2020.10.08

技能取得19時間の国家資格。玉掛け技能講習

記事メイン画像
はじめに

重量物を運搬する設備がある工場では、玉掛作業というものが必要になります。今回はつり上げ荷重1t以上のクレーン、移動式クレーン、デリック、揚貨装置による玉掛け作業に必要な「玉掛け技能講習」について紹介したいと思います。

玉掛け技能講習とは?

また、玉掛け資格の正式名称は「玉掛け技能講習修了」といい玉掛け作業を行う際に、必要となる資格です。この資格を取得していなければ「吊り上げ荷重1t以上の玉掛け作業」を行うことが出来ません。
玉掛けの業務とは、クレーンや移動式クレーンなどで荷を吊る際に、ワイヤーロープなどの荷物を吊り上げるための用具準備、フックへ用具を掛ける準備、フックから用具を取り外す作業までの作業のことをいいます。
玉掛けの業務は、玉掛け作業者とクレーン運転者との連携作業であり、玉掛け作業を行うにはクレーン等の種類、特徴、構造、各機能、安全装置などについて理解することが必要です。また、荷の重さにかかわらずクレーンなどの能力が1t以上の場合は、今回紹介している「玉掛け技能講習」を修了した者でなければ業務に就かせてはならないと定められているため注意が必要です。(労働安全衛生法施行令第20条第16号)。

玉掛け特別教育との違いは?
記事画像

玉掛け特別教育と玉掛け技能講習との違いは、玉掛け特別教育は吊上荷重1t未満の移動式クレーン、クレーンデリック、揚貨装置の玉掛け作業が行えるようなります。そして、玉掛け技能講習を修了した者は荷の重さにかかわらずクレーンのなどの能力が1t以上となります。ここで現場の需要度も大きく変わりますが、技能講習と特別教育の決定的な違いは、「資格証」を持つか、持たないという点です。講習時間が短縮されるなど、働いている人からすると魅力的ですが特別教育での解除範囲を理解し、受講する必要があります。

クレーン運転の資格は絶対必要なの?

工場や作業現場など状況によっては一人で玉掛け作業クレーンの運転を行わなければならない場合もあります。そのような時は、クレーンの運転資格も持っていないととても不便です。玉掛け作業の資格だけの場合、別にクレーンを運転するスタッフを準備する必要性が出てきてしまいます。
このことから、玉掛け資格を取得する場合、大きな現場の場合は玉掛け資格のみの保有でも有効的ですが、クレーンの運転資格を取得するとより多くの現場で活用できる可能性が高まります。また、複数人で作業する現場でもクレーンの運転資格と玉掛け作業の資格両方を保有していれば、万が一何かが起こった際すぐに応援対処することが可能となります。どちらの知識も持っていることで監督者という立ち位置になることも可能になります。
結果、玉掛け資格の取得を考えている場合、合わせてクレーンの運転資格も取得してしまえば、より多くの業務、現場での活用が可能となります。

玉掛け技能講習 講習科目
科目 技能時間
学科 クレーン等に関する知識 1時間
クレーン等の玉掛けの方法 7時間
玉掛け作業に必要な力学に関する知識 3時間
関係法令 1時間
実技 運転のための合図 1時間
クレーンの等の玉掛け 6時間
技能講習スケジュール
記事画像

玉掛け技能講習とは、「玉掛け技能講習規程」のもと、各都道府県の登録教習機関で開催されています。2日間の学科と1日の実技で構成され、合計19時間以上の講習が必要となります。場所によっては、合宿型の講習を行っているところもあるようです。
学科、実技ともに修了試験があり、無事に修了できれば吊上荷重1t以上を含めた全ての移動式クレーン、クレーンデリック、揚貨装置の玉掛け作業実施が可能となります。
研修の費用は、開催期間にもよりますが22,000円~26,000円程度です。

試験内容
・学科
クレーンなどに関する知識 1時間
クレーンなどの玉掛けに必要な力学に関する知識 3時間
クレーンなどの玉掛の方法  7時間
関係法令 1時間
・実技
クレーンなどの玉掛け 6時間
クレーンなどの運転のための合図 1時間

■実技内容
参加者の多くは実技にて苦戦することが多いようです…。
玉掛けの作業は手順が複雑な他、荷物にワイヤーを掛けるだけでなく、以下のような業務が行われます。
・物体の説明
・ワイヤーロープの選定
・補助員に巻き方と手順を説明
・クレーンに指示

玉掛けフロー
①クレーンのフックにワイヤーを取り付け
②確認後、補助員を退避
③ワイヤーが張る位置まで荷物を上昇させ、しっかり吊れているかを確認
④地切り(荷物を浮かせる)を行い、荷物の重心を確認
⑤クレーンに指示を出し吊り上げ、移動
⑥移動先を指示し、ジブ上げ(クレーンの調整)等で微調整を済ませ、地切り直前まで降下
⑦退避させていた補助員を呼び、物体をぶれないように支える
⑧クレーンに指示し、ワイヤーが緩むギリギリまで降下
⑨降下後、歯止めをかけ荷物が転がらないかを確認し、補助員を退避
⑩ワイヤーが緩むまで荷物を降下させる
⑪フックからワイヤーを外し、フック上昇
⑫クレーン作業者に作業終了の指示
⑬荷物からワイヤーを外す

考えるだけで混乱してしまいそうですが、
このような作業を午前と午後に合わせて数回練習し、本番となります。
作業工程が多く練習回数も限られているので、事前に動画などを見て予習しておくと円滑に作業に取り組めると受講者から声が上がっています。

まとめ

以上が「玉掛け技能講習」の紹介です。取得しやすい国家資格として有名ですが、思った以上にハードスケジュールであることが分かりました。そして、クレーン操作の資格と玉掛け作業の資格を併用することでより現場で重宝されるということ。重量物を扱う現場では高確率で使用でき、短期間で取得することが可能です。講義や、実技をクリアしてしまえば確実にスキルアップに繋がる資格であることは間違いありませんね。