【現場レポート】建機教習所ってどんなところ?建機や授業の様子などを紹介!
フォークリフトやクレーン、高所作業車など。建設現場はもちろん、工場や倉庫などでも活躍する、建設機械の免許や資格をとれるのが、PEO建機教習センタ(以下、PCT)です。どんな資格が、どれくらいの日にちでとれるのか。また、費用はどれくらいかかるのか。受けている人のタイプや授業の雰囲気は、などなど。神奈川県相模原市にある、神奈川教習所を取材した様子を紹介します!
――まずはどのような資格がとれるのか、教えてください。
免許や資格は大きく4つにわかれています。「免許」「技能講習」「特別教育」「安全衛生教育」です。免許は吊り上げ荷重5トン以上のクレーン運転士の資格(免許)がもらえ、移動式、天井などに固定されているクレーン・デリック、どちらもの運転免許もとることができます。
技能講習は玉掛け、フォークリフト、吊り上げ荷重が1トン以上5トン未満の小型の移動式クレーン、パワーショベル、高所作業車、ガス溶接などの資格をとることができます。
特別教育、安全衛生教育は運転資格というよりは、建機を運転して仕事を行うときに、安全かつ衛生的に仕事が進められる知識や技術が学べます。
――資格をとる難しさや必要な日にちについても教えてもらえますか。
免許をとるのが最も難しく、最短でも7日は必要ですね。教習所で受けられるのは実技講習と試験までで、その日にちが最短で6日です。実技試験に合格したあとも国が決めた所で学科試験を受ける必要があります。自動車免許をとるのと似ていて、費用もそれなりにかかりますね。
一方、技能講習や特別・安全衛生教育は、内容によってとれるまでの日にちや費用はまちまちで、たった1日でとれる資格もあるんですよ。免許とはちがって、技能講習であれば教習所で技能と学科両方を受けることができ、同じく教習所で行われる試験に合格すれば、資格取得となります。特別・安全衛生教育については試験はありません。講義を受ければ、それで資格をとることができます。
免許や資格は一度とってしまえば、ずっと使えるのも魅力ですよね。なかには書換えの必要がない資格もあって、建設業界で長く働いている人は、いくつもの資格や免許を持っている場合も多いんです。そして給与アップはもちろん、転職するときの強みにもなっているんですよ。
――どの資格が人気ですか?
玉掛けとフォークリフトの人気が高く、PCTでは年に約4万人がそれぞれ受けています。とくにフォークリフトは建設業界に限らず、運輸、倉庫、ホームセンターなどでも使われる建機ですからね。重いものは人ではなく機械で運ぼうとの考えが広まっていることも、人気が高まっている理由だと思いますね。
このようなリクエストに応えられるよう、玉掛けとフォークリフトの資格は全国に15か所あるPCTのすべての施設で受けることができます。でもクレーン免許のような大型建機の講習は受けられる教習所が限られていますから、自分のほしい免許や資格が近くの教習所や出張所で受けられるかどうか、事前に確認しておく必要があります。
――費用についても教えてください。
免許や資格の種類、いま持っている資格や免許、経験によって異なりますね。たとえば一番人気のフォークリフトであれば、資格も経験もない場合は5万6,000円ですが、自動車免許を持っていれば5万円にさがります。さらに大型特殊自動車免許を持っていて、特別教育終了後、フォークリフトの運転経験が3カ月以上ある人であれば、2万4,000円までさがります。
――どのような方が受けていますか。
教習所によりちがいはありますが、下は18歳から上は70代までと、幅広い人たちが受けていて、近ごろは女性や外国人も増えています。免許や資格がないと重機の運転はできませんから、仕事場に重機があって、免許や資格が必要な人。建設・土木会社、製造業、工場などで働いている人たちがやはり多いですね。
最近ならではの特徴もあります。勤めていた会社を派遣切りなどにより退職しなければならない状況になってしまい、次の就職先を見つけるときに資格があると有利だから、との理由です。同じような理由で、高校生が就職が有利になるからと、受講するケースもあるんですよ。
以前は勤めている会社が費用を出してくれる場合がほとんどでしたが、近ごろは転職する人も多いことから、そもそも資格を持っている人を採用することが多いですね。あるいは資格が必要な場合は、自分で費用を出して手に入れるケースも多いと思います。
どのような状況になっても仕事に困らないために資格をとる。前向きでやる気があり、自分の成長をしっかりと考えている。そのような人の受講が多いように思いますね。
――外国人の方は日本語がわかるんですか?
日本語がわかる方であれば、ふだんの日本語の授業を受けてもらっています。一方、日本語が難しい場合には、通訳を入れての授業を行ったり、授業で使うスライドやテキストも、母国の言葉に翻訳したものを用意しています。
教習所により異なりますが、英語、中国語、ベトナム語、インドネシア語、ポルトガル語などがあり、韓国人、中国人、ペルー人、ブラジル人、フィリピン人、スリランカ人、インド人、ナイジェリア人などが受けていますよ。ちなみにテキストは日本語も外国語どちらもPCTオリジナルです。
――そのほかPCTならではの特徴はありますか。
PCTはもともと、建機をつくっている日立建機という会社やメンテナンスセンターであった場所がはじまりです。そのため講師のなかには、建機の設計を行ったエンジニアもいます。また建設業界で働いた経験を持つ、現場に詳しい方が講師をしている場合もあります。そのためいわゆるお勉強的な授業ではなく、現場に出てから役に立つ内容を教えているのが特徴です。ある分野の知識が豊かな専門家を先生として招き、教えている場合もあるんですよ。
茨城県と香川県の教習所だけですが、自動運転などが行えるコンピュータを積んだICT建機の操作や、ドローンの操縦など。これから広まっていくと思われるICT施工の授業が受けられるプログラムも用意しています。
PTCならではというわけではありませんが、かんたんかつ便利に授業を受けられるよう、パソコンやスマホから授業の予約ができるシステムを入れていて、土日・祝日も営業しています。新入社員研修で利用される場合には、講師が会社に出向く出張講習も行っているんですよ。
――最後に、受講を考えている方にメッセージをいただけますか。
受講生のなかには、会社からの指示で仕方なく来ている方もいて、そのような人は多くの場合、積極的に授業を受けていません。そのため途中でやめてしまうケースも見られます。また自分が本当に資格や免許をとることができるのか。そのような不安を持って授業を受けている人たちもいます。
そこで私たちは、そのような生徒の様子に常に気を配っていて、問題を抱えているような方には、声がけなどのフォローをするようにしています。このような私たちの想いが受講者に伝わり、最初は不安で運転もぎこちなかったのが、だんだんと自信を持ち、重機を操作している姿を見ると素直にうれしいですよね。また授業が終わったあとに「ありがとうございました」などの言葉や、なかにはお礼の手紙をくれる方もいて、仕事のやりがいとなっています。
ここのところ、労働災害が増えていますよね。そのため前にも増して、安全作業、事故のない運転や知識が求められています。私たちとしても時代にあった内容の授業ならびに講師をさらに充実していきますので、しっかりと講義を受け資格を手に入れ、事故のない安全作業を行ってもらえれば、と思います。
教習というと、怖い教官に厳しく指導されるイメージもありますが、「私たちは先生ではなく、受講生というお客さまをお迎えしているんです。ですからサービス業だと思っています」とのお話でした。怒られるかもしれない、最後まで取り組みきれないかもしれない、などと不安に感じていた方も安心して受講してみてはいかがでしょうか?これからは女性の講師も増やしていくそうなので、女性の受講者もますます増えそうです。