派遣社員が有給を使うためのFAQ~有給の取得方法・付与条件・注意点を解説~
派遣社員として働くことを視野に入れていると、待遇面で気になることも多いはずです。そのひとつが「派遣社員も有給休暇の取得ができるのか」ではないでしょうか。また、たとえ有給休暇を取れたとしても、申し出にくいのではないかと心配な方もいるでしょう。そこで、この記事では、有給休暇の概要とともに、派遣社員が有給休暇を取るときのポイントについて詳しく解説します。
【目次】
■派遣社員でも有給は取得できるの?
・派遣で有給取得を拒否されたら?
■派遣社員が有給申請をするためにはどうすればいい?
・1.派遣会社で有給申請をする
・2.派遣先に相談する
・3.現場の関係者にも長期休暇取得を伝える
■有給休暇の取得理由は伝えるべき?
・有給が認められやすい取得理由
・派遣社員が長期休暇を取得するときの注意点
■派遣先が変わると有給はリセットされる?
■当日の有給休暇取得は可能?
■有給日数や有効期限に決まりはあるの?
・有給休暇の付与条件
・有給休暇が付与されるルールと日数
・有給休暇の有効期限と最大保持数
■派遣会社・派遣先と相談することが円満な有給取得のカギ!
有給休暇は、直接雇用の従業員だけがもらえるものだと考えている方もいるかもしれません。しかし、有給休暇は雇用形態にかかわらず、誰でも取得することができます。有給休暇は正式名を「年次有給休暇」と言い、一定の条件を満たしていれば当然取得できる労働者の権利なのです。労働者に有給休暇を取得させるのは、疲労回復や心身のリフレッシュのためのほか、生きがいのある生活を実現させるといった目的もあります。正社員やパート・アルバイトなどの直接雇用の社員はもちろん、派遣社員も例外ではありません。
政府は働き方改革などを進めるなかで労働基準法を改正し、2019年4月からは全ての企業で年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、年5日の年次有給休暇を確実に取得させるよう定めました。しかし、厚生労働省が発表した「令和3年 就労条件総合調査の概況」によると、有給休暇の取得率は56.6%しかありません。この結果は、昭和 59 年以降過去最高の取得率とは言われているものの、それでも実際に取得しているのは半分程度だということが見て取れます。業種によっては70%を超えるところもあるものの、取得率の低いところでは50%にすら満たないところもあるのが実情です。
有給休暇を申請しても、希望が通らない場合もあります。それは「休みを取ってはいけない」ということではなく、「日付をずらしてほしい」という派遣先からのお願いです。例えば、ほかのスタッフと休日がかぶっている場合や繁忙期などには、業務に支障が出る可能性があることから、休暇を取るタイミングをずらしてほしいと依頼されるかもしれません。しかし、基本的に派遣先の都合で派遣社員の有給のタイミングをずらすことはできません。
労働者には「時期指定権」が存在し、有給のタイミングを指定できる権利も持っています。一方、企業は「時季変更権」を持っています。「時季変更権」とは、正常な業務の運営に支障が出るようなときに、有給休暇をずらしてもらうよう指示できる権利のことを言います。
ただし、時季変更権を行使できるのは、直接雇用をしている従業員だけ。つまり、派遣社員に対して時季変更権を行使できるのは、雇用主である「派遣会社」だけなのです。もしも、派遣先から「休暇の日付をずらしてほしい」と指示されたときには、派遣会社の担当者に相談しましょう。
また、なかには有給休暇を認めないブラックな派遣先も存在します。認めてくれない場合は、ほかの日なら可能かどうか確認し、それでも全く応じてくれない場合は注意したほうがいいでしょう。場合によっては、労働基準監督署への相談を視野に入れたほうがいいかもしれません。
では、ここからは派遣社員が有給休暇を取得する際の一般的な流れについて説明していきます。
有給休暇を取得する際に、まず相談するのは「派遣会社」です。できるだけ早めに申請するのが好ましいので、予定が決まった時点で申請しておきましょう。目安としては、1ヶ月程度の余裕を持って申請しておくのが無難です。
