2020.4.20

派遣社員でも失業保険はもらえるの?受給条件は?

記事メイン画像

派遣で好きな仕事に就きたくても退職後に失業保険を受け取れないのではないかと、不安を感じている人もいるでしょう。派遣社員でも失業保険は受給できますが、さまざまな条件があって準備が必要です。この記事では、派遣社員が失業保険を受給するための条件や手順、必要書類などについて説明します。新たな仕事に対して今後の生活に不安を感じている方は、ぜひ参考にしてください。

1.失業保険とは

失業保険とは、厚生労働省が管理、運営する「労働者が会社を辞めて再就職するまでのあいだ、国から給付される手当」です。一般的に失業手当や失業保険などと呼ばれるケースも少なくありません。正式には「雇用保険失業等給付の求職者給付」とされています。失業保険制度の目的は、労働者が失業中の生活を維持できるようにするためです。再就職までの期間、収入はない状態になり生活を維持できなくなるため、国が期間や金額を決めて支援する目的があります。

そして、しっかりと転職活動ができるようにするためです。例えば退職後すぐに収入がなくなると、焦りから自分には合わない仕事に就いてしまうことや、アルバイトやパートなどを始めてしまい転職活動をする時間が取れなくなるケースも少なくありません。しかし、失業保険が給付されることにより失業中の生活が安定し、しっかりと時間をかけて転職活動ができるようになります。それにより、自分にマッチした仕事に就くことができ、再び退職する可能性を抑える効果も期待できるのです。

国から給付されるといっても企業で働いているときには毎月の収入から保険料を支払っている公的保険で、給料明細では「雇用保険料」などの項目で引かれているので確認してみてください。支給される期間や金額は会社を辞めた理由や勤続年数、所得などによって大きく違いますが、受け取るためにはハローワーク(職業安定所)での手続きが必要です。では、派遣社員が受給するためにはどのような条件が設けられているのでしょうか。一般的な受給条件を紹介したうえで、派遣社員の受給条件を解説します。

1-1.一般的な受給条件

大前提として、失業していることが条件になります。退職後すぐに再就職したり、アルバイトや家事手伝いだったりした場合でも、収入がある方は基本的に給付されません。また、ケガや病気など働けない状態の方も対象とならないので注意しましょう。正規雇用の会社員として働いていた方の受給条件は「失業保険への加入および、その期間を満たしていること」「失業後、再就職する意思があること」「再就職活動を行っていること」の3つです。加入条件は、31日以上勤務する見込みと、1週間に20時間以上勤務することになります。

#失業保険への加入および、その期間を満たしていること

一般的に企業へ就職することで強制的に加入となりますが、受給には被保険者としての期間が条件とされています。条件は、「会社を辞めた日以前の2年間で、被保険者期間が通算で12カ月以上ある」ことです。被保険期間とは、失業保険に加入していた期間を1カ月ごとで考え、賃金の基礎となっている日数が11日以上あった月をいいます。簡単に説明すると、11日以上出勤した月が12回以上あったかどうかです。

#失業後、再就職する意思があること

失業保険は再就職までの期間、失業者が生活を維持する目的で給付されるものです。したがって、失業後も心身ともに働ける状態で、再就職の意思がある方が受給対象となります。

#再就職活動を行っていること

失業保険には再就職を支援する目的があるため、就職活動を行っていることも条件になります。ハローワークへは、求職活動実績の提出が必要です。決められた日に実績がないと、失業保険の受給条件を満たせてないと判断されます。

1-2.派遣社員の受給条件

加入条件は、一般的な条件と同じ内容です。31日以上働いて、週20時間以上勤務していれば加入していることになります。そして、受給条件も基本的には変わりません。しかし、正社員と違って期間を決めて契約するという雇用形態なので、ケースによっては受給条件が緩和されます。「会社を辞めた日以前の2年間で、被保険者期間が通算で12カ月以上ある」という条件が、「会社を辞めた日以前1年間で、被保険者期間が通算で6カ月以上ある」に緩和されるのです。条件は、「会社都合」で契約が更新されず辞めた場合などに限るので、自己都合の場合は一般的な受給条件となります。

2.会社都合と自己都合は何が違う?

退職した理由が会社都合と自己都合とでの違いは、失業保険が給付されるまでの期間です。それぞれどのような理由が当てはまるのかと、期間について紹介します。

#会社都合について

会社都合で失業保険を受け取る場合は、退職後1カ月で給付されます。会社都合と判断されるおもな理由は「派遣会社や派遣先が倒産した」「派遣会社から解雇された」「派遣先の仕事を続ける意思があるのに契約更新されなかった」「派遣会社が派遣先を紹介してくれなくなった」などです。ほかにも、賃金の未払いが続き生活に支障をきたすことや、ハラスメントなども会社都合とされるケースがあります。

#自己都合について

自己都合は給付まで3カ月の「給付制限」が設けられています。自己都合と判断される幅は広く、会社都合以外の理由と考えておきましょう。例えば、両親の介護、結婚や出産による退職、病気などの治療、引越しなどです。病気の場合は、職場の人間によるハラスメントなどが原因であったなら、会社都合と判断されるケースも少なくありません。ほかにも、転職を考え自ら契約しないと決めて退職した場合は、すべて自己都合です。

