2020.4.6

派遣会社と結ぶ契約書の内容は?契約書がない場合は違法?

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派遣会社に登録すれば、契約書を締結するケースが大半です。今後の労働条件を取り決め、安心して働くために重要な役割を果たしてくれる文書です。ただ、契約書を用意していない派遣会社も少なくありません。その場合は「違法ではないか」と心配になる人も多いでしょう。この記事では、派遣会社との契約書の内容や、ない場合の対応を解説します。

1.派遣会社と派遣社員の間で交わす契約書の種類

派遣会社と派遣社員の間で交わす契約書は「労働条件通知書」と「就業条件明示書」に分かれます。まず、労働条件通知書は、労働基準法によって定められている書類です。主な内容は、派遣元における労働条件の取り決めです。労働時間の上限や休日に関する規則、労働賃金などについて言及されています。また、職業訓練や安全に関するルールなどについての項目も設けられています。そのほか、昇給についての決まりも契約書で明記されているので、登録前にはしっかり目を通しておきたい文書です。

次に、就業条件明示書は派遣法によって必要とされています。内容は主に、派遣元が紹介する業務についてです。業務の詳細や契約期間、責任者の氏名などが記されています。派遣社員がどのような業務をどのようなルールで行っていくのか、細かく伝えている文書です。さらに、休日労働についての約束事など、変則的な労働体系について言及されている項目もあります。なお、これらの契約書は別々に取り交わすとも限りません。2種類が1つの文書にまとめられた状態で、契約を交わすこともありえます。

2.契約書の内容

派遣会社によって契約書の内容はさまざまです。ただし、法律で定められている記載項目があるうえ、派遣社員に労働と就業の条件をしっかり伝えることが目的なのでおおまかな項目は共通しています。まず「業務内容」は欠かせません。派遣先でどのような労働に従事するのか、あらかじめ派遣社員の了承をもらうことが必須です。次に「派遣期間」と「出勤日」です。契約がどれくらいの期間にわたり、どの程度出社しなくてはならないのかを明記します。

「賃金」も必須項目です。場合によっては昇給などについての説明もなされます。この項目が詳しく書かれていないと、あとから給与をめぐるトラブルも起こりかねません。支払い方法についての説明も契約書内でされているのが基本です。「時間外労働」の有無、ある場合の手当てについても契約書に盛り込まなくてはなりません。そのほか、派遣元と派遣先、それぞれの「責任者」も契約書には記されます。そして「指揮命令者」の所属先や氏名も契約書ではっきりします。派遣社員は、これらの内容にしっかり目を通したうえで、納得のうえ契約を交わす運びです。

3.契約書の保管期限

派遣社員と派遣会社の間で取り交わす契約書について、保管期限まで法律では定められていません。つまり、一度契約を交わした書類については、本人たちが望むタイミングで破棄できるということです。ただし、契約期間中に書類を破棄してしまうと、内容を確認できなくなってしまいます。また、契約が満了したとしても、給料が振り込まれるまでは残しておかなければ、何らかの不手際が生じたときに派遣元へと原因を追究できません。期限がなかったとしても、契約が満了してからしばらくは手元に置いておくのが無難です。

4.契約書に明示されていない業務を頼まれたら?

大前提として、契約書に明示されていない業務を派遣社員が引き受ける必要はありません。ただ、派遣先の現場社員が契約内容を隅々まで把握しているとは限らないので、契約外の業務を振ってくることもあります。また、契約内容を甘く考えていて、あえて無視しているケースもありえます。もしも仕事をしていて指示に違和感を覚えたら、その場で「すみません、契約にない仕事です」と確認をとりましょう。そもそも、契約内容にない仕事をやらせていたと発覚すれば、派遣先にペナルティが科せられる可能性も出てきます。強引に押し付けられそうになった場合、派遣元の担当者に事実を告げ、仲介してもらうのが得策です。

ただ、契約書に明示はされていなくても、引き受けて支障がない業務はゼロと言えません。たとえば、持ち場の清掃作業です。現場の掃除、整理整頓まで契約書に記しているケースは少数派です。ただ、自分が使った設備、スペースを美しく保つのは社会人のマナーとして重要です。また、派遣社員も正社員と一緒に決起集会、忘年会や新年会に誘われることはあります。これらの行事も業務に該当しません。それでも「交流が深まって日々の仕事をやりやすくなる」などの判断が働いたなら、参加しても問題ではないでしょう。

5.契約書にサインするときの注意点

大前提として、契約書の内容にはすべて目を通すべきです。契約書は形として残るため、それ以前に口頭で聞いたさまざまな説明よりも効力を持っています。あとで「話が違う」と感じても、契約書にサインしてしまえば覆すのは困難です。チェックもせずにサインするのは避けましょう。

