2020.2.1

派遣社員の時給相場はどれくらい?交渉は可能?

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働き方にはさまざまなものがありますが、派遣社員もそのひとつです。派遣社員は自分に合ったスタイルで働ける点や、それまでのキャリアを活かせる点がメリットだといえます。しかし、正社員に比べて一般的に賞与がない点はデメリットだといえ、どれぐらい稼げるか不安を感じている人もいるのではないでしょうか。そこで、この記事では派遣社員の時給相場について、年代および職種別ごとに詳しく紹介していきます。

1.派遣社員の時給、全国平均は?

派遣社員の平均時給を知るために有効なデータとして、厚生労働省が取りまとめた「2017年度労働者派遣事業報告書集計結果」があります。それによると、派遣社員の平均賃金は1万2212円となっており、8時間勤務に計算し直すと派遣時給は1526円です。この数字は、前年度に比べて6%増(平均賃金1万1517円、派遣時給換算1439円)になっており、かなり大幅に上昇していることが分かります。ただし、ここで示した数値はすべての職種の全国平均であり、実際にはそれぞれの職種や地域格差はそれなりにあるのも事実です。あくまでも平均値であることは頭に入れておきましょう。

賞与が支給されない派遣社員にとって、時給アップは年収に直結する非常に大きな問題だといえます。たとえば、時給1200円で1日8時間勤務(残業なし)、1カ月のうち21日間働いた場合の月給は20万1600円です。それに対して、時給1500円で同じ条件の場合は、月給25万2000円になります。派遣社員として働く意思がある場合には、少しでも派遣時給のよい求人に応募するのは、年収アップを考えるうえでとても重要だといえるでしょう。

2.業種別、派遣社員の平均時給は?

派遣社員の平均時給について「事務系」「販売系」「IT系」「物流系」といった4つの業種別に紹介します。なお、平均時給については、すべての業種で「2017年度 労働者派遣事業報告書の集計結果」を参考にしています。まず、事務系の平均時給は1250円(日給1万6円、月給換算21万126円)です。事務職は、総務や経理の仕事をするケースが多く、営業などのように売上に直接貢献する部署ではないので、成果報酬制による給与体系が採用されるケースはほとんどありません。そのため、時給としては平均よりも低くなっています。

販売系の平均時給は1240円(日給9920円、月給換算20万8320円)です。販売系は、商品を顧客に売る仕事であり、歩合制を採用されているケースもよくあるため、基本給部分が低く抑えられている傾向にあります。職場によっては事務職よりも低い時給になることもあるようです。情報処理や通信技術といった専門的なIT系の派遣社員の平均時給は、2280円(日給1万8245円、月給換算38万3145円)とかなりの高収入が期待できます。IT系の人材はどの企業でも人手不足が顕著になっていることから、給与面での好待遇化が進んでいます。

ネット通販の普及などにより、需要が高まっている物流系の平均時給は、1222円(日給9782円、月給換算20万5422円)です。前年比よりも平均時給は2.7%程度上がっていますが、さまざまな企業が輸送コストの削減に取り組んでいることから、大幅な上昇は実現していません。平均時給は業種によって大きく異なりますので、派遣求人に応募するときは事前に調べておきましょう。

3.年齢別、派遣の平均時給は?

正社員の場合は、一般的に年功序列型の企業が多く、年齢を重ねるとともに昇給や昇格によって給与は上がっていきます。しかし、派遣社員の場合は、昇給の対象になるケースはほとんどありません。そのため、派遣時給を比べるときは、正社員の平均月給と比較してみるのもよいでしょう。厚生労働省の「2017年賃金構造基本統計調査」によると、25~29歳の正社員の平均月給は24万5700円です。これは、派遣時給1450円の月給(1日8時間勤務、21日間)とほぼ同じ数字となります。

派遣社員は業種によって時給が大きく異なるため、時給1500円以上の職場で働いていれば、30歳代前半まではほとんど正社員と変わらない月給を得られるでしょう。ただし、年齢が上がるにつれて正社員の平均月給の上昇幅は大きくなるため、最終的には派遣社員のほうが低くなるケースが多いです。

