2020.4.20

派遣で働いた場合、交通費は支給される?

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派遣の仕事を探していると、応募したい仕事があっても、自宅から遠くて交通費が高いと気になるでしょう。また、派遣の仕事でも交通費が支給される場合と、そうでない場合があります。その違いについて、よく分からないという方もいるでしょう。ここでは、派遣で働いた場合に交通費は必ず支給されるのかについて、詳しく説明します。

1.派遣社員は交通費を支給されない?

派遣の仕事を紹介されると、ほとんどのケースで派遣元より派遣先で仕事をするときの時給のみが提示されます。そのため、通勤交通費と呼ばれる項目や支給はなく、通勤にかかる費用は時給のなかから自分で支払うことになるでしょう。しかし、派遣先の会社で働いている正社員や契約社員の場合、通勤交通費は給与のほかに別途支給されていることがほとんどなので「なぜ派遣の場合には支給されないのだろう」と疑問に感じる方もいるかもしれません。

実は派遣社員に「交通費を支給しない」というのは法律で定められているわけではありません。また、法律では正社員や契約社員であっても交通費を支給しなくてもよいことになっています。そのため、すべての雇用されている労働者に対し雇用主はそもそも「交通費を支給する義務はない」のです。しかし、現状では正社員や契約社員などは通勤交通費が支給されており、派遣社員には支給されていないというケースが多いです。自宅から職場までの交通費がかかる人は、交通費が支給される場合とそうでない場合には、給与の手取りが大きくかわるので気になるでしょう。派遣社員で仕事をするときには、この「交通費が支給されない」という状況は収入においての悩みにもつながりかねません。

一方で、働き方改革や裁判の判例などにより、派遣社員に対して通勤交通費が支給されないことが違法であるという動きもあります。そのため、一部の派遣会社では派遣社員に対して通勤交通費の支給が開始される可能性も高くなっています。

2.派遣社員に交通費が支給されない理由

法律によれば、雇用主は派遣社員を含むすべての労働者に対して「交通費を支給する義務」はありません。そのため、派遣社員の雇用元である派遣会社の多くは派遣社員に交通費は支給しないケースが多いのです。しかし、IT系やそのほかの技術系の派遣会社によっては交通費が別途支給されることもあるでしょう。さらに、派遣先の会社のなかにも、人を募集する際に派遣社員の交通費という名目で別途交通費として支払うというケースもあります。このようなことから、派遣社員の場合には、どの派遣先で仕事をするかによって、交通費が支給されるかどうかが決まる傾向にあります。

2-1.時給に交通費が含まれているから

正社員や契約社員と比べると、派遣社員は交通費が支給されない場合が多いため、派遣社員のなかには「なぜ派遣社員だけ交通費が支給されないのか」と疑問に感じることもあるでしょう。派遣会社に理由を聞くと「時給のなかに交通費を含んでいるため」と説明を受けることが多いです。しかし、時給に交通費が含まれている場合は、本来非課税になるべき部分が課税されている可能性が高くなっています。なぜなら「通勤にかかる交通費」は課税対象ではないからです。

たとえば、交通費は月15万円までは非課税であるため、時給に交通費が含まれているということは、本来非課税である部分が課税されてしまっていることになります。このような課税・非課税の面においては「時給に交通費が含まれている」という説明が派遣会社からあったときには、確認しておくことも大切です。時給のうち、どの部分が課税なのか非課税なのか自分では判断できないからです。しかし、時給のなかに交通費が含まれていても、給与明細に「交通費」として計上されている場合には年末調整で還付される可能性が高いです。

一般的には通勤交通費が高額になりそうな場合には、仕事を探すときに派遣会社と交通費についてどのような取り扱いを行うのかを事前に確認しておいたほうがよいでしょう。一方で、「時給のなかに交通費が含まれていない」という場合もあります。このような説明を派遣会社からされたときには交通費支給はないということになります。「交通費を支払わないことを前提にしたうえで時給を決めている」というケースです。このように交通費についての取り扱いはさまざまなケースが考えられるため、時給と交通費の違いについて派遣会社にしっかり確認しましょう。

2-2.交通費を支払わなくても法的に問題がない

正社員、契約社員、派遣社員を含めて通勤交通費の支給についてそれぞれ違いがあるのはよくあることです。勤務する会社によっても異なりますし、雇用形態によっても異なることがあります。ですから、「法律的に交通費の取り扱いはどうなっているのだろう」と疑問に感じることもあるでしょう。実は民法上では「交通費を負担するのは労働者側」です。民法485条によれば、"弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする。ただし、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とする"と定義されており、但し書きとして"弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする(485条本文)"と記載されています。

