派遣は副業OK?ダブルワーク前に知りたい注意点&仕事の選び方
働き方改革の推進により、副業・兼業を解禁する動きが全国的に広まっています。これを機に、本業以外に副業やダブルワークを検討する方も増えているようです。派遣社員として働く場合は、派遣を掛け持ちすることや副業・兼業は可能なのでしょうか。ここでは、副業が認められるパターン、副業・兼業をする前に知っておきたいポイント、副業の探し方について解説します。
【目次】
■派遣社員でも副業はできるの?
・本業以外に20万円超の所得がある場合は要注意
・就業先で副業NGとなっている理由
■副業をする前に知っておきたいポイントとは
・年末調整は1ヶ所で行う
・確定申告-住民税申告が必要
・社会保険の二重加入はできない
・会社はあなたの副業を把握している
■会社にバレないように副業する方法
・住民税を「普通徴収」にする
・給与所得以外の副業をする
・確定申告をする
・副業を口外しない
■副業をするときのコツ
・シフトが柔軟な仕事を選ぼう
・心身に無理のない範囲で働く
■副業は「派遣会社」の就業規定に従おう!
結論からいうと、派遣社員は副業できます。その理由は、労働基準法と関係があるからです。
国家公務員や地方公務員は、公務員法によって起業・副業で収入を得ることを禁じられています。
しかし、民間の会社に勤務する会社員には、公務員のように起業や副業を禁止することを明文化した法律はありません。
つまり公務員以外は、副業・兼業を法的には規制されていないということ。派遣社員についても、労働者派遣法という法律はあるものの、副業を禁止する条項はないのです。
とはいえ、「公務員以外は好き勝手に自由に副業をしてもいい」というわけでもありません。 企業には就業規則という会社独自の決まり事があり、雇用形態を問わず、守らなければならないルールがあるからです。就業規則でダブルワークが禁止されていれば、副業はできません。
副業できるかどうか知るためには、まず派遣会社から受け取った書類を確認してみましょう。派遣会社と雇用契約を結ぶ際に、雇用契約書や労働条件通知書が渡されているはずです。
もし就業規則の中で、副業の禁止する旨が記載されていれば、法律や社会の流れとは関係なく、会社の規則を守らなければなりません。
メインとなる給与所得以外に年間20万円を超える所得がある場合は、確定申告が必要なので、副業とみなされる可能性があります。
ですが副業といっても、1日だけ引き受けた仕事、不用品を売却して得た利益、趣味で作った手芸品を譲ったときの謝礼など、「これは副業になるのかな?」と疑問を感じるような、小さな金額もあります。
一体どれだけ稼いだら副業になるのでしょうか。
そもそも、副業の定義はあいまいです。法的にも、副業についてのはっきりした定義や範囲はありません。 つまり、副収入を得る場合でも、年間数千円~数万円くらいであれば、副業として扱われない可能性もあるということ。
住民税は金額を問わず申告しなければならないので、実際は20万円以下であっても住民税申告や確定申告が必要なケースはあります。しかし、一般的には「20万円」が副業かどうかの分かれ目だと考えられているようです。
ただし副業の定義が明文化されていない以上、自分では副業のつもりではなかったとしても、指摘されることがないとはいえません。副業について、あとで問題にならないか不安な場合は、派遣会社の担当者と相談してすり合わせしておくと安心です。
派遣社員は、「派遣会社」の就業規則で禁止されている場合は副業ができません。仮に副業ができる場合でも、副業で会社に損害を与えないように注意する必要があります。
派遣社員の場合は、常用型派遣でも登録型派遣でも、「派遣会社」の就業規則に従ってください。
なお副業が禁止されている理由としては、以下のような理由があげられています。
- 十分な休息を取れないため業務に支障が出る可能性がある
- 同業他社への情報漏洩の可能性がある
- 本業の名誉・信用を損なう可能性がある
- 副業が本業との競業になって利益相反する可能性がある
複数の派遣会社と雇用契約を結んで働くことは可能です。しかし派遣会社によっては副業を認めていないので、公式サイトを確認して副業の可否を調べておくことが大切です。
また労働基準法では、原則として労働時間は1日8時間、1週間で40時間までと決まっています。 そのため、すでにフルタイムで派遣就業している場合は、派遣社員・アルバイト・パートなど、雇用契約を結んで働くことは難しくなります。
副業をしたい場合には、「派遣会社」の雇用契約を確認し、副業が禁止されていないかどうか確認しましょう。
副業をスタートさせると、確定申告が必要になったり、会社に副収入の存在を知られたりと、さまざまなことが起きます。副業をする前に、以下のような点に注意しておきましょう。
- 年末調整は1ヶ所で行う
- 確定申告が必要になることもある
- 社会保険の二重加入はできない
- 会社はあなたの副業を把握している
勤務先が複数ある場合は、どちらかの会社にダブルワークの所得も一緒に申告して年末調整をしてもらわなければなりません。 基本的には、給与の額が高い「本業」の会社に年末調整をしてもらうことになるはずです。
しかしダブルワークで2社以上の会社から給与を受け取っている場合は、2ヶ所で年末調整をすると所得控除が重複し、正しい所得税額の計算ができなくなります。
