派遣先をクビになった!?遅刻や欠勤が多いとクビになるってほんと?
派遣社員は雇用が不安定だと世間的に言われています。実際に、契約を打ち切られるパターンもありますが、それには理由があるのも事実です。これから派遣で働いていこうと考えている方のなかには、契約を打ち切られる理由について知りたい方もいるでしょう。そこで、この記事では派遣社員が契約を打ち切られる理由や、その対処法などについて紹介していきます。
派遣先をクビになる大きな理由は3つあります。1つ目は「スキル不足で仕事のミスが多い人」です。派遣社員、正社員の区別に限らず、企業側は効率よく働いてくれる人材を常に探しています。ましてや正社員に比べて契約打ち切りという合法的にクビにできる契約社員の場合、ほかの契約社員と「どちらのほうが、仕事ができるのか」を比較できるのです。そのため、本人の仕事に対するスキルはもちろん、ほかの派遣社員よりも劣っていると判断されてしまうと、契約打ち切りの対象になってしまう可能性は高いでしょう。人間なのでミスをすることもあるでしょうが、何回も同じミスをしていると評判は下がる一方なので、注意しなければいけません。
2つ目は「コミュニケーション能力が不足している人」です。一人でも仕事を簡潔できる士業ならいざ知らず、企業に勤めていると基本的にはチームで業務をこなしていかなければいけません。工場のライン作業をイメージすると分かりやすいでしょうが、すべての作業を一人でこなすことは不可能です。それぞれが役割分担をすることで、効率の良い作業を可能にしています。スムーズな役割分担をするためには、ほかの作業をしている社員ともコミュニケーションを円滑に取れなくてはいけません。まともな挨拶や返事もできないようでは、人間関係のトラブルが絶えないでしょう。人間関係のトラブルが続くことで、作業効率は低下します。そのような場合、一人で仕事をこなすスキルには問題なくても、チーム全体の作業効率に貢献できないとして契約を打ち切られる可能性があります。
3つ目は「遅刻欠勤が多い人」です。遅刻や欠勤などを繰り返すような勤務態度の悪い人は、職場の士気を下げてしまいます。そのような人を企業側が許していると、「自分も遅刻や欠勤をしてもいい」と勘違いしてしまう社員が出てきます。そのため、企業側はどれだけ優秀であっても、勤務態度が悪い社員には厳しく接しなければいけません。また、遅刻や欠勤が続くと、その人の仕事の穴埋めのためにほかの社員の負担が増すケースもあります。すると、負担が増した社員に不満が溜まって職場の空気は悪くなってしまうでしょう。結果的に、遅刻欠勤を繰り返すような勤務態度が悪い人は、契約打ち切りの対象になるのです。
会社都合でクビになるケースとしては、「派遣先の業績不振」や「人件費削減」が挙げられます。派遣社員がクビになると聞くと、「会社から一方的に告げられる」というイメージの強い人もいるでしょう。たしかに、会社都合でクビを宣告されるケースもよくあります。派遣社員の雇用は、いわゆる派遣法で守られていますが、会社にとってどうしようもない事情がある場合には、契約を打ち切る権利があるのです。どうしようもない事情に該当するのが派遣先の業績不振や人件費削減というわけです。
当たり前ですが、企業側は利益を上げるために派遣社員を要請しています。要請している理由は、「事業規模を拡大するから」「育児休業で休んでいる職員の穴埋めしたい」など、企業によってさまざまでしょう。しかし、いずれの場合も「任せたい仕事があるから」という部分は共通しています。任せたい仕事がなくなると、派遣社員と契約する理由がなくなってしまいます。業種によっても異なりますが、景気に敏感な企業は特にちょっとした原因で大きく仕事量が減少する可能性があります。そのような企業に勤める場合、業績不振や人件費削減という理由で契約を打ち切られる可能性があるという点については理解しておきましょう。
結論から言うと、派遣社員が契約途中でクビになるケースは例外としてはあります。しかし、基本的には契約途中でクビになることはありません。なぜなら、労働契約法で労働者の権利が守られているからです。雇用主と労働者の立場はどうしても、働かせてもらっている労働者のほうが弱くなるケースが多いです。しかし、雇用契約というものは、れっきとした契約の一種なので、法律と同じように守らなければいけないルールでもあります。そのため、いくら雇用主の立場が強くても、一度結んだ契約は原則的に守らなくてはいけないのです。
ただし、原則には例外があるのも世の常です。労働派遣法には派遣先の企業にやむを得ない事情がある場合に限り、契約途中であっても派遣社員をクビにすることができると明記されています。やむを得ない事情はケースバイケースになりますが、厚生労働省は基本的な方向性を指針として発表しているので参考になります。厚生労働省の基本的な方向性として挙げられているのは、「会社の経営状況が悪くなった」「派遣社員が十分な仕事ができない」というケースです。たとえば、会社の経営状況が悪くなってしまったので、このまま雇用し続けると倒産の危機に直面してしまう場合や、体調を崩して満足に出社できなくなった場合などが該当します。
