派遣社員は確定申告不要?派遣社員でも確定申告が必要な場合とは
派遣社員は、一般的には派遣会社に登録して、派遣会社から給与を支払われている給与所得者です。そのため、通常は自分で税務署などに出向いて確定申告をする必要はありません。しかし、ある一定の要件に当てはまる場合は確定申告が必要になるケースがあります。確定申告をすることにより、納めすぎた税金が戻ってくる場合がありますので知っておいて損はありません。以下に、派遣社員でも確定申告が必要な場合について説明します。
確定申告とは、1年間に得た収入や支払った経費などを計算して、課税対象となる所得金額に応じた納税額を確定させるためのものです。会社や団体に所属せずに収入を得ている個人事業主やフリーランスは、自分で所得金額を計算して確定申告を行い、税金を納める必要があります。会社や団体に所属している方は、給与が支払われるときに源泉所得税として既に所得税が天引きされています。過不足があれば1年の最後に調整をして、正しく確定した所得税を会社や団体が納めているわけです。そのため、所得税の計算や確定申告は原則として個人が行うことはありません。ただし例外として、会社や団体に所属している会社員や公務員でも確定申告を行う場合があります。その例外のケースについては次の章で説明します。
確定申告書は、基本的には住民登録のある住所地を管轄する税務署で税務署長宛てに提出しますが、税金を納める先は国と地方公共団体です。提出場所は、管轄の税務署や、自治体の役所や市民センターなどでも出張申告を受け付けているところが多いです。また、インターネットを利用して申告ができる納税システム「e-Tax」なら、パソコンやスマホで確定申告書の作成や提出ができます。
年末調整とは、会社が個人に代わって所得税の金額を正しく計算し直すことを指します。会社員が税務署に確定申告をする必要がないのはこのためです。会社は、給与や賞与の課税対象額から所得税を計算しています。ただし、この税額はあくまでも概算であり、パソコンなどの自動計算では多少の誤差が出ることがあります。そこで、1年間の最後に保険料控除などを行い年間の所得額が確定した時点で、正しい納税額を改めて計算し直すのです。そこで、税金を多く納め過ぎていた場合は戻し、もし足りなければ追加で徴収して正しい年税額となるように「調整」します。このように、会社が正しく年税額を計算して年末に過不足を調整してくれるため「年末調整」というのです。つまり、会社や団体に勤務していない方や、年末調整の時期よりも前に退職した方は、年末調整の対象外となります。
派遣という雇用形態で働いていても、登録先の派遣会社から給与を受け取っている場合は、派遣会社が年末調整を行うため通常は確定申告の必要はありません。ただし、一部例外があります。確定申告をすることにより、納めすぎた税金が戻ってくることもあるため、以下のケースに該当していないか確認してみましょう。
年の途中で派遣会社を退職したため年末調整を受けていない方や、派遣会社を退職したあと、別の会社へ再就職をして年末調整の手続きに間に合わなかった方などは、確定申告をすると納税額が戻ってくる可能性が高いです。また、年末調整に対応していない派遣会社と契約している方や、源泉徴収の適用外の給与や賞与を受け取っている方も確定申告の必要があります。ほかにも、2カ所以上の会社から給与を受け取っている方のうち、ほかの会社に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出した方や「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していない方も年末調整の対象とならないため、確定申告を行いましょう。
また、派遣会社からの給与以外に、給与以外の副収入が20万円以上ある方も、確定申告を行う必要があります。1月1日から12月31日までの1年間に、給与や賞与の収入金額が2000万円を超える方も確定申告をしなければなりません。
その年の1月1日から12月31日までのあいだに、自分を含めた配偶者や家族、生計をともにする親族などに支払った医療費が10万円を超えるか年収の5%を超える場合は、医療費控除を受けられます。確定申告をすることにより、医療費控除の適用になり税金の還付が受けられます。病医院の診療費や治療費、治療に必要な医薬品、通院の交通費、入院の部屋代や食事なども適用になるため、レシートや領収書などは捨てずに取っておきましょう。
住宅を取得したり増改築をしたりするために、金融機関や公庫融資などの住宅ローンを組んで返済中の方も確定申告を行いましょう。返済期間が10年以上ある、利息を支払っているなどの要件を満たすことにより住宅ローン控除が適用されます。ただし、毎年の確定申告が必要になるわけではなく、初年度のみ確定申告を行うことで、以降は会社の年末調整で10年間に渡り住宅ローン控除が受けられます。
