2020.12.25

フルハーネスの特別教育とは?講習内容や法改正後の受講条件などを解説!

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はじめに

建設現場などでよく見かける高所作業では、スペースの問題で落下防止に必要な柵を設けられないこともあります。そのため、作業者が転落して事故にならないよう、さまざまな安全対策が行われています。今回は、そんな安全対策のひとつである墜落防止システム「フルハーネス型墜落制止用器具」の講習について解説します。

フルハーネス型墜落制止用器具の特別教育とは?
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フルハーネス型墜落制止器具は、高所作業の墜落事故を防止するための安全対策として、作業者が体に身に着ける装置です。フルハーネス型墜落制止用器具の特別教育は、器具を作業者が正しく安全に使用するための教育となります。これまで高所の作業では、胴ベルト型とハーネス型の2種類の墜落制止用器具が使われていましたが、胴ベルト型では墜落時に胸が強く圧迫されるなどのリスクが問題視されていました。
2018年6月に労働安全衛生法が法改正され、高さ6.75m(建設業では5m)以上で作業床を設けることが難しい場所では、U字つりの胴ベルト型の使用が禁止されました。これがいわゆる「フルハーネス義務化」です。現在も6.75m以下の高さでは胴ベルト型の着用はできます。しかしやはり落下した際の身体へのダメージが少ないことからフルハーネス型がすすめられています。

フルハーネス義務化で何が変わったの?受講した方がいいのはどんな人?
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さらに2019年2月の法改正より、フルハーネス型器具を着用する作業者は、基本的に特別教育を受けなければならなくなりました。
特別教育が必要な業務は、高さが2m以上で作業床を設けることが困難なところです。実際、どのような業務が対象になるのでしょうか? 法律で決められている項目は以下の8項目です。

  • 鉄骨建て方作業で、鉄骨上での作業を行う者
  • 足場の手すりを一時的に取り外して行う作業
  • パラペット端部、開口部での作業
  • 高所作業者で作業を行う者
  • 天井クレーンのホイスト点検業務(ガーター歩道上で行うもの)
  • 天井クレーンのホイスト点検業務(ホイストに乗って行うもの)
  • デッキ型ゴンドラで行う作業
  • チェア型ゴンドラで行う作業

とはいえこのような項目だけでは、個別の作業における作業床の定義などが分かりにくいです。そのため、規定条件を誤解してしまう人もいるようです。例えば、山林の斜面や屋上のような場所では、規定を読んだだけでは該当するかどうか、判断しにくくなります。作業環境や作業床の形状などは、作業の内容によって個別に変わるため、労基署では質疑応答集が用意されています。質疑応答集を見ても分からない場合は、労基署に直接相談するといいでしょう。

フルハーネス特別教育はどこで受けられる?講習はどんな内容?

フルハーネス型墜落制止器具の特別教育には、学科と実技があります。時間は学科4.5時間、実技1.5時間の合計6時間です(表1)。学科は4テーマあります。作業に関する知識、墜落制止用器具に関する知識、労働災害の防止に関する知識、関係法令です。実技では、墜落制止用器具のフルハーネスの装着方法や、ランヤードの取付け設備等への取付け、点検及び整備の方法などを学びます。実際にフルハーネス型を装着しますので、ふだん使っている作業着などを着て行くといいでしょう。
特別教育は、建設業関連の一般社団法人や財団法人が主催しており、全国各地で受講できます。出張講習に対応している団体やWEB講習もあるので、受講会場が近くにない場合でも受講する方法はいろいろありそうです。申込方法や講習の流れは団体によって異なりますので、受講したい団体のホームページなどを確認するといいでしょう。

表1:フルハーネス型墜落制止器具 特別教育の対象講座
(財)中小建設業特別教育協会より引用
学科/実技 科目 範囲 時間
学科 作業に関する知識 ①作業に用いる設備の種類、構造及び取扱い方法 1時間
②作業に用いる設備の点検及び整備の方法
③作業の方法
墜落制止用器具に関する知識
(フルハーネス型)
①墜落制止用器具のフルハーネス及びランヤードの種類及び構造 2時間
②墜落制止用器具のフルハーネスの装着の方法
③墜落制止用器具のランヤードの取付け設備等への取付け方法及び選定方法
④墜落制止用器具の点検及び整備の方法
⑤墜落制止用器具の関連器具の使用方法
労働災害の防止に関する知識 ①墜落による労働災害の防止のための措置 1時間
②落下物による危険防止のための措置
③感電防止のための措置
④保護帽の使用方法及び保守点検の方法
⑤事故発生時の措置
⑥その他作業に伴う災害及びその防止方法
関係法令 安衛法、安衛令及び安衛則中の関係条項 0.5時間
実技 墜落制止用器具の使用方法等 ①墜落制止用器具のフルハーネスの装着方法 1.5時間
②墜落制止用器具のランヤードの取付け設備等への取付け方法
③墜落による労働災害防止のための措置
④墜落制止用器具の点検及び整備の方法
フルハーネス特別教育の受講条件は?省略できるケースはあるの?

フルハーネス型墜落制止器具の特別教育は、どなたでも受けられます。フルハーネスの使用経験が6ヶ月以上ある場合は、一部の科目を省略することができます(表2)。例えば、フルハーネス型器具で6カ月以上業務に従事した経験があれば、4テーマある学科のうち、「関連法令」を除く3テーマは免除になります。胴ベルト型の着用経験しかない場合は「作業に関する知識」のみが免除対象です。
受講の省略については、法人申込の場合には特別に書類を用意する必要はありません。個人で申し込む場合は、会社などから実務経験の証明書をもらう必要があります。

表2:フルハーネス型墜落制止器具 特別教育の省略規定
(財)中小建設業特別教育協会を元に作成
学科 6カ月以上の従事経験
(2m以上の箇所、作業床が設置困難)
特別教育受講
(足場/ロープ高所)
フルハーネス型 胴ベルト型
作業に関する知識 免除 免除
墜落制止用器具に関する知識
(フルハーネス型)
免除
労働災害の防止に関する知識 免除 免除
関係法令
まとめ

フルハーネス型墜落制止器具 特別教育は、器具を作業者が正しく安全に使用するための教育です。労働安全衛生法の改正により、高さが2m以上で作業床を設けることが困難なところにおいて、特別教育が義務付けられました。特別教育は、計6時間の学科と実技がありますが、経験に応じて学科試験の一部が免除されます。全国各地で受講できますが、近くにない場合でもWEB講習などフレキシブルなスタイルで受講可能です。関連団体のホームページなどを確認するといいでしょう。