日雇い派遣で働ける人・働けない人の条件って何?
1日だけの単発や数日間のみの短期で働ける日雇い派遣の仕事は、人によっては便利な働き方ですが、2012年10月1日に施行された労働者派遣法の改正により原則禁止されています。ただし、一定の条件に該当する場合には日雇い派遣として働くことが可能です。そこで、この記事では、日雇い派遣で働くことが例外として認められている条件について具体的に紹介します。
日雇い派遣とは、労働契約の期間が30日以内の短期で働く派遣をいいます。たとえば、労働契約を結んだ日が8月1日のみといった特定の1日だけであったり、11月の1カ月間(30日間)だけであったりする場合には、日雇い派遣の働き方に該当します。そもそも派遣とは、「労働者である派遣社員」「労働者の就業場所となる派遣先」「派遣社員を赴かせる派遣会社などの派遣元」の3者のもとで成り立つ働き方です。まず、派遣元と派遣先との間で派遣契約が結ばれ、併せて派遣社員と派遣会社との間で労働契約が結ばれます。そして、派遣社員は、勤務先が正式に決まったら、派遣先となる会社からの指揮命令に従い働くことになるのです。
日雇い派遣においても3者の関係性に変わりはありません。ただし、派遣会社と派遣社員との間で結ばれる労働契約の期間が30日以内である点が日雇い派遣の特徴です。30日という労働期間の条件を1日でも過ぎると日雇い派遣の条件から外れるため、契約する労働期間が31日である場合には日雇い派遣に該当しません。また、2カ月の契約を結び、その間に短期の仕事を複数行って、働いた日の合計日数が30日以内になった場合も該当しません。一方、これまで30日を超える労働契約を結んで働いていた場合でも、新たに契約し延長して働くことになった期間が30日以内であれば、延長以降の働き方は日雇い派遣に該当します。日雇い派遣に該当するかどうかは派遣会社と派遣社員との間で交わした契約期間が判断基準となり、実際に働く仕事の期間は関係ないということです。
スケジュールが空いた日に働けたり副業として収入を得られたりできる日雇い派遣は、働く時間に制限がある方や単発あるいは短期間のみ発生する業務を有する職種などで特に重宝されてきました。しかし、労働者派遣法が改正されたことで、日雇い派遣は原則禁止です。重宝されていた日雇い派遣が原則禁止となった原因は、現場でさまざまなトラブルが生じたことにあります。派遣会社や派遣先の会社が派遣社員が働きやすい環境づくりに努めず、雇用管理の責任が十分に果たされていなかったことで労働災害を引き起こしてしまった事例が多かったことなどが改正に至った主な理由です。日雇いの派遣社員が合理的ではない理由で解雇されたり、契約期間が残っているにもかかわらず突然辞めさせられてりしまったりといったトラブルが複数見られたため、改善策として原則禁止となりました。
日雇い派遣の禁止はあくまでも「原則」です。一部例外もあり、条件に該当する場合であれば、労働者派遣法改正後も日雇い派遣として働けます。例外として定められている基準は「人」に対するものと「業務」に対するものがあり、「人」に対する例外条件は大きく4つです。1つ目は、年齢による条件で「60歳以上の方」は例外とされています。ただし、雇用される時点で60歳になっていることが必要です。年内に60歳になる方でも、雇用される時点で59歳なら日雇い派遣の条件では働けません。数え年ではなく満年齢で判断されることに注意しましょう。
2つ目が、「昼間学生」であることです。昼間学生とは、昼は学生として過ごし、夜は働いている方で、なおかつ雇用保険の適用を受けていない学生をいいます。雇用保険とは、労働者の生活や雇用の安定を守るために設けられている保険制度です。適用を受けている労働者は失業したときに給付金を受けたり、再就職のサポートを受けたりできます。適用の基準を満たしている労働者を雇用保険に加入させることは、雇用保険法による雇用者の義務です。加入が必須とされている適用基準は、1週間の所定労働時間が20時間以上であること、雇用期間が継続して31日以上見込まれることの2点あります。ただし、昼間学生であっても、すでに就職が決まっている方は要注意です。内定先の会社の研修などに参加していると日雇い派遣として働くことはできません。
ここまでで紹介した「60歳以上」や「昼間学生」の方が例外として認められている理由は、一般的に見ると、これらの方は雇用の機会が少ない傾向にあるからです。生活するために働く機会を少しでも増やすことを目的として日雇い派遣での労働が認められています。
3つ目は、「生業収入が500万円以上あり、日雇い派遣を副業とする方」です。生業収入とは、複数の仕事から収入を得ている場合に、本業つまりメインの仕事で得る収入を指します。たとえば、掛け持ちで3つの仕事をしていて、A社からの収入が500万円、B社からの収入が50万円、C社からの収入が20万円あった場合、生業収入にあたるのは最も多く得ているA社からの収入です。そして、この例ではA社からの収入が500万円あり、例外となる収入条件の500万円以上に該当しているため、日雇い派遣として働けることになります。注意として、条件とされている500万円という金額は額面上の金額です。手取り額ではなく、基本給のほかに手当や交通費、残業代なども含んだ金額となります。
