2020.8.21

派遣社員の確定申告・源泉徴収・年末調整って?やるべきことは何?

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正社員時代は個人の納税はすべて会社が行ってくれていました。派遣社員として就労する場合、どのような手続きや届出が必要なのでしょうか。「源泉徴収票を求められたんだけど源泉徴収票って?」「年末に『確定申告』や『年末調整』って聞くけど、派遣社員は何かしないといけないの?」と不安に思う方もいるでしょう。この記事では、派遣社員は税金の処理に関してどのような対応が必要となるのかを説明します。

1.確定申告・年末調整・源泉徴収を簡単に説明

まずは「確定申告」「源泉徴収」「年末調整」それぞれの意味と必要性について、わかりやすく説明します。

1-1.確定申告とは「その年の税金を申告すること」

確定申告とは、1月1日から同年の12月31日までに働いた分の所得を税務署に申告し、過不足のないように所得税を納付することです。確定申告をする必要があるのは、個人事業主やフリーランスなどで、一般的な会社員は必要ありません。ただし、会社員でも給与以外に20万円を超える所得がある方や、年収が2000万円を超える方、2カ所以上から給与を受け取っている方なども確定申告の必要があります。さらに、給与や賞与から税金が引かれていない場合も、課税の基準に達していれば確定申告をして納税しなければなりません。

毎年2月中旬から3月中旬の間に、管轄の税務署や自治体の確定申告特設コーナーなどで前年分の確定申告を行い、必要書類を提出します。確定申告書の期限日までに、現金や振込、電子納税、クレジットカード、コンビニなどで納税します。税務署からは特に納税通知などの案内はありません。忘れないように期限までに必ず申告と納税を済ませましょう。課税対象の所得があるにも関わらず、申告せずに放置した場合は脱税となり、追徴課税のペナルティが科せられることがあります。

1-2.源泉徴収とは「給料からあらかじめ税金を天引きしていること」

会社員、パート、アルバイトなどの給与所得者は、月々の給与から所得税があらかじめ天引きされています。天引きされた従業員の所得税は、会社がいったん預かり、従業員に代わって国に納付しています。そのため、会社に勤務する従業員は個人で所得税を納める必要がありません。この制度を「源泉徴収」といいます。派遣社員も派遣元の会社と雇用契約を結ぶ従業員であって給与所得者ですので、雇用主である派遣会社が源泉徴収をした上で給与を支払っています。

1-3.年末調整は「会社が代わりに確定申告をしてくれること」

年末調整とは、「会社が従業員の代わりに確定申告を行うこと」を指します。会社は、年内最後の給与の金額が決定した時点で、本来納めなければならない所得税を正しく計算し直す必要があります。というのも、毎月の源泉徴収の所得税額はあくまでも概算のため、年末に各従業員の状況に応じて、適用する減税措置を加味し、本来の所得額を確定しなければならないからです。そのため、以前に納めた所得税と、年末に確定した正しい所得税との間に差異が生じるのです。

今まで納めた所得税が年末に確定した所得税よりも多ければ、所得税の還付として年末の給与と一緒に税金が返金されます。また、従業員の子どもの就職などで扶養家族から外れた場合などは、過去に納めた所得税にさらに加算して納めなければならないことがあります。このように、年末で正しく再計算して源泉所得税の過不足を精算することを「年末調整」といいます。会社が毎年、年末調整という形で確定申告を代行してくれるため、従業員は個人で確定申告を行う必要がないのです。

2.「源泉徴収票」とは?求められたらどうすればいい?

給与をもらう社会人ともなると、転職や契約ごとなど節目となる大切な場面で「源泉徴収票」の提出を求められることがあります。源泉徴収票とは何なのか、どこでもらえるのかなどについて説明します。

2-1.源泉徴収表は「確定申告の結果のお知らせ」

源泉徴収票とは、会社が従業員の年末調整を行った際に発行してくれる確定申告をした結果のお知らせや控えとなる書類を指します。A5サイズの用紙で、年収や所得税額、社会保険料などの金額が記載されています。源泉徴収票を発行するのは会社側の義務であり、大切な場面で重要な書類となるものです。月々の給与明細を単に集計したものと勘違いする人もいるようです。しかし、源泉徴収票は重要な個人情報を含んだ大切な書類なので、なくさないように保管しておいてください。源泉徴収票の発行は、12月の給与が確定した時点で従業員全員に渡されます。また、時期に関わらず従業員本人の退職時や、必要に応じて従業員や元従業員の希望があれば随時会社で発行してもらえます。

2-2.源泉徴収票を求められる場合

源泉徴収票の提出を求められるのは、次のような場合です。自分で確定申告をするとき、住宅ローンや車のローンを組むとき、クレジットカードを作るとき、賃貸住宅の入居を申し込んだとき、転職をするときなどです。また、子どもがいれば児童手当や保育園入園の申し込み、就学支援や奨学金貸与などの際も、源泉徴収票の提出が必要になることがあります。ローンやクレジットカード、賃貸などの契約では、年収を確認して本人の支払い能力の有無を判断するため提出を求められます。

2-3.源泉徴収票を紛失している場合の再発行

大切な場面で源泉徴収票の提出を求められた際に、紛失に気づいたときはどうしたらよいのでしょうか。探しても源泉徴収票が見つからない場合は、会社に申し出て再発行してもらうしか方法はありません。金額さえ分かればいいのだろうと自分で勝手に体裁を整えて作るわけにはいかないのです。退職した会社でも、連絡をして再発行してもらえるようお願いしましょう。

