タレントくりえみ

ー芸能活動では、アイドルグループに所属した後、グラビアやYouTubeなど活動の幅を広げていますが、転機になったのは？

アイドルグループを卒業して、当時の事務所を辞めたことが転機になりました。アイドルのときは、事務所としては当たり前なのですが、発言できる内容が限られていて、自分を出せなかったんです。私は自分で作り出したい願望が強いので、自己クリエイティブを尊重されない世界は向いていないんですよね。そうなると、自分の実力不足が一番悪いのですが、やっぱり結果を出せなくて、いろいろとモヤモヤしていました。
それでアイドルも事務所も辞めて、自分の意志でSNSなどで発信をするようになり、自分自身をブランディングできるようになって変わりました。

ーどのように自分をブランディングしていったのですか？

事務所を辞めてフリーになったタイミングで、自分が勝負できそうな大きな市場を探しました。いろいろ調べると、コスプレは日本だけではなく世界中から支持されていて、毎年20万人以上集まるイベントもある。また、私にすごく似ている台湾のコスプレイヤーが大人気で、童顔系が受ける（笑）。さらに調べていくと、アニメ原作のコスプレだけではなく、グラビアとかけ合わせたようなオリジナルコスプレをしている人もいる。私はアニメに詳しくないし、原作を知らないとコスプレしても批判を受けるので、オリジナルで行こうと決めました。
コスプレ市場にターゲットを定め、成り上がるためにすべて計算して、自分を表現していきました。

ーフリーになり、自己ブランディングを始めて良かったことは？

私は自分の感覚を信じています。その感覚を生かして、自分のクリエイティブを120％出せることがすごく良かったです。
ただ、企業案件やメディア掲載などの依頼が増えてきて、やはり1人だと限界を感じるようになりました。私の表現を尊重しながら、一緒に前に進んでくれる人が必要だと思い、2年半前に今の事務所に所属しました。

ーとてもポジティブでエネルギッシュなくりえみさんですが、つらいこともあったと思います。どのように乗り越えましたか？

アイドル時代はつらかったですね。自分の思いとは違うことをしなければならないことが苦痛でした。この時期は、私は自分に嘘をつけないので、本音を言える人がそばにいてサポートしてくれたことが大きかったですね。話を聞いて、乗り越え方を一緒に考えてくれる人がいたので、頑張ることができました。プライベートで心の支えになる人は必要だと思います。
ただ、つらい時期があったから、自分に合うものを早く見つけられたとも思います。だから、決して無駄な時期ではなかったと思っています。

ー今後はどのような活動を考えていますか？

もともと起業したいとの思いがあり、会社を立ち上げていて、徐々にそちらの仕事が忙しくなってきています。いくつかビジネスを展開しているのですが、ひとつはクリームシャンプーを作って販売しています。泡立てが必要ないクリームタイプのオールインワンシャンプーで、髪の長い女性のヘアケアの時間を減らしたいと思って作りました。2年くらい工場を回って交渉した商品で、定期便のみのサブスク購入形態にしています。
もうひとつは、新しいタイプの美容皮膚科のコンサルティングです。美容皮膚科は良いけど高いイメージがあると思いますが、それは人件費がかかるからなんですよね。だったら人件費を減らせば安く提供できると思い、セルフでできる美容皮膚科を作りました。いまは5店舗あります。
また、今年の秋からは、さらにAGA処方のビジネスもスタートする予定です。悩んでいる人に向けて、オンライン診療をして効果があると思われるシャンプーや薬を処方する仕組みです。この仕組みは土台を作ってしまえば、ワキガやEDなど他の悩みにも展開できると考えています。

ーくりえみさんは芸能界でも人気がありますが、なぜさらに起業してビジネスを展開しているのでしょうか？

この業界で精神的に安定しない子を多く見てきましたが、その理由はやはり保証がない不安定な世界だから。もちろん露出や人気が安定しないこともありますが、たとえ有名になってメジャーと呼ばれる地位をつかんだところで、以前に比べるとテレビなどの仕事の単価が落ちています。
一見、芸能界で成功したように見えても、周りの人が困ったときに助けられる収入が得られるとは限らない。そう考えると、自分のビジネスを成立させないと、本当の意味の幸せはつかめないと思い、起業しました。

ーくりえみさんが働くうえで大切にしていることはなんですか？

自分の直感を信じて、楽しく働けることです。私は直感に任せて動いていますが、そうすると「無理」と言われることが多いんですよ。でも、私は「無理」の中に可能性があると思っています。
いままで、大手の事務所を辞めたら無理、Instagramもいまから始めても遅いから無理、と散々言われました。それでも、いまは無理ということが常識かもしれないけど、私がそれを変えれば良いと思ってやりました。そうしたら、しっかり伸びました。
ビジネスも、美容皮膚科やAGAは競争が激しいレッドオーシャンだから無理、と言われました。でも、レッドオーシャンということは、それだけニーズがあるということ。探すことは大変ですが、必ずビジネスを成立させる抜け道はあります。
「無理」と思うのは、当たり前の中に生きているから。当たり前は変わっていくものだから、無意識に可能性を狭めるのはもったいないと思います。

ーくりえみさんにとっての「はたらくヨロコビ」とは？

大切な人を助けたいときに助けられることです。私は母子家庭だったので、ここまで育ててくれた母になにかあったときに守れるのは自分だけ。自分が成功していないと守れないと、ずっと考えていました。
しかし、20代のころは自分本位で、多くのスタッフが支えてくれてお膳立てされているのが当たり前だと思っていました。でも、少しうまくいったときでも、全然喜べなかったんですよ。自分本位って、自分を苦しめているんですよね。
事務所を辞めてフリーになったとき、たくさんの人が関わってくれて仕事が成立していることを知りました。感謝の思いでいっぱいですが、言葉だけでなく、すべてにおいて恩返しできる状態になることがヨロコビです。自分ではなく、周りが幸せになれば良いと思って仕事をするようになってから、うまくいったときに自分自身も喜べるようになりました。