どれほど細かい項目であっても、契約書にあるのならしっかりと読むべきです。もしも意味が不明な文章があれば、担当者に質問をすることが大事です。あえて難しい文言にしておいて、派遣元に有利な条件を押し付けようとしている可能性もゼロではないからです。また、契約書には「解除に関するルール」が記載されていることもあります。派遣元が契約違反だと考えた場合、一方的に関係を解除できるルールです。違反を犯さず働くためにも、何がいけないことなのかを把握しておくことが肝心です。

そのうえで「求人情報との違い」を探していきます。悪徳企業であれば、求人の段階では甘い文言を連発しておいて、実際には派遣元に有利な条件を押し付けてきます。給料や労働時間、時間外手当などに関しては特に注意深く読み込みましょう。また、悪徳企業ではなくても求人広告ではメリットばかり強調するので、実際の労働条件とかけ離れてしまうこともあります。

6.契約書にサインするのはいつ?

実際に派遣会社へと登録することになった際、先方から契約書が送られてくるので内容を記入し、送り返しましょう。あるいは説明会などのタイミングで担当者と顔を合わせたとき、その場で契約書を取り交わすことも少なくありません。契約書の締結は、就業期間前に行われるのが一般的な流れです。契約書は、就業内容や労働条件に関する決まりごとを記しているので、働き始めてから締結するのは手順違いだと言えます。ただ、例外的に、担当者の都合などで「働き始めてから契約書を交わしてほしい」と言われる可能性もなくはありません。そのような場合、納得がいかなければ「契約書を先にお願いします」と返すべきです。

また、契約書をなかなか送ってこない派遣元もあります。心配なら一度、担当者に連絡を取ってみましょう。単に郵送するのを忘れているだけの可能性も考えられます。就業直前になってあわてて契約書をチェックするのは危険なので、余裕を持って連絡をすることが肝心です。

そして、契約書の控えは必ず保管します。紛失しない場所を選び、厳重に管理しましょう。必要なとき、すぐに取り出せるのもポイントです。派遣先で問題が起きたとき、契約の内容が争点となるのでいつでも見られるようにしておきましょう。

7.契約書がないと違法?

結論から言えば、派遣元にとって契約書の作成は法律で定められた義務と言えません。そのため、たとえ契約書がなくても違法行為にはあたらないのです。ただ、契約書を交わすと宣言していたにもかかわらず、準備をしないのは違法行為となります。不安に感じたら「契約書はどうなっていますか」と聞いてみてもよいでしょう。実際のところ、契約書は派遣社員と派遣元、双方にとってメリットのある文書です。契約書によって業務内容や就業条件がはっきりするので、トラブルの回避が可能です。問題が起きたとき、水かけ論にならず早期解決を図れます。また、契約書によって健全な労働環境を約束してもらえれば派遣社員も安心して働けます。

それなのに契約書を作らないのであれば、派遣元の悪意を疑ってみるべきです。公表していない業務を押しつけたり、安い賃金で残業をさせたりしたがっている可能性すら出てきます。法律に則って健全な経営をしている派遣元であれば、むしろ積極的に契約書を締結しようとします。派遣元に登録する際、契約書がないのであれば理由を担当者に尋ねてみましょう。納得する回答が得られなかったなら、登録そのものを見直すことも必要です。

8.契約書が派遣元からもらえない場合は

まずは派遣元の会社に連絡してみます。派遣元には登録している派遣社員との窓口があるはずです。その担当者に状況を確認し、契約書を作成してもらいましょう。ただ、担当者は多くの派遣社員と日々、さまざまな連絡を取っているので対応が遅れることも珍しくありません。その場合は、労務担当に連絡してみるのが賢明です。契約書の作成を担っているのは労務担当なので、スムーズに用意してくれると考えられます。

ただ、これらの要求が無視され続けるのであれば、意図的に契約書を作成しないよう動いている可能性もあります。それなら、労働基準監督署に連絡を取りましょう。助言をもらえるだけでなく、労働基準監督署から直接、派遣元に連絡してくれることもあります。

しかし、こうした手続きを取っているだけでも時間はかかります。結局、契約書がないまま派遣先に配属されそうになるケースも珍しくありません。それだと不利になるのは派遣社員なので、いっそ別の派遣元会社を探すのも方法です。しっかり契約書を取り交わしてくれる会社を選べば、安心して仕事に集中できるでしょう。一から派遣元を探す手間こそかかるものの、将来的にトラブルと無縁でいるためには大切な判断だと言えます。

派遣社員の安全には契約書が重要!もらえないときは自分から連絡を

契約書は派遣社員の安全を守ってくれる大切な文書です。もしも派遣先で問題に直面した場合は「契約内容と違う」とはっきり伝えられるからです。そもそも、悪徳業者に登録してしまわないよう、契約書をチェックすることはとても重要です。派遣元から契約書を用意してもらえないようであれば、自分から確認するようにしましょう。