年末調整とは、給与から天引きされた1年間の所得税を正しく計算して過不足を調整する手続きのこと。必要書類を提出したら、会社が納税額を計算し、まとめて所得税を納めてくれます。
所得控除が重複すると、税金を少なく納めることになります。 後から気づいて修正すれば問題ありませんが、納税額が少なすぎることを税務署から指摘された場合は、税金を滞納した罰則として無申告加算税と延滞税が請求されることになり、実際よりも余分に納税しなければならなくなります。
どちらの会社にも頼みづらい方、ダブルワーク先を知られたくないという方は、自分で確定申告をする方法があります。
副業を行う場合は、所得税を申告する「確定申告」や住民税を申告する「住民税申告」が必要です。
確定申告とは、1年間の所得と所得税を正しく算出して税務署に申告する手続きのこと。 副業をしていない場合は、会社のほうで年末調整をしてもらうだけで申告が済むので、本人が何かをする必要はありません。
しかし、本業以外の所得が年間20万円を超えている場合は、年末調整では対応できないため、確定申告が必要です。 ダブルワークの場合は、その年に20万円を超える本業以外の「所得」があれば、基本的に確定申告をすると覚えておきましょう。
副業をしているにもかかわらず確定申告や住民税申告をしなかった場合にはペナルティが課せられ、本来よりも多く納税することになります。
何もわからないからと放置し続けていると、意図的な脱税とみなされて刑事罰の対象にもなるおそれもあるので、本業以外でどれくらい稼いでいるかはきちんと把握しておきましょう。
なお所得とは、収入から必要経費を差し引いた金額のことです。
収入を得るためにかかった費用は、必要経費として差し引くことができます。自宅で副業を行う場合は、家賃・光熱費・電話代なども、事業用に使っている分があれば経費と認められることがあります。
複数の会社から給与を受け取っている場合は、両方の会社から「源泉徴収票」が発行されるので、源泉徴収票をもとに確定申告を行ってください。
住民税申告とは、住民登録をしている市区町村に対して、前年の所得にかかる住民税を申告する手続きです。
年末調整や確定申告をしている場合には、住民税申告を本人が行う必要はありません。
しかし、副業の所得が20万円を超えていない場合は、確定申告をしなくてもいいことに安心して、住民税を申請し忘れることがあります。 副業の所得が20万円以下であっても、必ずお住まいの市区町村の役場で住民税申告を行いましょう。
複数の会社に雇用されている場合は、どちらか1カ所の事業所でしか保険には加入できません。社会保険の加入条件について、複数の会社で該当した場合は、「二以上勤務者」の申請が必要です。
社会保険のメインとなる事業所を決めて、「健康保険・厚生年金保険所属選択・二以上事業所勤務届」を作成し、健康保険組合や年金事務所に提出しましょう。
メインとなる事業所が保険料を決定し、給与額に応じて事業所ごとの保険額を決めてくれます。
なお派遣社員やパート・アルバイトなど非正規雇用でも、条件を満たせば社会保険に加入できます。
むしろ条件を満たす場合は、本人の意思にかかわらず、社会保険に加入しなければなりません。非正規雇用で健康保険・厚生年金保険に加入する場合は、以下のような条件となります。
- 1週間の所定労働時間が正社員の4分の3以上
- 1週間の所定労働が20時間以上
- 1年以上の継続雇用が見込まれる
- 月額賃金が88,000円以上
- 従業員が501人以上の会社
また雇用保険の加入条件は、「1週間の労働時間が20時間を超える」「31日以上の継続雇用が見込まれる」というすべての条件を満たす必要があります。
派遣会社は従業員の大まかな所得を把握できるため、こっそり副業をしようとしても知られてしまう可能性があります。 なぜかというと、会社には、「給与所得者の住民税を給与から差し引いて、各自治体に納める」という義務があるからです。
住民税とは、都道府県に納める都民税・県民税や地方自治体に納める市区町村税のこと。 住民税は、前年度の所得に対して、自治体ごとに決められた税率で計算されます。副収入があって確定申告をした際も、前年度分の所得から計算された住民税額を、翌年の6月から1年に渡って会社が支払うことになります。
副業の収入があれば、その分住民税の額も高額になります。 一人だけ住民税が高いと、他に収入があることが自ずと知られてしまうのです。副業でどのくらいの収入を得ているかも、計算すればわかってしまいます。
また、個人に配られる「特別徴収税額決定通知書」の中身を会社側で確認できる場合は、「主たる給与以外の合算所得区分」の雑(雑所得)や営業等(事業所得)に印が入っているため、給与所得以外の収入があることも一目でわかるのです。
バレないとは断言できませんが、会社が従業員の副業を把握しにくくなる方法はあります。
ダブルワークしていることを口に出さなくても、いずれは会社に副業の存在を知られてしまいます。しかし、中には「副業は認められているけど、会社に知られるのは抵抗がある……」という方もいるかもしれません。
副業が知られる可能性を少しでも下げたいという方は、下記の方法を試してみてください。
- 住民税を「普通徴収」にする
- 給与所得以外の副業をする
- 確定申告をする
- 副業を口外しない
