派遣社員は住民税を自分で支払うの?確定申告は?派遣社員と納税について
住民税の納税通知書が自宅に届いて「これは何だろう」「どうして給与から天引きになっていないのか」など、疑問を抱いている派遣社員もいるのではないでしょうか。派遣社員の場合、所得税は会社が納付しますが、住民税は自分で納付しなければならないことが多いため注意が必要です。ここでは、派遣社員の納税や確定申告に関して詳しく説明します。
一定以上の収入があれば、誰でも「所得税」と「住民税」を納める必要があります。会社に直接雇用され働いている場合は、勤務先が毎月の給料から天引きして納付して年末調整で過不足分を精算するしくみのため、基本的に自分では何もする必要はありません。それでは、派遣社員の場合はどうでしょうか。ここでは、派遣社員の納税はどのようになっているか解説します。
会社に勤めている会社員は、毎月の給料から「所得税」「住民税」が天引きされています。所得税は所得に対して課される国税で、住民税は都道府県や市町村に納める地方税です。会社は、給料額から納めるべき所得税と住民税額を算出してその金額を天引きし、代わりに国に納めています。ただし、天引き額は概算で算出された数値のため、正確ではありません。そこで、年末になると会社がその年の給与額から正しい納税額を計算しなおして、過不足分を精算します。そのため、基本的に会社員やパート、アルバイトなど会社から給料を得ている方は、特に納税を行う必要はありません。
派遣社員の場合、派遣会社が所得税を天引きして代わりに納税しています。派遣会社が所得税を納付しているため、派遣社員自ら納税や確定申告を行う必要はありません。確定申告とは、自分で税務署に「この1年間にこれだけの所得があったため、これだけの税金を納めます」と申告して必要な納税を行うことです。
派遣会社には住民税を徴収する義務はありません。そのため、所得税のみを天引きし、住民税については関知しない派遣会社が多いです。これは、派遣社員によって働き方が異なり収入にも大きな差があるため、住民税まで処理すると派遣会社の負担が大きくなることも理由の一端でしょう。ただし、所得税も住民税も天引きしている派遣会社もあり、会社によって対応はさまざまです。派遣会社が天引きをしていなくても、一定額以上の所得があれば住民税を納付しなければなりません。そこで、住民税がどうなっているかは、給料明細をチェックするか雇用されている派遣会社に問い合わせるかして把握しておきましょう。
所得税は1年間の所得に対して課せられ、国に納める必要がある税金です。派遣社員は派遣会社が代わりに納付するため、所得税の納税方法についてはあまり気にする必要はないでしょう。それでは、住民税はどのようにして金額が決定し、どのように納めれば良いのでしょうか。ここでは、住民税の決まり方や納付方法について解説します。
住民税とは、都道府県と市町村とに納める税金のことです。「均等割」と「所得割」の2つから構成されていて、それぞれ以下の違いがあります。
- 均等割:すべての住民が平等に一律で課される税金
- 所得割:住民の所得に応じて課される税金
均等割の標準額は市町村民税(東京都23区などは特別区民税)3500円、都道府県民税が1500円で合わせて5000円です。ただし、これはあくまで標準の金額で、都道府県や市町村によって金額が異なるケースもあります。
所得割は、前年1月1日から12月31日の期間に得た所得を基準として算出するものです。前年の所得がベースとなるため、仮に今年契約が満了して収入がなかったとしても支払わなければなりません。所得割の算出方法は以下のとおりです。
- (所得-所得控除)×税率-税額控除
どの地域でも、標準税率は市町村民税(東京都23区などは特別区民税)が6%、都道府県民税は4%で10%です。つまり、所得が大きいほど住民税額も大きくなります。なお、税率は都道府県や市町村によって異なることもあります。
住民税の納付方法には次の2種類があります。
- 特別徴収:給与から天引きされる
- 普通徴収:自分で税務署に納める
2種類の方法があるといっても、派遣社員が好きに選べるものではありません。派遣会社が特別徴収をしていないのであれば、自分で納める普通徴収を行う必要があります。役所から自宅に「納税通知書」が送付されてくるため、それを役所や金融機関、あるいはコンビニに持っていって支払いましょう。なお、支払い方法は全額一括のほかに4回の分割払いも選べます。分割払いの納付期日は以下のとおりです。
- 第1期:6月末日
- 第2期:8月末日
- 第3期:10月末日
- 第4期:翌年1月末日
住民税の納税通知が届いても、忙しかったり面倒だったりして支払いをずるずると伸ばしてしまうこともあるでしょう。派遣社員でも所得税は天引きされるため、住民票も引かれているものと勘違いしてしまい、納税通知がきてもろくに目を通さず放置してしまうケースもあります。それでは、もし納付期限までに支払いをしないでいるとどうなるでしょうか。これは自治体によって違いはあるものの、およそ次のような流れになることが一般的です。
- 納付期限が過ぎて1カ月程度で督促状が届く
- 支払いをしないでいると督促状が届く
- 督促状も放置していると、役所の職員などから催促の電話が来たり差し押さえの予告書が来たりする
- 払わなければ財産の差し押さえが行われる