とはいうものの、ドラマのように「明日から来なくてもいい」という言われるわけではありません。労働基準法によって、契約解除の通知は30日以上前に予告をするように決められているからです。実際には派遣先の企業には指揮権しかないため、雇用契約に関する通知は派遣会社に対して行われます。つまり、派遣先から派遣会社に契約解除が通知され、その後派遣社員に連絡が来るという流れです。契約解除を通知された日から実際に契約解除をされる日までの日数が30日に満たない場合は、損害賠償を請求することができます。
この場合、契約解除を通知されてから30日になる日までの不足する給料分を請求することが可能です。ただし、契約解除をされても関連会社での就職先を紹介して、派遣社員に実質的な給料の損害が出ない場合は損害賠償請求の対象にはなりません。
予期していないときにクビを宣告されてしまった場合、まずは「不当な契約解除でないか」を確認しましょう。派遣社員の雇用は契約や法律によって守られているので、不当な契約解除に該当すれば、契約解除の中止や損害賠償請求できる可能性は高いのです。まずは、契約解除を通知してきたのが、派遣会社または派遣先のどちらが発信源になっているかを突き止めましょう。その後、契約書の内容と契約解除の通知との間に整合性が取れているかどうかを確認することが大切です。
派遣会社からの契約解除通知であれば、雇用契約書に明記されている事項が順守されているかチェックしましょう。その際は、契約解除の理由だけでなく、通知があった日付についても注目しておく必要があります。契約書の内容から不当な契約解除である可能性が高いと判断した場合、弁護士に相談するとよいです。もちろん、不当な契約解除であれば本人が直接訴えることもできますが、実際には法律についての詳しい知識が問われることも多くハードルは高いでしょう。
また、悪質な企業が相手の場合、一個人が不満を訴えても無視を決め込むケースも珍しくありません。弁護士などの専門家に依頼することで、こちらの本気度を企業側に訴えることができ、話し合いが進む可能性は高くなります。弁護士に相談することに抵抗を感じる人の場合は、労働組合に加盟するというのも選択肢の1つです。労働組合は労働者が設立する組織なので、労働者側の視点に立って企業と対峙してくれます。不当な解雇を受けた場合、次の職場探しに悪影響を及ぼすリスクもあるので、専門家やさまざまな機関の力を借りて自らに非がないことを証明しておいたほうが無難です。
なお、1年間のうちに6カ月以上にわたって雇用保険の被保険者となっていた派遣社員であれば、契約解除後すぐに失業保険の給付対象になるケースが多いです。該当する場合は、失業保険をもらいながら専門家などへ相談を続けるという方法もあります。ただし、「自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇」に該当すると、契約解除後3カ月間は失業保険の対象にならないケースもあるので注意しましょう。たとえば、就業規則に明記されている理由に沿っての正当な解雇である場合です。いずれにしても、失業保険の給付対象になるかはケースバイケースである事例も多いので、まずは相談してみることが大切です。
派遣社員がクビにならないために注意すべきポイントは主に3つあります。1つ目のポイントは、「同じミスをしないようにすること」です。派遣社員に限らず、企業側は自社に貢献してくれる人材であるかどうかをチェックしています。正社員の場合は自由な解雇は難しいですが、派遣社員の場合は契約期間が切れることで合法的に契約を解除することが可能です。そのため、長く勤めたい職場であれば仕事上でのミスを極力減らしていく姿勢が大切になってきます。人間なら誰でも一度くらいのミスはありますが、同じミスを繰り返していくと契約解除を通知される可能性は高くなってしまうでしょう。
2つ目のポイントは、「コミュニケーションを積極的に取っていくこと」です。上述したように、企業にとっては正社員よりも派遣社員のほうが契約を解除しやすい存在です。同じようなスキルを持った正社員と派遣社員の間で人間関係のトラブルが生じた場合、企業側は正社員を残すように対処する可能性が高いでしょう。すると、派遣社員の解雇につながってしまうというわけです。長く働くためには無理をする必要はありませんが、世間話や挨拶など、社会人として必要なコミュニケーションは最低限欠かさないようにしましょう。
3つ目のポイントは、「勤務態度に気を付けること」です。具体的には「遅刻や欠勤をしない」「上司からの指示は素直に聞くこと」が挙げられます。仕事上でのミスと同じように遅刻や欠勤を繰り返す社員には、同じ職場で働く人からの信用がなくなってしまいます。そのため、やむを得ない事情で休む場合には、必ず連絡をしてからにしましょう。なお、連絡をするときは「派遣先の上司」と「派遣会社の担当者」のいずれにもしておくほうが無難です。
また、自らの仕事内容は派遣先の上司の指示に従って動く必要があります。明らかに間違っていることまで従う必要はありませんが、派遣先の企業にはその企業なりのやり方があるものです。「郷に入っては郷に従え」ということわざ通り、少々非効率な支持があったとしても大人の対応で受け入れる柔軟さも大切だといえます。
派遣社員は正社員に比べると雇用が不安定なのは事実です。しかし、派遣法や労働基準法によってそれなりに立場が守られているのも間違いありません。契約解除の条項に触れてしまうと契約を打ち切られるリスクは高まりますが、それ以外のケースでは基本的にいきなりクビを宣告されることはないでしょう。派遣で働くにあたっては契約書にきちんと目を通して内容を理解しておくことが、自らの身を守るためのポイントだといえます。