住民税が増える理由は、所得の増加です。したがって、会社側は住民税の増額によって「この従業員は、他にも所得があるんだな」と推測できてしまうのです。
住民税の納付方法は、給与から源泉徴収する「特別徴収」と、自分で納める「普通徴収」に分けられます。住民税の納付方法を「普通徴収」に切り替えることができれば、会社は副業の存在を把握しにくくなると思います。
副業の給与所得が20万円未満だと確定申告は対象外ですが、住民税は金額にかかわらず申告が必要です。給与所得がある場合は、合算して特別徴収してもらえます。
特別徴収は、複数の収入源があってもまとめて住民税を納付できるので、会社に所得状況が知られても問題ないという方には便利な制度です。
しかし、他の所得があることをできるだけ隠したいという方は、住民税を自分で納付する「普通徴収」に変更したほうがいいでしょう。
副業の存在を知られたくない場合、また住民税の納付方法を普通徴収にしたい場合は、給与所得となる副業は避けたほうが無難です。
住民税の納付方法を「普通徴収」にできるのは、原則として「給与・公的年金等にかかる所得以外の住民税」と決められています。
つまり、副業がアルバイト・パート・派遣などの給与所得である場合は、原則として普通徴収が認められません。
年末調整で副業が知られたくないという場合は、確定申告を行う必要があります。
まず、年末調整を辞退するか、「給与所得以外の所得の合計」を空白にして提出しましょう。源泉徴収票を発行してもらったら必ず確定申告を行って所得税・住民税の申告をすることで、会社に副業を知らせることなく納税ができます。
年末調整では、「基・配・所(※)」と呼ばれる書類を記載し、会社に提出します。 この書類には、「給与所得以外の所得の合計」の欄があり、他の所得があれば併せて記入しなければなりません。たとえ住民税を普通徴収にしても、年末調整の時点で副業が把握されてしまうのです。
(※)給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
どれだけ念を入れて対策をしても、自分から副業に関する話を持ち出すと、会社に発覚してしまうおそれがあります。
雑談のつもりで誰かに話したことが会社に伝わって、副業を把握されてしまうという可能性も否定できません。
会社に副業を知られたくない場合は、上記の対策を講じたうえで、副業に関しては口外しないほうがよいでしょう。
本業に影響する心配のない、体力的にも時間的にも余裕を持って取り組めるものを選ぶのがコツです。
副業やダブルワークをするからには、メインの派遣の仕事に影響しないよう覚悟をもって取り組む必要があります。
副業が解禁という時代の流れではありますが、あくまでも本業に支障のないような働き方でなければ長続きしません。
ダブルワークをする場合は、本業と時間帯がかぶらないように配慮しましょう。
ダブルワーク先で残業が発生することも想定して、余裕をもったスケジュールを組む必要があります。公共交通機関を使う場合は、移動・乗り換え・遅延などの時間も含めて考えなければなりません。
食事や休息の時間、家事や用事などを考えると、スケジューリングは意外と難しいものです。本業がおざなりにならないよう、自分のペースを守れる仕事を選びましょう。
仕事のかけもちは心身の負担が大きくなるため、無理なく続けられる範囲で副業をしましょう。
派遣社員としてすでにフルタイムで働いている場合、副業をするとなると1日8時間を超えて働くか、休みを潰して働くことになりかねません。副業を続けて身体に負担をかけすぎると、体調を崩してメインの派遣の仕事に支障をきたすことになります。
また、働き詰めで自分の時間が持てなくなることは、メンタル面にも悪影響を及ぼす可能性があります。
身体を壊して本業が続けられなくなってしまっては元も子もありません。 一時的な働き方として短期間だけ割り切って働くか、よほど体力に自信がある方以外は、仕事の掛け持ちは止めておくことをおすすめします。
どうしてもダブルワークを希望するなら、心身への負担が軽い仕事にする、週の2~3日のごく短時間に留めるなどして、決して無理をしないように注意しましょう。
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法的には、どのような雇用形態でも副業が認められています。派遣会社については、「派遣会社」の就業規則で副業がOKであれば、副業をしても問題ありません。 しかし、会社によっては就業規則で副業を禁止していることがあるので、必ず契約時の書類を確認して、副業に関する規定の有無を確認しておくべきです。
副収入の額によっては、会社に副業していることが知られる可能性があります。後々のトラブルを避けたいなら、事前に派遣会社の担当者に相談するのがおすすめです。
しかし、副業OKの会社であるとはいえ、副業していることをできるだけ知られたくないという方もいるでしょう。 そういう場合は、給与所得になる副業を避け、住民税を「普通徴収」にして、会社で年末調整をせずに自分で確定申告をすることで、会社側は所得の把握がしにくくなります。
もし副業を始めるなら、自分のペースで働ける方法を検討することが大切です。くれぐれも無理をせず、本業に支障のない範囲で、安心して働ける環境づくりをしましょう。
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