ただし、実際には派遣会社によって異なるため、どのようなルールになっているか確認しておくことも忘れてはいけません。例えば「休暇の申請は20日前まで」など明確に決まっている場合、1日でも申請が遅れると休暇が取れないこともありえます。
有給休暇を使えないうちに派遣先の契約期間が終了した場合は、1ヶ月以内に新たな派遣先と契約できれば、引き続き使うことができます。ただし、派遣会社を変えてしまうと有給休暇自体がなくなってしまうので注意しましょう。そして、もう1点注意しておきたいのは、派遣される前から休暇を予定しているときです。この場合は派遣会社に相談して、休暇を取りやすい派遣先を選ぶほうがいいかもしれません。
派遣会社に相談するのと同じタイミングで「派遣先」にも有給希望日を伝えて、有給を取得できるかどうかを相談しましょう。
まず、派遣されている部署の上司に有給休暇の取得日を報告します。派遣先によっては、人事などが派遣社員の対応をしていることもあります。その場合は、人事または派遣社員を担当してくれているスタッフにも報告をしておくといいでしょう。派遣先に報告したら、何日に取得するか派遣会社の営業担当者に伝えておきます。
雇用契約を結んでいない派遣先に対し、そこまで必要なのか疑問を持つ方もいるかもしれません。派遣先に直接雇用されているわけではないとはいえ、突然休暇を取ると現場に問題が生じます。予定通りに進まなくなる・業務が滞るなど派遣先に迷惑をかけることになりかねません。有給はできるだけ早めに相談をしましょう。普段から信頼関係を築いておくと、休暇を受け入れてもらいやすくなります。
有給を取る際には、派遣先の状況を見て、休めるタイミングかどうかを判断しましょう。法律で認められている権利であっても、派遣先の繁忙期であったり、派遣されて数日だけしか経っていなかったりすれば、迷惑をかけるうえに印象も悪くなります。これは正社員であっても同じで、社会人としてのマナーと言えます。派遣先や派遣会社が理不尽に有給を拒否するのであれば別ですが、そうでなければお互いが納得できる形で有給が取れるように話し合うことも大切です。自分本位に動いてしまうと、派遣会社が次の契約更新に応じてくれないこともあるかもしれません。
次に、一緒に業務を行っている部署のスタッフにも、有給を伝えておきます。繁忙期ではなくても、休暇中に業務の穴埋めが必要なときは、ほかのスタッフが対応することになります。派遣先のスタッフの都合も考え、こちらも早めに報告をするようにしましょう。あとは、不在中に迷惑がかからないよう、できる限り自分の業務をこなしておくことが大切です。また、必要がある場合は、ほかの人に引継ぎをしておくと休暇中に派遣先に迷惑をかけることを防げます。
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どのような理由であれ、基本的に休む理由は「私用のため」でよく、詳細に伝える必要はありません。単に休みを取ってゆっくり過ごしたいというときや、家族・友人と一緒に旅行に出かけるときに有給休暇を使っても、制度上何ら問題はないからです。
有給休暇は、正社員はもちろん、パートタイムやアルバイトのスタッフでも派遣社員でも、当然に取ることができる労働者の権利です。しかも、本来は心身のリフレッシュや生きがいある生活の実現などを目的としていることあり、特に有給休暇を取得する際の理由について伝える義務はありません。
ただし、たとえ自分の業務には支障がなくても、有給の長さやタイミングによっては派遣先や派遣会社の印象を悪くすることがあるため、理由を伝えておくと有給取得がスムーズに運びます。
労働者の権利とはいえ、ほかの従業員が働いているなかで、自分だけが単なるリフレッシュや遊びに出かけるために有給休暇を取得するのは気が引ける、という方も多いかもしれません。たまたま近い時期に同じ職場の方が有給休暇を取得しているときも、有給を取りにくいと考えてしまうでしょう。また、職場の業務の流れや時期的な問題で有給休暇を取得しにくいタイミングの場合もあります。
有給休暇を取得する際に使いやすい理由としては、次のようなものがあります。
○友人・家族の結婚式があるため。
○家族の行事や親戚の集まりで顔を出さなければならないため。
