2020.8.18

付随業務とは?付随的業務との違いや、自由化業務についても解説

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かつての派遣業は「付随業務」や「自由化業務」などに分かれていました。これらに関係する「付随的業務」も注意するべきポイントでした。現在はこれらの線引きがなくなっているものの、派遣社員が業務内容を確認する際の基準にはできます。この記事では、付随業務の意味や付随的業務との違いなどについて解説をしていきます。

1.付随業務とは

かつては「政令26業務の一部」とみなされていた業務を「付随業務」と呼びました。そもそも政令26業務とは、専門的な技術がなければ遂行できないとされている、26種類の業務のことです。ソフトウェア開発や機械設計、通訳、秘書などが26種類の中に含まれています。これらの業務は専門性の高さにより、短い期間だけ仕事についていても役割を果たせないとされていたからです。

そのため、派遣受入期間の制限が設けられていませんでした。派遣の場合、1年以上の長期契約を結んで仕事をするケースが一般的でした。事務用機器操作は特に、付随業務として扱われる傾向が強くなっていました。ただし、政令26業務そのものは2015年に撤廃されました。それ以降は、26種類の業務以外でも専門性の高い業務を「付随業務」と表現しています。

逆の言い方をすれば、政令26業務に該当しない仕事は付随業務ではない、という判断がされていたのです。一概にはいえないものの、「専門的な知識や技術がなくても遂行できる」と考えられる職種が挙げられるでしょう。たとえば、簡単な入力作業や工場でのライン作業などは付随業務に含まれません。また、事務作業の多くも付随業務ではないとみなされていました。ただし、近年のオフィスでは、複雑なソフトウェアやシステムを導入し、操作する側にも相応のスキルを求めるパターンが増えてきました。こうした職場に派遣されたとすれば、事務用機器操作が発生すると認められることがあります。

付随業務以外の仕事が中心のものを「自由化業務」と呼びます。自由化業務は、1年間の受入期間制限が設けられているのが普通でした。ただし、企業によっては賃金の安い派遣社員を長期間にわたって雇いたいため、通常の事務作業を「事務用機器操作がある」として、強引に付随業務に含めようとし始めました。こうした流れを受けて、厚生労働省は2012年から「専門26業務派遣適正化プラン」を制定し、正しい基準で派遣社員が雇われる環境づくりに努めました。それでも、政令26業務が撤廃されてからは付随業務と自由化業務の線引きはなくなり、受入期間の制限もなくなりました。

付随業務に近い内容の「付随的業務」も理解しておきたいところです。付随的業務とは政令26業務の延長線ではあるものの、仕事自体に直接的な関係のない領域を指していました。たとえば、秘書の仕事は政令26業務に含まれていました。しかし、秘書の仕事は雇い主のスケジュール管理のようなよく知られている部分ばかりではありません。コピーを取ったりごみを捨てたりといった雑務も当然あるでしょう。ここでいう、コピーやごみ捨てが付随的業務です。

そして、政令においては付随的業務の割合を非常に重視しています。全体の仕事内容の中で、付随的業務が1割以下であれば付随業務として認められます。しかし、1割を超えると付随的業務の領域が広すぎるとされ、受入期間の制限が設けられてしまうこともあったのです。

さらに、「その他の業務」についても、派遣労働者は把握しておきたいところです。付随業務に従事していたにもかかわらず、付随的業務にも該当しない「お茶くみ」「オフィスの掃除」といった業務を多く引き受けていると、自由化業務に切り替わってしまう可能性が出てきます。2015年の改正派遣法以降、こうした現象は表向きには見られなくなっています。しかし、派遣従業員が長期的に働くためには「専門性」を身に付けることが重要なのは変わらないといえるでしょう。

2.付随業務の例

大前提として、政令26業務自体はもう残っていません。しかし、「派遣法施行令第4条第1項各号の業務」という項目はまだ存続しています。ここにあてはまる仕事は専門性が高いとみなされます。たとえば、営業でいうところの「調査関係」や「デモンストレーション関係」です。新商品を調査して、市場の反響を分析するには専門的な知識が必須です。また、顧客の前で商品のデモンストレーションを行うのも相応のスキルが求められます。単にマニュアルを覚えているだけでなく、顧客からの質問にも対応しなければならないなど、ある程度の努力がなければ務まらない仕事です。

「セールスエンジニアの営業関係」や「金融商品の営業関係」も該当します。エンジニアはシステム、インターネットについての深い知識や経験がないとできません。また、金融関係も顧客に説明をしたり、相談を受けたりする際に幅広い知識がなければ満足な対応はできません。しかも、両者とも契約の締結まで担当するような場合には、専門性が高いといってよいでしょう。

