職への転職で有利になりますよ。
会計事務所は税金に関する相談を受けたり、企業の記帳・税務申告業務の代行を行ったりする事務所です。お金の流れについて詳しく知っている専門家として頼られる業種ですから、そこで働くには簿記の資格は不可欠と言えるでしょう。「会計事務所と言えば税理士」というイメージをもつ人も多くいますが、税理士以外の人が補助的な役割で働いている会計事務所も多くあります。
税理士の仕事を補助するためには、税理士ほどの詳しい知識がなくてもお金についての理解が不可欠。そのため会計や仕訳、帳簿についての知識を簿記の資格で認められている人材は転職や就職で有利になるというわけです。また、将来的に税理士を目指す場合には2年以上の実務経験が必要になるため、税理士補助業務として実務経験を積み重ねながら、簿記を取得するという人もいます。
日商簿記3級の資格を取得すると就職・転職で有利になるのかどうか。結論からいえば「アピールポイントにはなるが、特別有利にはならない」というのが現実です。簿記はお金や税金についての理解をアピールできる資格のため、幅広い業種や職種で評価されるでしょう。ただし3級レベルは日商簿記の中でも初歩的な立ち位置であり、出題範囲も狭く応用力は期待できません。
現に日商簿記2級は20~40%であるのに対し、3級の合格率は40~50%程度と、難易度が低めです。学部や専攻によっては学生のうちにすでに取得している人もいますから、日商簿記3級の場合は簿記のスペシャリストとまではいきません。あくまで入門用の資格として知られているため、「日商簿記3級」と履歴書に書いても選考で特別有利にはならないでしょう。
ただし、入門用とはいえ、ある程度の勉強をしないと取得できない資格であることに変わりはありません。簿記3級の資格を取得していることで、将来のキャリアの選択肢を大きく広げることができるでしょう。
日商簿記3級の資格は、就職や転職に直接的に有利になるわけではありませんが、日商簿記2級の資格を取得するための最初の土台としてかなり心強い存在です。日商簿記2級の難易度は決して低くありません。商業簿記についての出題はより本格的なものになり、工業簿記として原価計算などの知識も出題されます。あらかじめ日商簿記3級を取得して経理・会計の基礎知識を身につけておけば、2級を目指すことも現実的になります。
日商簿記の資格は2級になると、3級よりも就職や転職で有利に働き優遇されやすくなります。経理の仕事や業界に限らず、製造業やサービス業など、さまざまな場面で重宝されるでしょう。就職転職後のスキルアップが期待できる人材としても評価されやすくなります。
日商簿記3級の資格を取得できるほどの知識があれば、財務諸表の読み解き方まで理解できるようになります。企業の営業成績や財務状況を判断できるようになることで、就職や転職時の企業研究に役立つでしょう。企業の資料を自分なりに分析して企業の利益や現状を読み解いたり、貸借対照表を見て財政状況を把握したりできるようになるのです。
簿記の知識を活かして自分が入りたい企業を財政の面でも判断できれば、就職先や転職先ミスマッチのリスクを抑えられるでしょう。
単に「簿記」の資格といっても、その種類はさまざまあります。中でも有名なのは、主催団体がそれぞれ異なる以下3つの資格試験です。
・日商簿記
・全商簿記
・全経簿記
試験内容や受験料がそれぞれ異なっており、履歴書に記載した際の企業側からのイメージや、就職・転職への有利さも変わります。例えば「簿記3級」といっても、日商か全商か全経かでアピールできるスキルのレベルが違うのです。
全商簿記とは「全国商業高等学校協会」が主催する検定試験のことで、「簿記実務検定試験」が正式名称です。主に商業高校生に向けた検定試験となっており、学校で受ける簿記の授業内容を網羅しています。簿記の基礎的な内容を中心に構成されており、1級・2級・3級に分けられています。全商簿記1級の取得は大学や短大の推薦入試合格の最低ライン、とされることも珍しくありません。
全商簿記の1級レベルでは会計や原価計算の内容が出題され、日商簿記の2級レベルと同程度と考えられています。難易度としては日商簿記よりワンランク下といった内容であり、全商簿記の2級で日商簿記の3級と同程度です。学生が受験対象のため3種類ある簿記の検定試験の中でも、最も難易度が低いとされており、知名度もあまり高くありません。
全経簿記とは「全国経理教育協会」が主催する簿記の検定試験のことです。「簿記能力検定」が正式名称で、主な受験対象は経理専門学校の学生です。検定試験のレベルは上から上級・1~3級・基礎簿記会計と全部で5種類あり、上級の試験のみ年2回、上級以外だと年4回開催されています。
難易度は日商簿記と全商簿記の中間程度で、全経簿記上級で日商簿記1級と同程度、全経簿記1級で日商簿記の2級・全商簿記の1級と同程度です。全経簿記の上級に合格すれば税理士試験の受験資格を得られます。同程度のレベルとされていますが、全経簿記の上級は日商簿記の1級比較すると、難易度が比較的低めだと感じる人も多いため、日商簿記と全経簿記を合わせて受験する人もいます。
日商簿記とは「日本商工会議所」や各地の商工会議所が主催する簿記の検定試験のことで、正式名は「日商簿記検定試験」です。3種類ある簿記の検定試験のうち、最も知名度が高く就職・転職活動でも有利になりやすいとされています。日商簿記のレベルは上から1級・2級・3級・簿記初級・原価計算初級の5つがありますが、3級を基礎レベルとして初めて受ける人がほとんどです。
学生だけではなく社会人も多く受験しており、日商簿記1級の試験は年に2回、2級と3級は年に3回行われています。他の簿記検定試験よりも難易度が高く、日商簿記1級では商業簿記や会計学に加えて、工業簿記や原価計算も出題されます。日商簿記1級に合格すれば、全経簿記1級と同じく税理士試験の受験資格を得られます。就職に役立つ資格として考えるのであれば、全商簿記や全経簿記よりも知名度の高い日商簿記のほうが期待できるでしょう。
工業簿記のスキルまで必要とする会社ではないのなら、商業簿記のみの知識を証明できる日商簿記3級でも就職・転職でアピールすることは可能です。実際に日商簿記3級の資格でも条件として提示している求人は出されていますから、待遇や賃金にこだわらなければ日商簿記3級を取得した時点で就職できる企業は見つけられるでしょう。また、日商簿記3級を取得していれば簿記の基礎知識や土台がしっかりしていることが評価され、今後のスキルアップを期待して採用される可能性も期待できます。
ただし製造業(メーカー)に経理として就職を希望する場合には、日商簿記2級の資格が条件になっていることが多くあります。製造業では工業簿記や原価計算が必要不可欠だからです。逆に、メーカー経理への就職を目指していなければ日商簿記3級でも十分にアピールポイントになりますよ。その場合は工業簿記を必要としない、サービス業や飲食店などの求人を探してみましょう。
日商簿記3級を活かし、経理や事務など、製造業にはさまざまな職種が用意されています。もし製造業やメーカー経理への就職に興味がある人は、製造業の求人サイトである「はたらくヨロコビ」をチェックしてみてください。日商簿記をはじめ、さまざまな資格やスキル、経験を活かせる製造業での求人が多く見つかります。まずは「公式LINE」から情報をチェックしてみてください。
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