○お世話になった方のお見舞いに行きたいため。
○地域の活動に参加しなければならないため。
○役所での手続きが必要であるため。
○修理・工事・点検などの立ち会いのため。
就業規則などで虚偽の報告が懲戒の対象になっていなければ、有給休暇の取得理由について嘘の内容を伝えても特に罰せられることはないかもしれません。しかし、嘘をついたばかりにつじつまが合わなくなる可能性はあります。また、家族の行事や親戚の集まりなどは、何度も使うと取りづらくなることも考えられます。あまり使いすぎると本当にその理由で休みを取りたいときに取れないという事態に陥ることもあるため、使用頻度は考える必要があるでしょう。特に詳しい内容を伝えなくてもいい場合は、あえて理由を明らかにする必要はありませんし、届出書にも「私用のため」と記載しておけば大丈夫です。
ここからは、派遣社員が有給休暇を取得する際、注意しておきたいことについて解説していきます。
有給を申請しにくい状況であっても、無断欠勤をして休むことはやめましょう。相談もせずに勝手に休んでしまっては、派遣先にも派遣会社にも迷惑をかけることになります。派遣会社にとって、派遣先企業の信頼を失うことは大きな損失です。また、無断欠勤をするような人を契約更新するのはリスクが高いと判断される可能性もあります。
数日以上休む場合には、たとえ派遣社員であっても、その会社の業務を行っている以上は同じスタッフということに変わりはありません。復帰したときには、周囲のスタッフや上司など派遣先の関係者にお礼を述べておきましょう。事前に準備をして行ったとしても、不在中は何かとフォローしてもらうことは多いからです。復帰した当日に報告をし、その際に一言お礼を添えておけばいいでしょう。旅行に行った場合は、お土産を買っておくなど何らかの気遣いをしておくと、その後も良好な関係を築きやすくなります。派遣先の人数にもよりますが、お礼やお土産は、普段一緒に仕事をしているスタッフだけで十分です。
派遣社員が雇用契約を結んでいるのは派遣会社です。派遣会社が同じである以上、有給休暇のカウントがリセットされることはありません。そのため、有給休暇が残っているのに派遣先との契約期間が終了したり、何らかの事情でほかの派遣先に変わったりすることがあっても、心配をせずに計画的な行動を取るようにしましょう。
注意したいのは、有給休暇の取得条件が「継続勤務」という点です。派遣社員の場合、ひとつの派遣先での仕事が終了したあと、次の派遣先に就業するまでの空白期間が規定を超えると有給休暇が消滅してしまいます。
就業規定は派遣会社によって異なり、なかには空白期間が3ヶ月超のところもありますが、1ヶ月超としている会社がほとんどです。空白期間が規定内の場合は、派遣先が変わっても有給休暇はリセットされません。派遣社員でも連続勤務が6ヶ月を過ぎれば10日、1年6ヶ月になれば11日と、正社員と同じように年数が経過するごとに有給休暇の付与日数が増えます。しかし、空白期間が規定を超えてしまうと有給休暇のカウントはリセットされてしまうため、派遣先を変えるときの空白期間には注意が必要です。
また、派遣会社が変わる場合には有給休暇はリセットされます。有給休暇を残した状態でも、契約更新がされない場合も出てくるかもしれません。そのようなケースも考えて、派遣社員として働くときは有給休暇を上手に消化することが重要です。
風邪を引いて休みを取りたいときや、子どもが急に体調を崩して保育園や幼稚園を休ませなくてはならなくなった場合など、当日の休みを有給休暇にすることはできるのでしょうか。
派遣社員の場合、有給休暇として認めてもらえるかどうかは、派遣会社によります。派遣社員を受け入れている企業は、常に人手不足です。派遣先は自社の業務を滞りなく遂行するために、派遣社員も含めて必要な人材を確保しています。そのため、有給休暇取得の申し出があって誰かが休むことになると、その穴を埋めなければなりません。派遣社員であれば、派遣会社に対して代わりのスタッフを派遣するよう要請する必要があります。