納付通知書が届いたら、期日までに支払うことが大切です。少なくとも、督促状が届いたらすぐに対応しましょう。とはいえ、滞納が長期にわたるとすぐに払えない金額になっていることもあるでしょう。その場合は、分割払いで払えないか自治体に相談してみると対応してもらえることがあります。
先に、所得税は源泉徴収(給与からの天引き)されるため、派遣社員自ら納税や確定申告をする必要はないと述べましたが、場合によっては確定申告が必要なこともあります。ここでは、確定申告の基本について説明します。
派遣社員は基本的に確定申告をする必要はありませんが、以下のケースに当てはまる場合は自分でしなければなりません。
- 12月の時点で派遣社員として勤務していない
- 派遣会社が派遣社員の年末調整を行わない
- 副業の所得が年額で20万円を超える
- 医療費控除や寄付金控除などを受けたい
- 給料ではなく「報酬」として支払われている
確定申告をしなくて良いのは、会社が12月に年末調整を行うからです。12月に会社に在籍していなければ年末調整が行われないため、自分で確定申告をする必要があります。また、なかには派遣社員の年末調整を行わない派遣会社もあり、この場合も自力で確定申告をするしかありません。
副業による所得が年間で20万円を超える場合も確定申告が必要です。20万円以下であれば必要ありません。さらに、派遣会社から受け取るのが給与ではなく報酬という形になっている場合も、自分で確定申告をすることが必要です。また、所得は医療費控除や寄附金控除などさまざまな控除が受けられます。たとえば、医療費控除は1年間に自分や家族が支払った医療費が一定額を超えたときに、寄附金控除は国や地方公共団体などに特定寄附金を支出したときに、収入から一定額を差し引けるというものです。所得税は収入からさまざまな控除を差し引いた残り(所得)に対して課税されるため、控除を受けるほど税額も安くできます。
確定申告をする際に必要な書類には以下があります。
- 確定申告書
- 通知カードやマイナンバーカードなどマイナンバーがわかるもの(確定申告書に記入が必要)
- 1年間の源泉徴収票
- 銀行の預金通帳やキャッシュカードなど口座番号がわかるもの
- 銀行届け出
- 控除を受ける場合は証明書や領収書
確定申告の期間は、毎年2月16日~3月15日ごろです。初めての確定申告でわからない場合は、必要書類を持参して早めに税務署に相談に行くと良いでしょう。税務署の窓口で、わからないところを確認しながら作成できます。
また、自宅からe-taxのシステムを使ってオンラインで申告することも可能です。ただし、e-taxを利用するにはパソコンのほか、マイナンバーカードとICカードリーダーが必要です。マイナンバーカードやICカードリーダーがない場合は、事前に税務署まで行って届け出をすれば利用できます。
派遣社員として働いている方のなかには、配偶者の扶養内で収めたいと考えている方もいるでしょう。ここでは、扶養内で働くなら注意したい年収額や住民税がかからない範囲について説明します。
「配偶者の扶養に入る」とは一般的によく聞く言葉ですが、扶養控除には「税法上の扶養」と「社会保険上の扶養」の2種類があることを知らない方もいるかもしれません。扶養から外れず税金や社会保険料を払わないようにしたいなら、まずはそれぞれがどういうものなのかを理解しておきましょう。
まず「税法上の扶養」とは、夫の扶養に入った妻が所得税や住民税の一部を払わずに済むというものです。妻の年収が103万円以下であれば所得税がかからず、夫は配偶者控除を受けられます。年収が103万円を超えると所得税が発生し、夫は配偶者控除の適用外となります。ただし、妻の年収が201万円までであれば夫は配偶者特別控除が受けられるため、税負担が突然急増することはありません。
社会保険上の扶養とは、妻が夫の健康保険に加入でき、国民年金の第三号被保険者になることで、保険料の負担が免除されることです。妻の年収が130万円を超えると社会保険上の扶養から外れてしまい、自分で保険料を負担しなければなりません。支出が増加しますが、将来受け取れる年金が増えることを考えると必ずしも損とは言えない側面もあります。なお、住民税は年間の給与収入が100万円を超えると発生します。これは扶養とは関係ありません。
年収が100万円を少し上回っても、増える住民税はそれほど高額ではありません。そのため、100万円の壁についてはあまり気にする必要はないでしょう。問題は、住民税よりも社会保険料です。先に述べたとおり、130万円を超えると扶養から外れ、社会保険料を自分で負担しなければなりません。年収が130万円を超えて150万円までは働くほど負担が増えて手元に残る収入が少なくなる、いわゆる「働き損」になる可能性が高いです。130万円を少し超える程度であれば、130万円以下に収まるように働くのもひとつの方法でしょう。
税金や保険料に関する知識がなければ、払う義務があるものを知らずに滞納してしまったり、損してしまったりする可能性があります。派遣社員のように非正規雇用で働く場合、自分で税金や保険料を納めなければならないこともあるため、制度や仕組みを十分に理解しておくことが大切です。今後、派遣会社やアルバイト先を選ぶときは、税金や社会保険がどのようになっているのも意識すると良いでしょう。