派遣社員でも住宅ローンは組める?審査を通りやすくするために知っておきたいこと
マイホームを購入するとき、多くの方が「住宅ローン」を利用します。購入代金を一括で支払えないときに頼りになるサービスですが、「派遣社員だから住宅ローンが組めない」と諦めている方もいるのではないでしょうか。実は、派遣社員でも住宅ローンの審査に通ることは可能です。今回は、派遣社員が住宅ローンを組みにくい理由を踏まえ、審査に通りやすくなるコツや審査基準などを紹介します。
派遣社員の中には、住宅ローンを断られてしまった経験のある方も多いのではないでしょうか。たとえ収入が同じだったとしても、正社員と派遣社員では、住宅ローン審査の通りやすさに違いが出ることも珍しくありません。その理由には、「雇用の安定性」が大きく影響しています。そもそも派遣社員は、派遣会社に登録している人材を企業の求めに応じて派遣し、派遣先企業で働いてもらうものです。雇用関係はあくまでも派遣会社との間にあり、派遣先企業に雇用されている社員というわけではありません。
もし、派遣先企業が業績不振などでリストラをしなければならなくなった場合、まずターゲットになるのは派遣社員を含む非正規雇用の労働者です。正社員は労働基準法で雇用が守られているだけでなく、教育にコストがかかったり重要な業務を担当したりしていることが多いため、簡単にリストラはされません。まずはアルバイトや派遣社員のように、リストラしてもその企業に大きな支障がない労働者からターゲットになるケースが多いのです。
また、派遣社員はあらかじめ働く期間が契約で決まっています。契約期間終了後、派遣先企業が希望すれば契約を更新してもらえることもありますが、更新されなければその時点で仕事を失ってしまうのです。すぐに次の派遣先企業が決まらず、数カ月間収入が途絶えてしまうというケースも少なくありません。
このように、派遣社員は残念ながら雇用が不安定で、継続して一定の収入を得られないリスクが高いです。住宅ローンは毎月決められた金額を数十年にわたって返済しなければならないため、審査では「安定した収入があるかどうか」が重要な判断基準になります。もし、収入源などで返済が難しくなれば、お金を貸した金融機関が損をしてしまうかもしれません。住宅ローンは何千万円という高額の融資になることも多く、金融機関はローン申込者の信用度を慎重に審査し、リスクを避ける必要があるのです。このような理由から、派遣社員は正社員と比べるとどうしても住宅ローンを組みにくくなってしまいます。
雇用が安定していない派遣社員は住宅ローンを組むのが難しいですが、絶対に組めないわけではありません。ローンの種類や組み方によっては、派遣社員でも無事に審査を通過できるケースがあるのです。マイホームを諦めないためにも、次はローンの審査でよくチェックされる内容と、派遣社員が審査を通りやすくなるポイントを確認していきましょう。
住宅ローンは提供する金融機関ごとにさまざまな商品があり、それぞれ審査内容や基準は異なります。詳しい内容は公表されていませんが、一般的に重視されるポイントは共通しているので押さえておきましょう。具体的には、7つの項目に注意が必要です。
1つ目は「勤務」に関する内容で、安定した収入を長期間得られるかどうか、雇用形態や勤続年数、勤務先企業などから判断します。勤続年数が長かったり、勤務先企業の社会的信用度が高かったりすると、安定して働き続けられると判断される可能性が高いです。逆に、非正規雇用で1年程度の仕事を転々としているような場合、収入が不安定と見なされて審査に落ちるリスクが高まります。
2つ目は、「収入」です。契約した期間にわたり、ローンをしっかり返済していけるだけの収入があるかどうかをチェックされます。収入が安定していれば良いというわけではなく、収入に対して年間の返済額が無理のない範囲であることも重要です。たとえば、年収が400万円以下であれば年間総返済額は30%(120万円)以下、年収400万円以上なら35%(140万円)以下など、金融機関ごとに返済比率が設定されています。返済比率と収入のバランスによっては、希望する金額を借りられない可能性もあるので注意しましょう。
3つ目は、個人が行った金融取引の履歴を記録した「個人信用情報」です。個人信用情報には、他社からの借り入れやクレジットカードなどの返済状況、債務整理の有無など、さまざまな情報が登録されています。もし、すでに多くの借り入れをしていたり、過去に返済を滞納したりしていると、「きちんと返済できないのでは」と警戒されてローンを断られる可能性が高いです。記録された個人信用情報は一定期間が経過すると削除されるので、借り入れや滞納などネガティブな情報が削除されてからローンを申し込むという方法もあります。日本には主に3つの個人信用情報機関があり、それぞれ請求すれば情報開示も可能なので心配な場合は問い合わせてみましょう。
