2020.12.02

工事担任者資格は難易度が高いって本当?試験内容や勉強法を解説

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はじめに

情報通信ネットワークの技術は日進月歩で進んでいます。それらのネットワーク接続に関わる工事担任者とはどんな資格なのでしょうか?
ここでは、資格の難易度や試験内容、受験するにあたっての対策について解説します。

工事担任者は情報通信ネットワークの接続に必要な資格

工事担任者とは、電気通信回線を、電話や情報端末設備に接続するために必要な資格です。一般家庭のパソコンや電話機を通信事業者の光ファイバーにつないだり、企業内ネットワークの配線工事を行う際、この資格が役立ちます。工事担任者資格は工事の範囲にあわせて7種類あります。AI1種、2種、3種、DI1種、2種、3種、そしてAI・DD総合種です(表)。主な仕事として、電気通信設備の配線や設置・保守があります。電話線や光ケーブルの配線接続工事の仕事に有利な資格です。
工事担任者資格は、電気通信関係で人気の高い「電気通信主任技術試験」の登竜門的な位置づけです。合格すると、電気通信主任試験の一部試験が免除になります。電気通信主任技術試験は最難関といわれる資格であり、いきなり受験するのはハードルが高いかもしれません。その場合、工事担任者の試験を先に受けておくのもいいでしょう。

工事担任者の試験は難しい?なにから受ければいいの?
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工事担任者の試験はだれでも受けられます。受験にあたっての条件はありません。AI種、DI種ともに第3種が一番やさしい内容で、高校生でも合格を狙えます。3種→2種→1種の順に難易度が高くなります。もっとも難しいのがAI・DD総合種です。AI・DD総合種のここ数年の合格率は20%台前半となっています。
工事担任者の試験は、3種からいきなり1種を受験する人が多いです。なぜなら1種と2種の出題範囲があまり変わらないためです。なお今後、2種は2021年4月に試験廃止となるようです。
試験科目は3種類あります。「電気通信技術の基礎」と、通信接続のための「技術、理論」、「法規」です。AI種はアナログ回線、DDはデジタル回線に関する内容です。ISDN回線はAI種に含まれます。
工事担任者試験の難しいところは、出題範囲が広いことです。個々の問題の難易度はそれほど高くないですが、電気工学、電気通信、セキュリティ、接続工事と幅広い知識が要求されます。また、通信接続の法規も問題が多岐にわたるので、てこずる人もいるようです。

工事担任者の勉強方法は?過去問対策は必要?

工事担任者の試験はすべてマークシート形式です。過去問からの出題が多いので、問題集を解いておくといいでしょう。過去問は、「一般社団法人日本データ通信協会」のホームページにも掲載されていますが、体系的に整理されていないので、市販の問題集を購入して勉強した方が効率的です。

通信接続の理論や法規に関する問題は暗記問題が多いですが、電気通信技術に関しては計算問題が多いです。計算問題が苦手な方は、自分でくりかえし過去問を解いておくといいでしょう。問題にはパターンがあるので、計算に慣れておくことが重要です。
工事担任者は、科目ごとに60点以上が合格となっています。1科目でも60点に満たないと合格にはなりません。ただし、合格した科目については、3年間は試験免除となります。出題範囲が広いので、ある科目に集中して勉強し、数回分けて受験するのもいいでしょう。

工事担任者試験の申込方法は?
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工事担任者試験の申込方法は2種類あり、郵送とインターネットで申し込めます。

郵送の場合
まず、申請書の取り寄せが必要です。申請書は、電気通信国家試験センターやデータ通信協会支部から取り寄せられます。申請書の記入方法については、データ通信協会ホームページの「受験の手引き」を参考にするといいでしょう。申請書を記入したら、郵便局で、試験手数料の払い込み手続きと申請書の郵送を行います。

インターネットの場合
インターネットを利用する場合は、データ通信協会ホームページでの申請受付画面より入力できます。登録が完了したら、試験手数料を払い込みましょう。払い込みは銀行、コンビニ、郵便局で行えます。払い込む際、「申請受付完了」画面に表示される「申請受付番号」が必要になりますので、完了画面は必ず印刷しておきましょう。

実務経歴を伴う申請の場合は試験申請の受付期間が異なるため注意が必要です。また実務経歴を伴う科目免除はインターネットで申請できないため、余裕をもって準備しておきましょう。
なお、受験票は、申請が受理された後、試験日の2週間前までに発送されます。

まとめ

工事担任者試験は電話線や光ケーブルの配線接続工事の仕事に有利な資格です。アナログ回線に関するAI種とデジタル回線に関するDD種の2テーマあり、難易度別に7種類あります。出題範囲が広いため、覚えることがたくさんありますが、過去問からの出題が多いので対策がたてやすいでしょう。情報通信ネットワークの最新技術を学べるので、広い範囲で知識が活かせます。情報通信技術に関わるすべての人に、おすすめできる資格です。

表:工事担任者の資格
種別 電気通信設備に接続する工事の範囲 端末設備の例
AI第三種 アナログ回線:端末設備に収容される通信回線数が1
ISDN回線:端末設備に収容される基本通信インタフェース数が1
電話機、ホームテレホン、モデム、ISDN端末設備、自動検針メーター(ガス、水道、電力等)、ホームセキュリティシステム端末
AI第二種 アナログ回線:端末設備に収容される通信回線数が50以下で内線数200以下
ISDN回線:通信回線数50以下(毎秒64kbit換算)
*2021年4月に廃止予定
小型PBX*、ボタン電話装置、ファクシミリ、ISDN端末設備、モデム
AI第一種 アナログ回線・ISDN回線全般 中大型PBX、ボタン電話装置、ファクシミリ、ISDN端末設備、モデム
DD第三種 1Gbps以下のデジタル回線が対象 IP電話機、パソコン、ブロードバンドルータ、ホームセキュリティシステム端末、映像受信端末
DD第二種 100Gbps(インターネット接続が対象となる回線は1Gbps)以下
*2021年4月に廃止予定
小型IP-PBX、IPボタン電話装置、パソコン、ブロードバンドルータ
DD第一種 デジタル回線全般 中大型IP-PBX、VoIPゲートウェイ、スイッチングハブ、ルータ、OA複合機、TV会議システム
AI・DD総合種 アナログ回線・ISDN回線・デジタル回線全般 上記すべて

*PBX: 電話回線の構内交換機。主に企業のオフィスで設置され、外線からの着信を内線に転送したり、内線同士をつなぐなど回線の管理や制御を行う。