3.失業保険を受け取るまでの手順

失業保険を受け取るまでには、ハローワークでの各種手続きが必要です。ここでは、その手順を5つにわけて詳細を説明します。

#派遣元から離職票を受け取る

派遣社員の場合は雇用契約終了後、派遣会社が新たな派遣先がないか1カ月間探したうえで見つからなければ離職票が発行されます。失業保険を受け取る条件は仕事ができる状態にもかかわらず働く場所がないことです。派遣会社が倒産した以外では、新たな派遣先を探すのが当然といえます。

#受給資格の決定

離職票を受け取ったら、自宅の住所を管轄するハローワークで受給の手続きです。離職票を提出(ほかに必要なものは後述)し申請することで受給資格の確認がされます。

#受給説明会

申請後7日間、待機期間という本当に失業者なのかなどを確認する期間が設けられています。その後、受給資格が確認されると、受給説明会への出席が必要です。受給説明会は聞きたい方だけが出席する説明会ではありません。基本的に受給資格がある方は必ず出席する必要があります。説明会では、雇用保険受給資格者証と失業認定申告書を受け取るので忘れずに出席しましょう。また、会社都合であった場合は、待機期間の7日間で失業者と確認されれば、すぐに給付がスタートします。

#失業の認定

失業の認定は「認定日」と呼ばれ、4週に1回ハローワークで失業の状態であるか認定してもらう日です。収入があるような仕事はしてないかや、求職活動をしているかなどの状況を失業認定申告書に記載して提出をします。

#受給

失業保険が振り込まれるのは、失業認定日から約1週間程度です。

4.失業保険を受け取るために必要な書類

失業保険を受け取るために書類が必要になるのは、最初の受給資格申請のときと失業認定日です。最初の申請時には、「離職票」「身分証明証」「個人番号」「顔写真」「印鑑」「キャッシュカードか預金通帳」が必要となります。

#離職票

派遣会社から受け取る書類です。離職票1と2が必要となります。

#顔写真つきの身分証明書

運転免許証、パスポート、住民基本台帳カードなどが顔写真つきの身分証明証です。

#個人番号が確認できる書類

マイナンバーカードなら、上の写真つき身分証明書は必要ありません。通知カードか個人番号が記載された住民票なら、身分証明書も必要となります。

#顔写真

履歴書の写真と同じ要領で正面を向いた顔が写っているものです。しかし、サイズは「縦3.0nm横2.5cm」と履歴書写真よりも小さいので注意しましょう。撮影した時期が近い履歴書写真があるなら、カットして大きさを調整するなどしても問題ありません。また、3カ月以内に撮影した写真になります。

#印鑑

給付金を振り込んでもらう銀行口座の届け印ではありません。書類に押す印鑑です。

#キャッシュカードか預金通帳

失業保険の給付金を振り込んでもらうためのものです。本人名義の口座のものに限ります。また、離職票1に記載している場合は、通帳類は必要ありません。

失業認定日は、説明会で受け取る「雇用保険受給資格者証」と「失業認定申告書」が必要になります。認定日は4週に1回あるので毎回必要です。

5.失業保険はどのくらいもらえるのか

失業保険は「基本手当日額」が「所定給付日数」分支払われることになります。ここでは「40歳、勤続年数2年、退職直近6カ月の賃金200万円、自己都合で辞めた」の方を例に計算してみましょう。「所定給付日数」は、勤続年数と年齢、退職理由などによって決まるものです。65歳以下で勤続1年以上5年未満、自己都合の方は「90日」と所定給付日数が決めらています。基本手当日額は、会社を辞める直近180日の賃金日額から算出する金額で、上限と下限金額が決められているものです。上限金額は年齢により設けられていますが、下限金額は一律されています。

まず、賃金日額は「200万円÷180日」で、おおよそ「1万1000円」です。30〜44歳で5010〜1万2330 円以下の賃金日額だと給付率が80〜50%なので、基本手当日額は「4008 ~6165 円」の範囲になります。給付率は、賃金日額が範囲内で低額なら率は高く、高額なら低くなるものです。例えば、範囲内でもっとも低額な5010円なら80%で基本手当日額は4008円、高額な1万2330円なら50%で基本手当日額は6165円になります。複雑な計算なので、ハローワークに確認するようにしましょう。よって「基礎手当日額4008 ~6165 円×所定給付日数90日」となり、失業保険給付の上限金額は「36万720〜55万4850円」となります。

失業保険を活用し自分が好きといえる仕事を探そう

失業保険は失業者の生活を支える目的もありますが、自分に合った職種へ就職するための支援も目的とされています。例えば、好きなものを製造する仕事に携われたなら、「辞めたい」など考えることは少なくなるのではないでしょうか。派遣社員であっても失業保険受け取れるので、自分が好きといえる仕事へ積極的にチャレンジしてみましょう。