4つ目は、「健康情報」です。住宅ローンを組む際、返済中に契約者が亡くなった場合に備えて、団体信用生命保険へ加入するケースも少なくありません。ただ、団体信用生命保険は加入時に告知があり、健康上のリスクが大きいと加入が認められないこともあります。ローンと団体信用生命保険がセットになっている商品だと、健康情報次第で審査にも通らなくなるかもしれません。
5つ目は、「年齢」です。金融機関によっても変わりますが、ローン完済時の年齢には上限が設定されていることが多いです。たとえば35年のローンを組みたい場合、上限が80歳なら遅くとも45歳までには申し込んでおかなければなりません。収入などほかの条件を満たしていても、完済時の年齢によっては審査落ちする可能性もあるので事前に確認しておきましょう。
6つ目は、物件の価値が融資する金額に見合っているかどうかをチェックする「担保保障」です。ローンの返済ができなくなると、金融機関は物件を差し押さえて売却し、お金を回収しようとします。このとき、物件に価値がなければ十分な金額を回収できずに損をしてしまうため、担保保障を慎重に審査するのです。新築なら価値が高いのでほぼ問題ありませんが、築年数が古い物件や耐震基準を満たしていない物件などは価値が低く、審査に通らなかったり借り入れ金額が少なくなったりするケースもあります。
7つ目は、「連帯保証人」です。ペアローンを組む場合や親名義の土地に家を建てる場合、夫婦で収入を合わせて住宅を購入する場合、共有名義の土地や物件を購入する場合などは、連帯保証人が必要になることが多いです。これ以外のケースでは、物件そのものが担保となるため、連帯保証人がいなくても審査で不利になる心配はほとんどありません。
派遣社員が住宅ローンの審査を通過するには、さまざまな点に注意する必要があります。たとえば、仕事が合わないと感じても、転職はできるだけ避けましょう。頻繁に転職を繰り返して勤続年数が短くなると、ただでさえ不利な「雇用の安定性」をさらに失ってしまいます。収入が不安定で返済していけるのか怪しいと判断され、審査落ちの可能性が高まるでしょう。契約期間の満了を迎えるまでは何とか働き続け、満了後もできるだけ契約を更新してもらえないか交渉することをおすすめします。
また、物件の購入時に支払う頭金を多く準備するというのも効果的です。頭金を増やすほど借り入れ金額が減るため、無理なく返済できると判断されて審査に通りやすくなります。一度に多くの資金を準備するのは大変ですが、借り入れ金額が減れば利息も減って総返済額を抑えられ、経済的な面でもメリットがあります。借り入れ金額を抑えるには、リーズナブルな価格の物件を選んだり、親から資金のサポートを受けたりするのもおすすめです。このほか、低金利で借りられるローンを選んだり、夫婦の収入を合わせて借りたりするなど、工夫次第で派遣社員が審査に通過することは十分に可能です。
住宅ローンを取り扱っているのは、主に大手銀行や地方の金融機関、住宅金融支援機構のフラット35などが挙げられます。それぞれ商品内容が異なるように、取り扱う機関によって審査の判断基準も異なります。審査通過を目指す場合は、各金融機関の判断基準の特徴を知っておくことも大切です。
大手銀行の場合、利益を重視してリスクを避ける傾向が強く、審査が厳しいことで知られています。派遣社員は取り扱い不可となっているところも少なくありません。取り扱っていても、勤続1~3年以上必要だったり、収入のカウントが8割だったりするなど、厳しい内容になっています。申込には、健康保険への加入や雇用形態を明記した契約書などの提示が必要な場合もあるので注意しましょう。地方銀行や信用金庫など地方の金融機関は、数が非常に多いため判断基準も一概には言えません。ただ、地域に密着した機関で住民が主な顧客であるため、柔軟に対応してくれるケースも多いです。審査に落ちたとき、保証会社などにかけあうと再審査を頼んでくれることもあります。
フラット35は、住宅金融支援機構が国の施策の一環として住宅金融を取り扱っているものです。このため多くの人が利用しやすい内容になっており、勤続年数や雇用形態による制限がありません。派遣社員でも問題なく申し込める内容になっており、収入や個人信用情報などに問題がなければ審査に通る可能性は十分にあります。ただし、借り入れ期間が15年よりも短い場合や、物件の購入価格などが100万円未満または8000万円を超える場合など、一定の条件に当てはまってしまうと利用できません。誰でも住宅ローンを組めるわけではないので、事前に条件をよく確認しておきましょう。
雇用や収入が安定していない派遣社員は、正社員と比べると住宅ローンを組むのが難しくなります。しかし、だからといってローンを利用できないわけではなく、マイホームの購入を最初から諦める必要はありません。審査でチェックされやすい内容を把握し、頭金を多く準備したり派遣社員でも利用しやすいローンを選んだりするなど、工夫して審査通過を目指しましょう。