各自治体を応援したい気持ちやお礼に送ってもらえる特産品が魅力に感じることから、ふるさと納税を利用している方もいるでしょう。納税とはいっても厳密には住所地以外の自治体に納税の義務はないわけですから、税金を納めていることには当たらず寄付行為に該当します。寄付という善意を尊重する形で税法上、寄附金控除が認められていますから、いわゆる節税になるわけです。しかし、会社で行う年末調整は寄付金控除にまで対応してもらえません。そのため、通常なら確定申告をしなくてもよい会社員も、個人で確定申告を行う必要が出てきます。
その手続きが煩雑なら、ふるさと納税制度の利用自体を躊躇する方もいるでしょう。そこで登場したのが「ふるさと納税ワンストップ特例制度」です。本来なら確定申告を行わなくてよい会社員がふるさと納税を利用する場合は「ふるさと納税ワンストップ特例制度」の適用を受けることにより、確定申告をせずに寄付金控除が受けられます。ただし、制度を利用できるのは、ふるさと納税先の自治体が5団体以内であることが条件です。条件に当てはまっていれば、各自治体宛てに申請書を提出することにより寄付金控除を受けることが可能です。
一方、6カ所以上の自治体にふるさと納税を行っている方は、この制度を利用できません。そのため、年末調整のある会社員でも寄付金控除を受けるための確定申告が必要になります。この制度は、派遣元の派遣会社から給与の支払いがある派遣社員にも同様に適用されます。
確定申告は、受付可能な申告期間はあらかじめ決められています。例年、原則として2月16日から3月15日までとなっています。その1カ月間に、前年の1月1日から12月31日までの所得を申告することになるため、計画的にスケジュールを立てて準備を整えなければなりません。
確定申告に必要な書類は、会社が発行した源泉徴収票です。通常、年末調整が終わってから各自に発行されます。2カ所以上の会社から給与を得ている場合は、すべての会社から源泉徴収票が必要になります。年度途中で会社を退職している方は、一般的に退職後1カ月以内に源泉徴収票が発行されるはずです。郵送してくれることが多いですが、1カ月以上経っても届かない場合は問い合わせてみましょう。
ほかに必要な書類は、生命保険や地震保険などに加入しているなら「保険料控除証明書」が必要です。年末調整に間に合うように、それぞれの保険会社から見開きはがきなどで自宅に郵送されます。誤って捨てないように気をつけましょう。また、医療費控除の対象となる場合は、領収書やレシートなど支払いの証明となるものが必要です。住宅ローン控除がある場合は、金融機関が発行した返済期間や利息のわかる明細や契約書を持参しましょう。
通勤のための交通費は、1カ月あたり15万円まで非課税となっていますので、派遣会社から発行される通勤交通費証明書なども必要です。会社の年末調整までに控除書類の提出を忘れて控除対象にならなかった場合は、該当の書類を持参します。ほかに、マイナンバーカードかマイナンバー通知カード、申告する本人名義の預貯金口座の番号がわかるもの、印鑑、経費がわかる書類が必要です。
確定申告の手続きの流れは、2月16日から3月15日までのあいだに、管轄の税務署や、市区町村の役所や役場、出張所や市民センターなどの受付窓口に必要書類を持参して届け出ます。もしくは、郵送や国税庁のe-Taxでも受け付けていますので、いずれか都合の良い方法で申告しましょう。初めての場合は、確定申告の無料相談コーナーなどがある場所で、税理士の助言を受けながら作成すると間違いがありません。
初めての確定申告では戸惑うこともあるかもしれませんが、1度経験すると要領がわかるので次回からはスムーズに進められるでしょう。領収書やレシートを毎月整理して小まめに記帳しておくのが良いのか、1年分まとめて集計するのか、自分なりにやりやすい方法を考えて準備しておくのがおすすめです。
年の途中で退職して年末調整を受けていないため源泉徴収税額を払いすぎている場合は、還付申告をすることにより税金が戻ってきます。また、先ほど説明したように、住宅ローンがある方や、自宅の増改築をしたとき、認定住宅の新築をしたときにも、還付申告が可能です。多額の医療費を支払った場合も、医療費控除が適用されるため払いすぎた税金が戻ってきます。
6カ所以上の自治体にふるさと納税を行っている場合や、公的団体や公益性のある団体などに寄付をした場合も、寄付金控除の対象となります。そのほか、災害や盗難などに遭い資産に損害を受けたときも災害減免法の適用になり、税金の還付を受けることが可能です。還付申告は、通常の確定申告とは異なり、いつでも受け付けてもらえます。
派遣社員でも確定申告をしたほうが良いケースはたくさんあります。自分が税金を納めすぎていないかどうか、一度確かめてみてはいかがでしょうか。何年か前に該当するケースがあった場合は、還付申告書を提出できる日から5年以内なら提出可能です。手続きごとが面倒で先延ばしにしていた方は、これを機に節税対策しましょう。また、納税の義務があるのに申告をしていない場合は、無申告加算税が課されますので気をつけてください。