2020.8.21

派遣社員の手取りや「マージン」って?さらに稼ぎたいならどうすればいい?

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派遣社員として働くことを検討する際、多くの方は収入がどの程度になるのかが気になるのではないでしょうか。ちなみに、派遣社員の場合は「時給×時間」がそのまま収入となるわけではなく、そこからいろいろ引かれるので注意が必要です。そこで、本記事では天引きされるものやされないものを踏まえて手取り額がいくらになるかを説明し、そのうえで、さらに稼ぎたい場合はどうすればよいかについても紹介していきます。

1.派遣社員の時給相場

厚生労働省がまとめた「平成 29 年派遣労働者実態調査の概況 」によると、派遣社員の時給で最も多いのが「1000 円以上1250 円未満」で、全体の35.5%を占めています。また、それに続くのが「1250 円以上1500 円未満」の21.1%で、全体の平均は1363円です。一方で、時給が1000円未満や逆に1500円以上という人も一定数存在し、同じ派遣社員でも個々の額にはかなりの差があることがわかります。そして、その差の主な要因となっているのが職種と地域です。

たとえば、職種別ではITエンジニアやクリエイティブ系といった一定以上の経験やスキルが求められるものほど時給が高い傾向にあります。それに対して、製造・物流・軽作業系などの単純作業を中心とするものは、どちらかというと低めです。また、地域に関しては関東・東海・関西などの大都市を有するエリアほど高い傾向にあります。

2.派遣社員の給料からは何が引かれる?天引きされないものもある!

派遣社員の多くは1000円~1500円程度の時給で働いていますが、それがそのまま手取りとなるわけではありません。そこからいろいろなものが引かれ、残った金額が収入となるのです。そこで、この段落では具体的に何がいくら引かれるのか、また、それは天引きなのか、あるいは自分で納めなければならないのかといった問題について解説していきます。

2-1.条件によっては社会保険料が天引き

正社員の場合は社会保険への加入が義務付けられており、保険料が毎月の給与から天引きされています。ちなみに、社会保険料とは健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料及び、40歳以上の方が支払いの対象となる介護保険料の4つを合わせたものです。正社員は毎月それを支払い、その代わりに、病気やけがをしたときに治療費の一部を国に負担してもらったり、老後の年金を受け取ったり、あるいは失業したときに一定期間給付を受け取れたりといった恩恵にあずかることができます。

一方、派遣社員はどうかというと、それは労働時間と雇用契約の期間によって変わってきます。具体的には、フルタイムで勤務し、かつ2カ月以上の雇用契約で就業しているケースでのみ社会保険への加入が可能となります。その場合、保険料は正社員と同じく天引きです。ただし、保険料の額は一律ではなく、収入額や派遣会社が加入している組合などによっても変わってきます。いずれにしても、条件を満たせば社会保険への加入は強制となるため、どうしても保険料の天引きを避けたいというのであれば、加入条件を満たさないように就業するしかありません。

2-2.所得税は天引きされる

社会保険料と同じように、給与の額に応じて支払わなければならないのが所得税です。正確には社会保険料控除後の給与にかかり、具体的な額は国税庁ホームページの『給与所得の源泉徴収税額表』に当てはめれば導き出すことができます。もっとも、派遣社員の場合、所得税はあらかじめ天引きされているため、普段その額を意識することはあまりないでしょう。

2-3.住民税は天引きされないことが多い

派遣社員の場合、給与から引かれるもののなかで特に注意が必要なのが住民税です。なぜなら、正社員とは異なり、天引きされずに自分で自治体に納めなければならないケースが多いからです。これを給与から天引きされる「普通徴収」に対して「特別徴収」といいます。ちなみに、住民税の額は個々の状況に応じて計算方法が異なるため、一概にいくらとはいえないものの、課税所得の10%程度というのが一応の目安となります。また、特別徴収の場合は一括納付か、年に4回に分けての納付かの選択が可能です。いずれにしても、使い過ぎて住民税が支払えなくなってしまったなどといった事態にならないよう、お金の管理はしっかりと行う必要があります。

3.手取りは総額の70~80%

派遣社員の手取りは給与から社会保険が控除され、そこから所得税と住民税を引いた額となります。給与総額と比較すると、手取りの額はその70~80%ほどです。たとえば、時給1100円で働き、月の給与総額が18万円だったとしても、自分が自由に使える手取りは15万円ほどになってしまいます。同様に、時給1500円で給与総額25万円なら手取りは20万円、時給1800円で給与総額30万円なら手取りは24万円といったところです。

4.給料だけでなく福利厚生も調べよう

派遣社員としての働き先を探す場合、給与の額はもちろん大切ですが、それ以外に忘れてはならないのが福利厚生の存在です。特に、交通費の有無は必ず確認するようにしましょう。なぜなら、交通費が別途支給されるということは、給与が上乗せされるのと同じ意味を持つからです。また、派遣社員が受けられる福祉厚生の種類は以前と比べて増えているため、交通費以外についても、その内容をしっかりと確認しておきたいところです。

たとえば、代表的なものとしては有給休暇が挙げられます。有給休暇は正社員しか利用できないと思われがちですが、決してそんなことはありません。一定の条件を満たしていれば派遣社員はもちろん、アルバイトやパートも利用は可能なのです。同様に、就業期間や勤務時間が一定ラインをクリアしていれば、健康診断を受けられる企業も数多く存在します。さらに、企業によっては資格取得のためのスキルアップ手当を受けられたり、各種施設の利用料が割引になったりもします。たとえ給与自体は同じぐらいだったとしても、こうした福利厚生があるとないとでは大違いです。必ずチェックして内容をよく吟味するようにしましょう。

5.派遣会社のマージン料について

派遣の話になると、しばしばマージンという言葉が登場します。これに関しては意味がよくわからないという方も多いのではないでしょうか。そこで、この段落では「派遣のマージン」の意味やマージンで支払う額の相場などについて解説していきます。

5-1.派遣会社のマージンとは?