もちろん、どうしても休まなければならない急用や急病のときは、休ませてもらうことができるでしょう。しかし、有給休暇は事前申請を義務付けている企業がほとんどです。また、急に当日になって有給休暇を取得したいといっても、すぐに対応するには無理があることも多いはずです。また、派遣会社には時季変更権がありますから、突然派遣社員から有給取得を申し出られた場合、代替要員の派遣が難しいと判断すれば、有給が取得できない場合もあるのです。休ませてもらうことはできても、当日の有給申請は認めてもらえない可能性があります。
当日の有給休暇を認めてくれる企業もありますが、正社員であれ派遣社員であれ、企業が社員の当日の休みを「欠勤」扱いにしても法律上の問題はありません。つまり、急な欠勤を有給処理してくれるのは、あくまでも企業の温情次第だということは覚えておきましょう。
有給休暇がどういう条件で付与されるのか、消失することはあるのか、最大何日まで保持できるのか気になる方もいるかもしれません。有給取得のルールは以下の通りです。
有給休暇が取れるかどうかは、勤務した期間によります。まず、派遣社員として仕事を始めてからどれくらい経過したか確認してみましょう。
有給休暇の日数は、労働基準法第39条で決められています。労働基準法によると、雇用から6ヶ月連続で勤務し、労働日数の8割以上出勤している労働者に対して、最初の有給休暇として年間10日間が取得できることになっています。その後は、はじめの有給休暇が支給されてから1年ごとに毎年1日ずつ増える形で新たに有給休暇がもらえます。つまり、派遣社員になってから1年6ヶ月で年間11日、2年と6ヶ月では年間12日の有給休暇が取得できるということです。なお、有給休暇の最大日数は20日までと定められています。また、連続して有給休暇を消化することも問題ありません。
有給休暇が付与される条件としては2点あります。まず、その企業に入社してから6ヶ月間継続して勤務していることが必要です。そのうえで、全労働日の8割以上は出勤していなければなりません。所定の労働日や休日については、雇用契約書や労働条件通知書などに記載されているので確認しましょう。
入社後6ヶ月継続勤務し、なおかつ全労働日の8割以上勤務という条件を満たせば有給休暇が「10日」付与されます。その後、さらに入社後1年6ヶ月で「11日」、2年6ヶ月で「12日」と、1年経つごとに付与される有給休暇が1日ずつ増えます。
それ以上の連続勤務になると、3年6ヶ月で「14日」、4年6ヶ月で「16日」、5年6ヶ月で「18日」、6年6ヶ月で「20日」と、2日ずつ付与される日数が増える計算です。この条件で有給休暇の付与を受けるためには、所定労働時間数が週30時間以上という条件を満たしている必要があります。
ただし、労働時間が短い場合は「年次有給休暇の比例付与」という制度によって労働日数に応じた有給休暇の日数計算をするため、労働日数が週5日以上、所定労働時間数が週30時間以上という条件を満たしている必要があります。
労働基準法第155条によると、有給休暇には「発生の日から2年間」の有効期限があり、付与された有給休暇を際限なく利用できるわけではありません。
有給休暇は1年ごとに評価・付与されますが、もし未消化のまま残ってしまった有給休暇がある場合は、翌年に持ち越すことが可能です。例えば、10日ある分の有給休暇を7日しか消化しなかった場合、残り3日分を持ち越し、次年度新たに付与される11日分と合わせて次年度に14日分有給休暇を取得できます。
有給の最大保持日数は「35日」です。有給休暇は、最大で年20日付与されます。このうち5日は取得義務(計画付与)があるので、翌年に繰り越せるのは15日までです。翌年に再び20日分の有給が付与されると、繰り越し分と合わせて35日の有給を残せることになります。
有給休暇は労働者に与えられている権利であり、それは派遣社員であっても同じです。ただし、有給休暇の付与には決まりがあり、日数も勤続年数によって違いがあります。また、派遣社員の場合、空白期間の問題や届け出は派遣会社にしなければならないなど、実際に有給休暇を取得する際には知っておくべきことがいくつかあります。有給休暇の制度をしっかり把握し、計画的に有給休暇を取得しましょう。
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