3.派遣社員で確定申告が必要・した方が良い場合

派遣社員で会社が年末調整を行ってくれる場合は、基本的に個人で確定申告を行う必要はありません。しかし、自分の状況によっては確定申告をしなければならない場合と、やっておいた方が良い場合があります。どういうことなのかを説明していきます。

3-1.【必須】副業が20万を超えている場合

会社から給与や賞与などを受け取っている派遣社員で、それ以外の所得が1年間に20万円を超えている場合は、自分で確定申告を行わなければなりません。20万円超の所得とは、内職やクラウドソーシングなどの副業、家賃収入、原稿料などを指します。つまり、会社から支給される給与以外の年末調整が行われない所得に対しては、税務署に確定申告を行う必要があるのです。ちなみに、20万円超の所得とは、必要経費を差し引いたあとの金額を指します。収入を得るために使った経費は所得控除として認められます。収入から経費を引いた残りが所得になります。

3-2.【必須】年末に会社勤めをしていない場合

年末調整を行うよりも前に会社を退職して年内に再就職をしていない場合は、会社の従業員として年末調整を行ってもらうことができません。退職前の会社で源泉徴収票を発行してもらって、自分で住所地を管轄する税務署で確定申告の実施期間中に手続きを済ませる必要があります。年内に再就職先へ転職した場合は、前の会社の源泉徴収票を提出することで、新しい会社で年末調整を行ってもらえます。

3-3.控除を受けたい場合

会社で年末調整を行ってもらった方でも、一定の要件を満たせば税金の還付が受けられる場合があります。たとえば、年間の医療費の合計が10万を超えるか、年収の5%以上の医療費を支払ったときは、医療費控除の申告をすることで納め過ぎた税金が戻ってくる可能性があります。医療費は病医院や薬局に支払った診療費や薬代以外に、治療に必要な医療用具や市販薬、入院の際の部屋代や食事代、義歯、通院の交通費なども含まれます。

また、5つ以上の地方公共団体へふるさと納税を行った場合や、住宅ローンを組んだ年も税金が戻ってくる可能性が高いので、忘れずに確定申告の手続きを行いましょう。また、副収入から源泉徴収がされていて合計所得が20万円に満たない場合も、差し引かれた所得税が返還されます。

4.よくある疑問

派遣社員の確定申告について、まだまだわからないこともあるでしょう。よくある疑問をまとめてみました。

4-1.年の途中で派遣会社を変えた場合は?

年の途中で派遣会社を退職し、年内に別の派遣会社に変わって就業している場合があるでしょう。そのようなケースでは、前の派遣会社から源泉徴収票が退職時に発行されますので、次の派遣会社に源泉徴収票を渡すことで、年末調整を受けることができます。たとえば、同一年内に、A社を退職し、次にB社に転職したものの退職に至り、さらにC社に転職した場合があったとします。そのように年内に複数回の転職をした場合は、A社とB社からそれぞれ発行された源泉徴収票があれば、C社にA社とB社の源泉徴収票を提出することで年末調整が可能です。

4-2.派遣会社はずっと同じだけど派遣先が変わった場合は?

同じ派遣会社から派遣された就業先での契約期間が満了し、別の派遣先に移っても、給与の支払いは雇用主である派遣会社になります。就業先をいくつ変わっても、派遣会社を退職しない限りは、年末調整を行ってくれるため心配には及びません。ただし、先に述べた通り、医療費控除や寄付金控除などの対象で税金の還付が受けられる場合は、自分で別途確定申告を行う必要があります。還付のための確定申告なら、2月中旬から3月中旬の確定申告シーズンとは別に、5年以内ならいつでも手続きが可能です。期限内であれば複数年分の還付申告を一度に行うこともできます。ただし、5年分をまとめて集計するのではなく、1年ごとに書類の作成が必要です。

4-3.副業が給与収入の場合は?

派遣で働く場合、メインで働いている派遣先の他に、空いた時間で副業や派遣会社のかけ持ちをして収入を得ている方もいるでしょう。どちらからも給与を受け取っている場合は、それぞれの会社から年末調整を行うための申告書類が配布されるでしょう。申告書類とは、給与所得者の扶養控除等申告書、給与所得者の配偶者控除等申告書、給与所得者の保険料控除申告書、給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書などを指します。これらの書類を提出した会社1社でしか年末調整は行ってもらえません。

この場合は、勤務時間も長く給与額も多い、メインで働く方の派遣会社で年末調整の手続きを進めることになります。もう一方の会社へは、他で手続きした旨を伝えるだけで構いません。しかし、メイン以外の収入が20万円を超えた場合は、自分で確定申告を行う必要があります。

基本的に派遣社員は確定申告の心配はしなくて大丈夫

源泉徴収票はいつ必要になるかわからないため、なくさないように保管しておきましょう。万一紛失してしまった場合は、会社にお願いして再発行をしてもらうこともできます。必要なときに間に合うように速やかに会社に問い合わせましょう。派遣社員は、基本的には派遣会社が年末調整を行ってくれるため、確定申告は不要ですので安心してください。ただし、税金の還付が見込まれる場合は確定申告を行ったほうが良いでしょう。