次に、「情報処理システム開発関係」「秘書関係」「ファイリング関係」といった総務の領域も、派遣法施行令第4条第1項各号に該当します。情報処理は企業の安全を守るだけでなく、顧客のデータも管理する重要な分野です。この業務分野の担当者がミスをすれば、企業の社会的信用を失墜しかねません。そのため、正社員や派遣社員といった雇用形態を問わず、重大な責任がのしかかってきます。秘書の仕事も、スキルと経験がなければ満足に業務を果たすことはできないといえるでしょう。そして、社内の文書を正確に分類し、保管していくファイリングも付随業務に含まれます。機密情報に関わることも多いので、担当者には高い知識が求められるからです。

サービス業や販売系に目を向ければ「添乗業務」も付随業務に含まれています。旅行者に同行して道案内をしたり、必要なサービスを提供したりする業務です。いわゆる「ツアーインストラクター」「バスガイド」などの仕事が有名です。これらの業務でも旅行先の知識や高いトークスキルが必要です。さらに、「OAインストラクション関係」も付随業務に含まれています。事務用機器やパソコン類の使用について、操作方法を教授する仕事を広く指しています。たとえばパソコン教室の講師のほか、ショップで操作を実演する業務なども含まれます。

経理関係の業務で派遣法施行令第4条第1項各号に該当するものも少なくありません。財務関係の業務は広く、対象となっています。また、「貿易関係・貿易関係」における、「国内取引文書作成」も語学や法律の知識なしにはできない仕事です。そのほか、政令26業務と同じく「事務用機器操作関係」も含まれています。

3.付随業務が解雇を防ぐ

工場をはじめとして、多くの職場では派遣労働者に頼っている状況があります。ただし、雇われる側として注意したいのが「雇止め」に遭うことです。派遣社員は正社員と違い、契約期間を結んで働いている立場です。そのため、合法的に正当な手順を踏んだうえで契約更新ができないと伝えられた場合、受け入れるしかありません。不景気や企業の業績悪化などで大量の「派遣切り」を行った事例はたくさんあります。いざというときにも派遣社員として企業に残り、安定した雇用を手に入れるためには、必要とされる人材になることが大事です。

そのためには、「十分な能力がある」と会社側に認めてもらえなければなりません。なぜなら、雇止めを行う際に派遣社員の能力不足を理由にする企業は少なくないからです。派遣社員のスキルが不十分であったり、勤務態度が悪いなどと判断されたりしたときには契約を更新されにくくなります。もちろん、多少のミスをしたくらいでは、派遣社員を突然解雇していいということではありません。労働意欲のある派遣社員に対しては、企業も応えなければならないと労働者派遣法でも定められているのです。ただ、派遣社員が不当な解雇であると訴えても、企業から「こちらが求めている業務内容に対して能力不足だった」と反論されれば、そうではないことを証明するのは難しいのです。

こうしたトラブルを招かないためにも、付随業務を意識して働くことには意味があるのです。確かに、2015年の改正派遣法以降、付随業務と自由化業務の線引きはなくなりました。さまざまな業種で「専門分野」の基準が曖昧になったため、政令26業務が撤廃されてしまったからです。しかし、「派遣法施行令第4条第1項各号の業務」という項目は残っていることからも分かるように、一部の派遣業務の専門性は法律によって裏付けられています。かつて付随業務と呼ばれたような仕事に就けば、本人に労働意欲がある以上、企業は不当に解雇しにくくなります。そもそも人材としての希少価値があるので、社内で重宝されやすくなるでしょう。

さらに「紹介予定派遣制度」で有利になる可能性もあります。紹介予定派遣制度とは、正社員になることを前提として受け入れ先に派遣されるシステムのことです。一定期間の「お試し期間」を経て、働きぶりを認められれば正社員に登用されます。ただし、企業側は最初から正社員に登用してくれる予定とは限りません。厳しく派遣社員の能力を判断し、最終的には「不採用」とすることもありえます。正社員になるためには、限られた時間で派遣社員のスキルを企業側に強くアピールしなければなりません。

そのようなとき、かつての付随業務に該当するような専門的なスキルがあると、自身の長所を訴求しやすくなります。そのためにも事前に企業側のニーズをしっかりとリサーチして、自分の能力を生かせる派遣先で働くようにしましょう。企業が「人材不足」「強化ポイント」と考えている部分で能力を示すことができれば、わずかな期間でも十分なアピールができるでしょう。さらに、企業にとって必要なので、経営状況に関係なく手放しがたい人材と評価してもらえる可能性が高まります。

付随業務を参考にして派遣社員としての厚遇を手に入れよう

不当な理由での解雇ができないとはいえ、派遣社員には契約更新などの不安がともなうのは事実です。企業に「ずっといてほしい」と思われるには、専門性の高さをアピールすることが大事です。かつての付随業務を参考にしながら、自身のスキルを磨きましょう。そして、自分を必要としてくれる企業で働けたら、安泰なポジションを手に入れやすくなります。