「債務者」とは「労働者」を指します。「債権者」は「雇用主」であり、「弁済」とは労働者が働くことを意味しています。そのため、「労働者が自分の義務(雇用主に対して労働を提供すること)を果たすためにかかる費用については、原則は労働者が負担する」ということになるため、労働する場所に行くための交通費などの費用は労働者が負担しなければならないということになります。これは、派遣社員だけでなく、正社員や契約社員も含まれるため、どのような雇用形態であっても本来雇用主が労働者に対して通勤交通費を支払わなくても民法上は問題がないのです。

一方で、雇用契約書に「交通費支給」と記載されている場合は、雇用主が交通費を支払うことになりますが、あくまでも民法上では、交通費は原則労働者が負担することになっています。結論としてはやはり「雇用主が交通費を支払わなくても法的に問題がない」ということになります。

3.2020年から派遣社員にも交通費が支給される?

通勤にかかる交通費は、一般的に正社員や契約社員、派遣社員すべてを含め平等に発生します。しかし、民法上では原則「労働者が交通費を負担する」とされていながらも、正社員や契約社員は雇用契約書に「交通費支給」と記載されていることが多いため、通勤交通費は給与とは別に支給されていることがほとんどです。一方で、派遣社員の場合には現状交通費が支給されていないケースがほとんどなので、交通費分を含めるとさらに、待遇面で大きな差がでてきていることも事実です。

このような待遇の差を改善するために、働き方改革の一環として2020年4月から大企業で、2021年からは中小企業で「同一労働同一賃金」が施行されることになりました。施行された理由のひとつとして、雇用形態の違いによる待遇差を改善することが目的としてあげられています。派遣社員の方が所属している派遣会社は、会社の規模に関わらず2020年4月から「同一労働同一賃金」が導入されます。さらに、2020年4月に改正労働者派遣法が施行されることから、派遣社員の待遇や働き方が変わる可能性が高いです。

ひとつは、派遣社員に交通費が支給されるケースが増えることが予想されます。そのため、応募したい仕事があっても、今までは通勤交通費の負担が高いために断念していたような場合も、今後は仕事の選択肢が増えていく可能性が高くなるでしょう。

4.派遣の交通費は非課税になる?

派遣法の改正や「同一労働同一賃金」の導入により、派遣社員の方にとっては交通費支給の可能性があることからメリットが増えることが考えられます。しかし、仮に交通費が支給されることになった場合、どこまでが非課税になるのか気になる方もいるでしょう。たとえば、通勤で電車やバスを利用している方もいれば、マイカー通勤をしている方もいるでしょう。また、両方利用して通勤している場合もあるかもしれません。一般的に通勤交通費には上限額が設けられており、一定の金額までは非課税になります。利用している交通機関や手段によって異なるので確認しておくことが大切です。

電車やバスなどの公共交通機関を利用している場合の非課税対象金額の上限は1カ月15万円までとなります。もし、15万円を超えてしまったときには超過分は課税されます。マイカーや自転車通勤の場合も交通費非課税の対象になるため、確認しておくとよいでしょう。通勤距離が2km以上あることが条件ですが、距離によって非課税上限金額は異なります。たとえば、片道2km以上10km未満の場合には4200円、片道55km以上になる場合には31600円が上限になるので覚えておきましょう。

公共交通機関とマイカー、自転車通勤を併用しているケースでは合計15万円までの通勤交通費が非課税になります。たとえば、公共交通機関を利用している1カ月の定期代が8万円、マイカー通勤にかかる費用が5万円の場合には、合計13万円なのですべて非課税になります。派遣社員の交通費もこのようなルールが適用されるので、交通費が支給された場合にはメリットがあるでしょう。しかし、派遣法の改正や「同一労働同一賃金」の施行が開始されてからも、しばらくの間は交通費支給までには時間がかかるかもしれません。

ですから、派遣会社と日頃から確認をとりながら、今後の見通しについて聞いておくようにするとよいでしょう。理由は、年末調整の時期までに見通しがつけば、還付が受けられる可能性が十分にあるからです。また、給与明細に「交通費」の項目がなければ、たとえ交通費が支給されているといわれても、非課税対象にはならないので、こちらもあわせてチェックしておきましょう。

法律の改正による変更点は確認しておくことが大切!

派遣社員にとっては、いままで通勤交通費が支給されないことでさまざまな不利益が発生しているケースもありました。しかし、法律の改正により、派遣社員に対する交通費支給の動きは進んでいく可能性が高まっているので、気になる場合には所属している派遣会社に今後の見通しについて確認しておくことが大切といえるでしょう。