一言でいえば、マージンとは仲介手数料のことです。派遣会社は派遣先に人材を紹介する代わりに紹介料を受け取ります。そして、紹介料の中から派遣社員に給与を支払い、残ったお金が「派遣会社のマージン」というわけです。その相場は仲介手数料の20~30%といったところです。ちなみに、マージン率は公開の義務があり、派遣会社のホームページやパンフレットなどで確認することができます。

一見、マージン率が低いほど良心的な会社だと思われがちですが、必ずしもそういうわけではありません。なぜなら、マージンは派遣会社の取り分というだけでなく、その一部を派遣労働者に対する福利厚生や教育・フォローなどに還元しているからです。また、マージン率の低い会社は派遣先から安い料金しか受け取っておらず、競争力に欠ける可能性もあります。そのため、マージン率だけで登録する派遣会社を決めるのはおすすめできません。

5-2.求人に掲載されているのはマージンを引いた後の額

前述の通り、マージンとは派遣先から派遣会社に払われるものです。したがって、労働者が支払う必要はありません。また、求人に記載されている時給からはすでに派遣会社のマージンは引かれています。マージンといえば、稼いだお金のなかから差し引かれるというイメージを抱いている方がいるかもしれませんが、実際のところはそういった心配は一切ないのです。

6.もっと稼ぎたいなら?

派遣社員の場合、給与総額はそれなりにあったとしても、そこから保険料や税金を差し引いて手取り額を計算してみると、得られる収入が思ったよりもかなり安く感じてしまう場合があります。なんとかもっと稼げないかと思案している方のために、この段落では主な収入アップの方法を3つ紹介していきます。

6-1.派遣社員をしながら副業をする

働き方改革によって副業が推進されているとはいえ、企業の大半は未だに副業を禁止しています。それに対して、派遣社員は副業が許されるケースが多いという利点があります。そこで、アルバイトをして現状の給与だけでは足りない分を稼ぐというのも一つの手です。退社後、毎日アルバイトをするというのは大変ですが、お金が必要なときだけ単発の日雇いバイトをするというやり方なら負担も少ないのではないでしょうか。また、アルバイトだけでなく、家にいながらお金が稼げるネットでの副業や自分の特技を活かした週末起業などにも挑戦してみると、選択の幅を広げることができます。

ただ、会社によっては派遣社員であっても副業を禁じているところもあるため、就業規則の事前確認は必須です。それから、副業分の収入は一部の例外を除いて確定申告が義務付けられています。その場合は、自分で必要な書類を揃えて手続きをしなければならないので、くれぐれも申告をし忘れたなどといったことがないようにしましょう。

6-2.残業をする

正社員は残業をしてもそれがカウントされずに、残業代が出ないといったケースがよくあります。それに対して、派遣社員は給与が時給計算で支払われているうえに勤怠管理が正社員よりしっかりしているため、残業代はほぼ確実に支払われます。つまり、残業をすればするほど稼げるのです。したがって、なるべく多く稼ぎたい場合は、事前に派遣会社と相談し、残業が多そうな派遣先を選ぶのも有力な選択肢となります。ただし、残業をすることを前提に働いていると心身ともに不調をきたす場合があるので、あまりおすすめはできません。

6-3.製造系に興味があるなら期間工がおすすめ

製造・物流・軽作業系といった仕事に興味があるのなら、「期間工」はかなりおすすめです。ちなみに、期間工の場合は派遣会社からの紹介ではなく、メーカーと直接契約をして契約社員という形で働きます。そのため、福利厚生や労務管理、賃金といったものは大手メーカーの規定に準じたものになり、派遣社員と比べて待遇が良い場合が多いのです。正社員として長期間働くとなると不安があるものの、とりあえず安定した収入が必要な方、あるいは、短期間で大きく稼いで海外留学などの夢を叶えたいという方などには特におすすめです。

7.「期間工」の魅力

期間工というと、力仕事で職場は男性ばかりといった印象があるかもしれませんが、現実はそういったイメージとはかなり異なっています。期間工の仕事は主に車の製造が多く、そのなかには力仕事でない作業がいくつもあります。そして、そういった分野では多くの女性が活躍しているのです。それに、期間工の魅力はそれだけではありません。まず、賃金が高くてかなりの収入が期待できるうえに、満了慰労金などの各種手当てや福利厚生が充実しているのがうれしいところです。もちろん、社会保険にも加入することができます。

また、無料の寮を用意しているところが多いため、その気になればかなりの節約生活が可能です。ちなみに、期間工の契約期間は最長で2年11カ月なのに対して、派遣社員の契約期間は最長で3年間です。契約期間は派遣社員とほぼ同じであり、派遣社員に比べてデメリットといえる部分はこれといってないといえます。

総額だけでなく手取り額をしっかり確認しよう

派遣社員の時給は学生アルバイトより高く設定されているのが一般的です。そのため、学生アルバイトの経験を経て派遣社員になった場合は高いというイメージを持つかもしれません。しかし、学生のアルバイトとは違っていろいろ引かれるものが多いので、手取り自体は思ったより安いといったケースも少なくないのです。したがって、応募する前に、生活や貯金に必要な額が残りそうかどうかをしっかりと確認するようにしましょう。