4つ目が、「主たる生計者でない方で世帯収入が500万円以上ある」場合です。主たる生計者とは世帯のなかで最も収入が多い方を指します。一般的には、世帯全体の収入のうち50%以上を占める収入を得ている方が主たる生計者です。たとえば、夫が500万円、その妻が200万円、生計を一にする子どもが100万円の収入を得ているとします。この場合、最も収入額が多く、世帯全体の収入額である800万円の50%となる400万円以上の収入がある夫が主たる生計者です。そして、妻や子どもは、主たる生計者にあたらず、世帯収入が500万円以上であるため、日雇い派遣として働けます。
3つ目と4つ目で挙げているものは、収入に余裕があるため例外として認められている要件です。収入が不安定になることもある日雇い派遣で働いても、生活に大きな影響を及ぼすことがないとみなされているので、働くことが認められています。
雇用の管理を適正に行うにあたり妨げにならないと認められた業務であれば日雇い派遣として働くことが可能です。適正な雇用管理の妨げにならない業務とは、労働者派遣法による政令第4条第1項に掲げられた18の業務が該当します。具体的に紹介すると、1つ目が情報処理システムの開発に係る一定の業務、2つ目は機械や装置、器具、機械などで構成される設備を設計したり図面を描いたりする業務です。3つ目として事務用機器の操作業務、4つ目として通訳や翻訳、速記関係の業務も挙げられています。5つ目は会社で重要な決定をしたり、それにかかわる管理を行ったりしている地位の方の秘書業務、6つ目は専門知識や技術、経験を要するファイリング業務です。
7つ目として新たな商品の開発や販売計画を行うにあたり行われる市場などの調査関連業務、8つ目として会計帳簿の作成や株式事務などといった財務に関する業務もあります。9つ目が国内外との取引のために行う文書作成業務、10個目が機械の性能や操作方法などを紹介したり説明したりする業務です。11個目として企画旅行以外の旅行に同行する旅程の管理やそれに付随するサービス提供などを行う添乗関係の業務もあります。12個目は建築物あるいはイベント会場などを訪れる方の受付や案内を行う業務です。ただし、建築物といっても、中高層分譲住宅などは含まれません。
13個目には科学に関する研究や開発、製造の業務が挙げられていますが、専門的な知識や技術、経験がなくてもできる業務は該当しません。また、製品の製造工程に従事する業務だけを行う場合も対象外です。14個目として事業を行うために必要な体制の企画や立案、調査業務、15個目として書籍や雑誌、写真などの作品制作における編集業務も挙げられています。ただし、編集業務に校正を主とするような補助業務は含まれていません。16個目はデザイン関係の業務で、たとえば、商品そのものや商品の包装、企業や商品の広告などのデザインについて考案したり、設計したり、商品の陳列により表現したりする業務などが該当します。
17個目が事務用機器の操作方法、システムやプログラムの使用方法などを指導したり教えたりする業務、18個目は金融商品に関する説明や相談、売買契約を行う業務や、セールスエンジニアの営業です。セールスエンジニアとは、技術者としての専門知識を生かした顧客への提案や課題の解決などの営業も行うエンジニアをいいます。以上の業務であれば、先で紹介した日雇い派遣禁止の例外にあたる「人」の条件に該当していなくても、日雇い派遣で働くことができます。
最後に、日雇い派遣について迷いやすい疑問点3つについてお答えします。まず、基本として「日雇い派遣原則禁止」のルールは必ず守らなければなりませんが、万が一、違反して働いてしまった場合にはどうなるのでしょうか。違反したことが判明した場合、派遣社員と契約を結ぶ派遣会社に対して指導や改善命令、場合によっては業務停止や免許取り消しなどの対処が行われます。そのため、派遣会社は事前に、日雇い派遣として働ける要件を満たしていることを確認できる証明書の提示や提出を派遣社員に対して求めることが一般的です。また、派遣会社がその事実を知らずに、派遣社員自身で詐称して日雇い派遣の仕事をしていた場合には、派遣登録が解除されたり、解雇されたりする可能性があります。
次に、もともとの雇用期間は30日を超えていたものの、派遣社員本人の希望による離職で、結果として雇用期間が30日以内となった場合、日雇い派遣禁止に対する違反となるのでしょうか。このようなケースでは派遣会社や派遣先からの一方的な解雇ではないため、日雇い派遣の原則禁止に対する違反にはなりません。
続いて、日雇い派遣を禁止する例外として「昼間学生」が挙げられていますが、通信制大学に通って働く学生の場合は認められるのでしょうか。通信制大学に通う学生で雇用保険の提供を受けていなければ、例外の対象となるように思う方もいることでしょう。しかし、通信制大学に通って働く学生は日雇い派遣で働くことはできません。ほかにも、大学の夜間学部、定時制高校や夜間の高校で勉強している学生、休学中の方なども対象外となります。
日雇い派遣は原則禁止とされていますが、年齢や収入、そのほかの状況や業務内容によって働ける場合があります。日雇い派遣として働きたいなら、自分が例外とされている条件を満たしているかについて事前に確認しておくと安心です。実際にどのような仕事ができるのかを知りたい場合には日雇い派遣の仕事を扱っている派遣会社に相談してみるのもよいでしょう。