4.●20代

派遣社員は業種やその人が持つスキルによって時給が変動するケースがほとんどです。年齢に応じて変動することはほとんどありませんが、厚生労働省の「2017年賃金構造基本統計調査」には正社員以外という項目があり、参考にすることができます。それによると、平均月給は20~24歳が18万3700円、25~29歳が19万9600円となっています。これは時給に換算(1日8時間勤務、1カ月21日間として計算)すると、それぞれ1093円と1188円です。

月給の男女別では男性のほうが高く、20~24歳で18万9800円(女性は17万8700円)、25~29歳で20万9600円(女性は19万1300円)となっています。派遣の仕事内容は、勤務先の業種によってさまざまであるため一概にはいえませんが、地域間の時給相場には大きな開きがある点には注意しましょう。厚生労働省の「労働者派遣事業の2017年6月1日現在の状況」によると、東京、大阪、愛知の三大都市圏の時給が特に高い傾向にあります。

5.●30代

厚生労働省の「2017年賃金構造基本統計調査」によると、30~34歳の平均月給は21万600円で、時給換算すると1253円になります。それに対して、35~39歳の平均月給は21万500円であり、ほとんど変わりません。正社員の平均時給が徐々にアップしていくのに対して、それ以外の働き方の場合は30歳を過ぎたあたりから頭打ちになる傾向が顕著に表れています。平均月給の男女別では、30~34歳男性は22万9100円ですが、女性は19万5600円です。20代後半に比べると、男性の上昇幅に比べて女性の上昇幅は低いことが分かります。

厚生労働省の「労働者派遣事業の2017年6月1日現在の状況」によると、派遣の時給は北海道や沖縄といった日本の南端や北端の地域に近づくほど安くなる傾向にあります。また、地方だとしても、一般的には都市部と呼ばれる地域ほど時給は高くなりやすいです。

6.●40代

厚生労働省の「2017年賃金構造基本統計調査」によると、40~44歳の平均月給は20万9600円で、時給換算すると1247円です。また、45~49歳の平均月給は20万7000円となっています。40歳代では、前半も後半もその前の年代に比べて平均月給が下がっているのが特徴です。昇給や昇格のない正社員以外の働き方を選ぶときは、注意したほうがよいでしょう。男女別では男性が若干上昇しているのに対して、女性は20代後半からほとんど上昇していないのが特徴です。40~44歳の平均月給では男性が23万6700円なのに対して、女性は19万4300円、45~49歳では男性が23万9200円、女性が19万1900円となっています。

厚生労働省の「労働者派遣事業の2017年6月1日現在の状況」によると、平均時給における地方間の格差は大きいため、働く地域で相場は変わります。たとえば、三大都市圏は25万円程度、それ以外は20万円程度を平均月給の目安として考えておきましょう。

7.時給をアップさせるためにはスキルアップが重要

派遣社員は基本的に昇給や昇格はありませんが、交渉によっては時給アップを勝ち取ることも不可能ではありません。ただし、闇雲に交渉してもうまくいくことは少ないでしょう。スムーズに時給アップを勝ち取るためには、誰が見ても納得するような客観的な交渉材料を用意しておくことが大切だといえます。たとえば、PCスキルや語学力を高め、検定試験に挑戦することが挙げられます。また、会計などの専門的な資格を取得しておけば、職場で頼りにされる機会も増えて時給アップの説得力を強化するのに役立つでしょう。

ただし、スキルアップや資格を取得したときに、「時給を上げて欲しい」とあまりストレートに交渉するのはよくありません。なぜなら、時給を上げる側の心証を損ねる可能性があるからです。「入社当時に比べてPCのスキルが向上し、同じ作業でも短時間でこなせるようになった」「一人で任せられる仕事が増えた」などの実績をアピールするように心がけましょう。なお、いくら頑張っても時給が上がらないという場合は、最終手段として派遣先を変えるという方法があります。どうしても交渉が思い通りにいかない場合は、検討してみましょう。

派遣社員の時給は交渉も可能!スキルアップや資格の取得に力を入れよう

派遣社員の時給は業種によって異なるものの、30歳代前半までは正社員とそれほど変わりません。ただし、一般的に昇給や昇格の対象になるケースは少ないため、30歳後半以降になると正社員との間で差が生じてきます。時給をアップさせるためにはスキルアップや資格の取得が必須です。派遣会社の担当者を納得させるような実績を積んで、時給アップを勝ち取りましょう。