2020.10.05

はんだ付けにも資格があるの?はんだ付け検定ってどんな検定?

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はじめに

「はんだ付け」ときくと、先端テクノロジーとは無縁の地味なイメージをお持ちの方もいるのではありませんか?実は、スマホやPCなどの電子機器の性能進化の一端は「はんだ付け」が支えているんですよ。今回はそんな「はんだ付け」の検定について紹介します。

はんだ付け検定ってどんな検定?

はんだ付けは、電子機器の基板にチップを組み立てたり、引き回した配線を端子につなぐ際に必要な技術です。はんだとよばれる金属を溶かして、端子や配線などの金属同士をつなぎ合わせます。はんだ付け検定は、そのための基礎知識と技能を習得するものです。たくさんのパーツが密集する基板にチップを接着するのは、なんだか大変なイメージがありますよね。しかも、ただつければいいというものではありません。やり方が悪いとはんだ付けされた部分が取れたりして、電子部品・基板の寿命が縮んでしまうこともあります。はんだ付けそのものは未経験からでも気軽にはじめられますが、製品への影響力は非常に大きいのです。
電子機器が長く安全に動作するためにはたくさんのことを学ばなければいけません。器具の使い方や、はんだ付けの接合原理、最適な温度条件、良品と不良品の見分け方などです。高品質なものづくりには、理論と実践の両方を習得しなければいけません。
はんだ付け検定では、はんだ付けの理論と実践を問われます。ものづくりの安全を支える技能認定者であることを認定する資格なのです。

はんだ付け検定ってどんな人に向いているの?
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はんだ付け検定は、電子機器の基板部品の実装に関わる人の役に立ちます。また、製造業の品質管理における検査の場でも需要があります。どちらも検定で習得した技能を仕事に活用できるので、現場の実務担当者には人気の資格です。
はんだ付け検定がよろこばれるのは、製造現場だけではありません。スマホやPCの修理サービスを行う修理店でもニーズがあります。バッテリーやハードの交換だけでなく、基板のチップ交換ができるとサービスの付加価値になるからです。
はんだ付け検定は3種類あります。2級と3級は初級者向けで、1級は小型電子部品の実装に携わる人向けです。
3級は、趣味で電子工作を行う人に向いています。鉛入りのはんだを使う人を前提としています。
2級も初級者向けの検定ですが、こちらは、共晶はんだに加え、鉛フリーについての知識が必要になります。製造業では環境規制により鉛フリーの対応が必須な企業も多いため、鉛フリーについての知識が必要な場合は2級から受検するといいでしょう。
1級は超小型の電子部品実装に対応しています。はんだ付け検定1級をもっていれば、微細チップを搭載した電子部品も十分に扱える証明になるでしょう。

はんだ付け検定を取るメリットはあるの?

はんだ付け検定を受けることによって、電子機器の安全・信頼性を担保するための知識と技能レベルを測ることができます。合格すれば技能認定者であることが証明でき、履歴書にもスキルとして書くことができます。製造業や部品、修理に関係する企業では、求人募集に「歓迎するスキル」として記載されているケースもあるので、アピールポイントになります。
はんだ付けは品質マネジメントシステムの国際規格「ISO9001」において、特殊工程に指定されています。そのため「ISO9001」対策として、教育を受けた有資格者によるはんだ付け作業が求められています。つまり資格をとった従業員がいると、会社の信用が高くなるのです。また、組織の管理者にとっても、従業員のレベル把握につながるので、企業では検定の取得が喜ばれています。
また、実技試験を受検すると「検定結果報告書」という検定結果のフィードバックを受け取れます。不具合の発生場所、加熱やはんだ量の適性度など、改善ポイントを細かくアドバイスしてもらえるのです。しっかりとした研修を受ける機会がなく、自己流で作業されている方には心強いサービスですね。

はんだ付け検定って級ごとでどこが違うの?
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はんだ付け検定はどの級にも筆記試験と実務試験があります。
2級と3級は初級レベルの基板実装やコネクタ端子へのはんだ付け作業の技能を認定するものです。3級は共晶はんだのみを扱います。2級はそれに加え、鉛フリーについての知識が必要になります。
1級では、例えば1005(1.0mm×0.5mm)サイズの超小型の電子部品の表面実装部品を想定しています。実技試験には実体顕微鏡という、はんだ付けの現場で一般的に使われる拡大鏡を用います。

必要知識 対象とする人
1級 理論:
・はんだ付けに関する基礎知識(共晶はんだ+鉛フリーはんだ)
・不良の発生原因に関する知識等
実技:
・リード線の被覆処理
・カラゲ処理
・タグ端子、カップ端子へのはんだ付け
<対象部品>
1005以降の表面実装、DIP、アキシャル・ラジアル、QFP,SOP部品(鉛フリー)
※実体顕微鏡を使ったはんだ付け経験が必要
超小型電子機器実装を扱う企業の製造現場従事者
フリーの規制対象企業の製造現場従事者
2級 理論:はんだ付けに関する基礎
実技:
・リード線の被覆処理
・カラゲ処理
・タグ端子、カップ端子へのはんだ付け
<対象部品>
表面実装、DIP、アキシャル・ラジアル、SOP部品
※3級は共晶はんだのみ
2級は共晶はんだ+鉛フリー(実技は鉛フリー)
初心者
鉛フリーの規制対象企業の製造現場従事者(電子機器など)
3級 初心者
個人(電子工作などの趣味をもつ人)
共晶はんだ利用者/利用検討者
はんだ付け検定はどうやって受検するの?

はんだ付け検定は誰でも挑戦できます。受検する条件は特になく、未経験者でも受検できます。また実務経験も必要ないため、関係する仕事に従事していなくても、いきなり1級から受けることもできます。
しかし、はんだごてを全く使ったことがない人がいきなり検定に挑戦するのは難しいかもしれません。実技試験もあるので、事前に実際の検定で使用される基板のはんだ付けで練習しておくことをおすすめします。検定を主催している「日本はんだ付け協会」のホームページには、理論や実技に必要な教材の情報や、事前講習の案内が掲載されていますので、それらを活用して学ぶのが近道です。

日本はんだ付け協会のホームページ
https://handa-npo.com/

まとめ

はんだ付け検定は安全で信頼性の高い電子機器を製造する上で欠かせない知識と技能を問う検定です。誰でも受検でき、受検者へのアドバイスももらえるので、自分の腕を磨くいい機会になるでしょう。長年実務に携わっている方でも基礎理論を学んだり、最先端の微細チップの実装スキルを獲得することで、活躍の場をさらに広げることができます。受検対策の教材や講習も用意されているので、この機会に学んでみてはいかがでしょうか?