2020.12.25

振動工具取扱作業者に必要な安全衛生教育とは?対象業務や教育内容を解説!

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はじめに

振動工具とは、電動ハンマーや振動ドリルなどを使用する際に強い振動を起こす工具です。作業現場ではさまざまな振動工具が使われています。振動工具は間違った使い方で長時間作業すると、手指の血行が悪くなったり、手にしびれや痛みなどが出る場合があります。今回は、業務で振動工具を取りあつかう人に向けた安全衛生教育の講習について解説します。

振動工具取扱作業者 安全衛生教育とは?

「振動工具取扱作業者 安全衛生教育」とは、工具の取りあつかい方や作業上必要な知識を身につけるためのもので、安全のために行われています。業務で振動工具を取りあつかう人の健康を守るための予防対策措置です。厚生労働省が2009年7月10日に通達した「振動工具の取扱い業務に係る振動障害予防対策指針」により、振動工具をあつかう作業従事者は全員、教育を受けなければいけないと決められています。

振動工具取扱作業者になぜ安全教育が必要?

なぜ振動工具取扱作業者に安全衛生教育が必要なのでしょうか?それは振動工具を長時間操作し続けると白蝋病(はくろうびょう)などの振動障害を起こす危険性があるからです。白蝋病は、手や腕に伝わる振動によって血行障害がおき、手指のしびれや痛みを伴う病気です。ときには、中枢神経や自律神経まで障害がおよぶこともあります。

とくに、重い振動工具を長時間、間違った方法で作業すると、発症するリスクが高くなります。そのため企業が、適切な環境を整えることはもちろんですが、作業者自身が振動工具の扱い方や予防法に関する正しい知識をもっている必要があります。
法改正後の振動障害予防対策は、国際標準化機構(ISO)と足並みをそろえた内容になっており、大きく2つのことが盛り込まれています。ひとつは、振動工具の振動加速度のレベルに応じて、工具の使用時間を管理することです。もうひとつは、適切な環境下で正しい使い方を行うよう、作業者ひとりひとりに教育を行うというもので、安全衛生教育は、この指針に沿った内容になっています。
なお安全衛生教育は、個人で振動工具を使う人には適用されません。つまり趣味のDIYなどで振動工具を使う場合には、安全衛生教育を受けなくても使えます。しかし振動障害の予防のためのものですから、個人でも作業時間が長いようなら、受けておくといいでしょう。

安全衛生教育の対象となる取り扱い業務は何?受講条件はあるの?
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安全衛生教育の対象になっている振動工具には、主に下の表にまとめた6種類が挙げられます。ハンドグラインダーやコンクリート・バイブレーター、エンジンカッター、インパクトレンチなどの工具です。ただし、材木を伐採するチェーンソーや、芝刈り機は強い振動が出る工具ですが、安全衛生教育の対象ではありません。チェーンソーには伐木等の業務に係る特別教育、芝刈り機には刈払機取扱作業者安全衛生教育という、それぞれ別の講習があります。安全衛生教育で学んだことは役に立ちますが、取りあつかうことはできませんのでご注意ください。
安全衛生教育の受講条件はとくになく、誰でも受けられます。ただし「年少者労働基準規則」があるため、業務につけるのは18歳以上になってからです。

種類 主な工具例
ピストン内臓工具
(打撃工具)
さく岩機、コンクリートブレーカー、ピックハンマー、チッピングハンマー
エンジン内臓工具
(可搬式)
エンジンカッター
回転工具 ハンドグラインダー、振動ドリル
振動体内臓工具 タイタンバー、コンクリート・バイブレーター、タンピングランマ―
締付工具 インパクトレンチ、エアドライバー
往復動工具 バイブレーションシャー、ジグゾー
振動工具取扱作業者安全衛生教育の講座内容は?どこで受講できるの?
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振動工具取扱者の安全衛生教育は学科のみです。全部で4時間の講習で、テーマは3つあります。振動工具に関する知識と、振動障害及びその予防に関する知識、関係法令等を学びます。実技の教育はありません。教習所によっては日振動ばく露量*の計算方法の演習などを行っています。
講習は全国各地で実施されています。近くにない場合でも、WEB講習や出張講習があるので、受講したい教習所などに確認するといいでしょう。受講料金はおおむね8000円から1万円程度です。その日のうちに修了証が発行されます。

*一日あたりの振動ばく露量。どのくらい振動にさらされているかを測る指標。

科目 内容 時間
振動工具に関する知識 ・振動工具の種類と構造 1.0時間
・振動工具の選定方法
・振動工具の改善
振動障害及びその予防に関する知識(振動障害の予防措置を含む) ・振動障害の原因及び症状 2.5時間
・振動障害の予防措置
関係法令等 ・労働安全衛生法 0.5時間
・労働安全衛生法施行令等中の関係条項及び関係通達中の関係事項等
まとめ

振動工具取扱作業者 安全衛生教育は、業務従事者を振動障害から守るための教育です。2009年の法改正により、作業を行う全員が教育対象となりました。振動工具に関する知識や、予防法に関する作業上必要な知識を習得します。チェーンソー、芝刈り機を除く、大小さまざまな工具が対象となります。
安全衛生教育は、学科のみで4時間で受講できます。全国各地で受けられますが、学科のみの講習なのでWEBを活用するのもいいでしょう。